畠山愛理さんが教えてくれた、背骨のためのルーティン2種目

背骨はすべての動作の要。きちんと整えると姿勢が変わり、身のこなしは洗練される。元新体操日本代表の畠山愛理さんの背骨が整っているのは、その美しい立ち姿からも明らか。現役引退後も背骨をいい状態に保つ秘訣とは。(雑誌『ターザン』No.818〈2021年9月9日発売号〉より全文掲載)

取材・文/門上奈央 撮影/長山一樹 スタイリスト/西野メンコ ヘア&メイク/george

初出『Tarzan』No.818・2021年9月9日発売

姿勢が悪いと減点対象になる

「背骨はあらゆる動きの軸であり、美しい姿勢の基本だと思います。どれだけプロポーションに恵まれていても、少しでも背骨が曲がっていたら台なしになってしまいます。姿勢を美しく保つために、私はいつも頭の上から糸で引っ張られているようなイメージで、背すじを伸ばしてます」(畠山さん)

畠山愛理

にっこり微笑みながら、畠山愛理さんは、“絵に描いたような”美しい姿勢で語り始めた。小1の頃に始めた新体操で才能を開花させ、オリンピックに2大会連続出場。激しい動きの新体操経験を通して、背骨の重要性を繰り返し実感したという。

「新体操では、姿勢が悪い、つまり美しくなければ減点対象になります。採点はされませんが、審判員は演技だけでなく、ステージに立っている間の全ての動きや所作を見ています。

だから幼い頃から姿勢に対する意識は人一倍強かったかもしれません。うつむきがちだったり背中が丸まっていると、それだけで自信がないように見える。逆に、姿勢を正すだけで自ずと気持ちが上がり、表現も変わるのを感じました」(畠山さん)

背骨のエラーに向き合い続けた現役時代

新体操の演技では、一つひとつの骨の間に空気が入っているかのように、軽やかかつしなやかに背骨を動かすことも重要だ。

畠山愛理

「“背骨のここだけを動かして”とコーチに触れられた部分だけを丸める練習もしていました。ピンポイントで椎骨を動かすのは難しくて、苦手でしたけど(笑)」(畠山さん)

苦手だった一因として畠山さんが挙げたのは、ほかならぬ新体操の強いる動きにより生じた背骨の歪みだ。

「利き足ばかり使っていたことで左右差ができてしまったみたいで。中1の頃に背骨のエックス線を撮った時、正面から見てまっすぐであるはずの背骨が歪んでいることが判明。2年後に腰椎分離症・すべり症と診断されてからは、腰の痛みを抱えながら練習に取り組む日々が続きました。

背骨付近に常に痛みがあるうえに左側の背中が固まりやすく、動作にも左右差が生じてしまう。なので、練習後に背骨まわりをテニスボールでほぐしたり、ストレッチも左右非対称に行うなど、いろいろと手を尽くしました」(畠山さん)

現役引退後も絶やさないルーティン

ただ、長年背骨の歪みに悩まされてきたとは思えないほど、いまの畠山さんのシルエットは優美で、背骨の動きもしなやかだ。

「背筋と腹筋、体幹部の筋肉を定期的に動かさないと背中に痛みが出てしまうため、それらの筋肉を適度に鍛えられるコンディショニングは定番。また背中に張りを感じたらすぐ、テニスボールを4つ入れた靴下を背骨に沿わせるように当ててほぐします。背骨が曲がったり体型が崩れないのは、そのおかげかも」(畠山さん)

畠山愛理

日常生活について尋ねると実践的な背骨ケアのヒントが多数。

「家にソファがありますけど、床に直座り(笑)。その方が背すじを伸ばしていられるので楽です。椅子の背もたれは使わず、運転中もシートに背中をつけません」(畠山さん)

ステージに立つ時以外も常に背骨に向き合ってきた畠山さんは一つの“真理”を悟っている。

「凜としていてかっこいい女性は皆、姿勢がいい気がするんです。男性も背すじが伸びた人は堂々として見えますよね。その人の印象、ひいては内面に直結する点を思うと、背骨はつくづく大事なパーツだなあと感じます」(畠山さん)

畠山さん流コンディショニング2種目

① 美姿勢を支える背筋を多角的に鍛える
畠山愛理
畠山愛理
畠山愛理

うつ伏せになり、顎を引いておでこを床につける。両肘から指先まで伸ばした状態で両腕を宙に浮かせたら、頭上・肩の横・お尻の上の3か所で、円を描くように両腕を同時に回す。

3か所各10回。「肩甲骨から動かすイメージで腕を回すのがポイント。お尻付近で回すときは手のひらを上に向けましょう」(畠山さん)

② 上半身全体&体幹部を強化
畠山愛理
畠山愛理
畠山愛理
両足を腰幅より広めに開き、爪先を正面に。両肘を開いて両手を耳の後ろに添える。お腹を薄く保ち背すじを伸ばしたまま、床と平行になる位置まで上半身を前に倒す。
左・中央・右の3点を意識しつつ上半身をツイスト。10往復。「ただ左右に捻るだけでなく、毎回中央(スタートポジション)を通るよう意識します」(畠山さん)