• やっぱり運動も必要。肥満解消で「食事制限だけ」がダメな理由
CONDITIONING
2021.08.18

やっぱり運動も必要。肥満解消で「食事制限だけ」がダメな理由

フィットネスと「体脂肪」の驚くべき関係

肥満解消でカロリー収支をマイナスにしようと思ったら、最も手っ取り早いのは「食事制限」。しかしそれは「運動」を軽視していい理由にはならない。なぜカラダを動かすことが必要なのか、しっかり確認しておこう。

万病の元である肥満防止は、食事制限でなく運動で。

世界的に見ると日本人に肥満は少ない。それでも日本の成人男性の3人に1人成人女性の5人に1人は肥満。最近はコロナ太りも増えた。

かつては「風邪は万病の元」といわれていたが、現在は「肥満は万病の元」というのが定説。太っていると、高血圧、動脈硬化、脂肪肝、そして大腸がんや乳がんの誘因にもなる。肥満からの脱出は健康作りの一丁目一番地だが、ダイエット食事制限)で痩せるのはNG。

「食事制限では体脂肪ばかりではなく、大事な筋肉も減る。肥満解消には運動で消費カロリーを増やすことが欠かせないのです」(筑波大学人間総合科学学術院の久野譜也教授)

そもそも運動不足だと、40代以降では年1%ずつ筋肉が減る。さらに、久野先生らの研究では、食事制限を3か月続けるだけで、3.5%も筋肉が減るという報告もある。筋肉は、じっと横になっているときでも消費する基礎代謝の約20%を占める。筋肉が減ると代謝が落ち、余計に太りやすくなるので逆効果なのだ。

食事制限ダイエットと筋肉量の関係
中年肥満女性を対象に、食事制限と運動を組み合わせて3か月間の減量教室を実施。筋トレを組み合わせない限り、食事制限は筋肉量の減少を招いた。
出典/筑波大学久野研究室

平均的な摂取カロリーを見ると、日本人の大半は決して食べすぎているとは言えない。それなのに肥満者が多いのは、運動などによる消費カロリーが足りないからだろう。運動量を増やし、肥満をリセットしよう。

内臓脂肪型肥満とメタボを、有酸素運動で撃退する。

太ると溜まる体脂肪には、おもに皮下脂肪と内臓脂肪がある。肥満でもとくに気を付けたいのは、内臓脂肪の溜まりすぎにより、お腹が出てくる内臓脂肪型肥満。肥満の度合いを示すBMI(下コラム参照)が25以上であり、ヘソの高さで測る腹囲が男性で85cm、女性で90cmを超えると、内臓脂肪型肥満の疑いが濃厚となる。

内臓脂肪型肥満が怖いのは、生活習慣病のリスクを高めるから。

脂肪細胞は、単に体脂肪を溜めるだけではなく、筋肉の細胞と同じようにホルモンに似た物質を分泌している。これをアディポサイトカインという。アディポサイトカインには善玉と悪玉があり、内臓脂肪が溜まりすぎると悪玉が増えてくる。

このうち悪玉には、血圧や血糖値を上げたり、血栓という血の固まりを生じやすくしたりする働きがあり、高血圧や糖尿病といった生活習慣病のリスクを高める。そして内臓脂肪型肥満に、高血圧、高血糖、脂質異常症のうち2つが重なると、メタボリックシンドロームと診断される。

メタボの有病率
有酸素運動の習慣化で有酸素性能力が高いほどメタボの有病率は低い。さらに筋トレを続けて筋力が高い人ほど、メタボの有病率は低い。
Jurca et al., MSSE 2004

困った内臓脂肪を減らすのにも有効なのが、ウォーキングやジョグといった有酸素運動。有酸素では内臓脂肪から先に分解されやすいのだ。

BMIと体脂肪率をチェック!

BMIの計算式

肥満=体重が重たいことではない。正確には、無駄な体脂肪が溜まりすぎた状態。体重に占める体脂肪の重さの割合を示す体脂肪率が、一般的に男性で20%、女性で30%を超えると軽度肥満と考えられる。

体脂肪率は体組成計で測るが、体組成計がないときは、体重と身長から計算するBMIで肥満度を推定。BMIは体重(kg)を身長(m)の2乗で割ったもの。体脂肪率との相関性が高く、日本肥満学会はBMI25以上を肥満としている。

体重を目安に減量するなら、BMI22の体重を目指すべき。統計的にはBMI22前後がもっともヘルシーで死亡率が低いとされるからだ。この体重(理想体重)は、身長(m)の2乗×22で逆算できる。ただし、70代以降はBMI22以上で25未満の少しぽっちゃりの方が長生きするというデータもある。

「高齢者では肥満より低栄養の方が怖い。食欲があり、少し太れるくらい食べられる方が疾病リスクを減らせるのです」

異所性脂肪の恐怖から、筋肉と肝臓を守り抜け。

肥満者では、皮下脂肪と内臓脂肪以外に溜まる体脂肪がある。それが、異所性脂肪。「本来は溜まらない場所に溜まる脂肪」という意味だ。

異所性脂肪が真っ先に溜まりやすいのが、筋肉。筋肉は、前述のように筋細胞を束ねたもの。筋肉の異所性脂肪には、霜降り肉のように筋細胞の間に溜まるものと、筋細胞内に溜まるものがあり、いずれも筋肉の機能を妨げる

たとえば、筋肉は血糖の最大の引き受け手だが、異所性脂肪が溜まると血糖を取り込む能力が落ち、高血糖、糖尿病を招く。

この他、肝臓にも異所性脂肪は溜まりやすい。それがいわゆる脂肪肝。脂肪肝はお酒の飲み過ぎで起こるという印象が強いけれど、甘いモノなどの過食などで脂肪肝になることもある。それを放置して非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に進行すると、のちのち肝硬変や肝がんに至ることも。

異所性脂肪を退治するのに有効なのも、やはり有酸素運動。

「有酸素だと異所性脂肪は減りやすいのに、ダイエットのみだと異所性脂肪は減りにくいので要注意です」

取材・文/井上健二 監修/久野譜也(筑波大学人間総合科学学術院)

初出『Tarzan』No.811・2021年5月27日発売

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