オタク的に追求した可動域。
一本のポールを中心に展開される、小源寺亮太さんの芸術的なパフォーマンス。重力を感じさせない浮遊感と観る者を引き込む世界観で、ポールダンスの国際大会で優勝を飾ったトップダンサーが、モビリティ(カラダの可動性)の重要性を強く感じる瞬間とは。
「一瞬一瞬の動きの繋がりで一つのパフォーマンスが完成されるので、常に重要性を感じます。カラダを伸びやかに使って魅せるには、モビリティは間違いなく不可欠。とはいえあくまでスポーツでなく表現の領域なので、そのダンサーがどんな美学を追求したいかにより重要度は変わるもの。僕に関しては可動域をオタク的に追求しています(笑)」
表現力や技術に加え、資本となるカラダやモビリティにも磨きをかけ続けたからこそ、世界の頂点に上りつめられた。
「関節の可動域や筋肉の柔軟性を高めるためのケアを徹底した結果カラダが進化すると、今までのパフォーマンスとは全く違うものに生まれ変わる。それが何より楽しいんです。
モビリティを強化すれば、また新たな表現に到達できます。“この技ではこんなカラダのラインを出したい”と思うから、ストレッチをする。取り組む目的が僕の中では明確なので、コンディショニングは全く苦ではありません」
空中で意のままに舞う小源寺さん、そんな彼の理想のカラダとは?
「体幹が強く、しなりとバネの利いた竹のようなカラダ。筋肉の柔軟性は高いほどいい、というものでなく弾力性も必要なので、日々入念にケアすることがやっぱり大切です」
男性は女性より筋肉量が多いために柔軟性も低いといわれるが、小源寺さんは例外に違いない。
「いえ、僕はもともとカラダが硬いし、体育の授業もサボるほど運動嫌いな子供で…。唯一小学校高学年からダンスを始めましたが、運動というよりは遊びの延長で」
と、意外な言葉。ダンス中の姿を思うとにわかには信じがたい。
「モビリティのことを意識し始めたのは、ポールダンスに出合ってから。当時男性のポールダンサーは筋肉質で力強い舞が主流でしたが、僕がやりたいと思ったのは柔軟技でした。そこでカラダの硬さを改善すべく独学でストレッチを開始。
特に後屈する技に憧れて腰を必死に反らせた結果、腰痛に悩んだ時期も。モビリティは十人十色だから、自分に最も合うストレッチを探るべきでした」
生活全般でも可動域を意識。
その後専門家の話を聞いたり自ら勉強に励んで、今のコンディショニングのルーティンが確立された。
「ポールダンスは全身をフルに使うので、満遍なく、常に伸ばしてます。例えばエスカレーターに乗る間はステップの縁に立ってふくらはぎをストレッチ。外出時、カバンにはギアを7〜8個入れてます。
ランブルローラーやボール、百均の麺棒など内容は都度変えますが、最近のお気に入りはスプーンクマット。剣山のような突起がついたマットの上に寝転ぶだけで毛細血管の血流を促せるのですが、先日バラエティ番組で罰ゲームに使われていて、何とも言えない気持ちに…(笑)」
小源寺さんの“オタク”ぶりは筋金入りだ。生活全般でもコンディショニングを意識している。
「毎日1時間は湯船に浸かります。血行促進が大切だから、と言いつつ本当はお風呂が好きなだけ(笑)。食事では腸活を意識した内容に。お通じが改善されると腸骨が広がり股関節の可動域の制限が広がるように感じますし、栄養吸収がスムーズになると筋肉の質も上がります」
カラダを思った地道な積み重ねで、今の超人的なモビリティがある。
「現状維持は性に合わず、常に進化し続けたいです。モビリティについてもそう。可動域が1度広がればその分できる表現が増えるはずです」
可動域が広がれば可能性が広がるのは皆同じ。そんな想いから、読者諸兄のために、自身がよく行う椅子ストレッチを伝授してくれた!
小源寺亮太が教える、可動域を広げる椅子ストレッチ。
「椅子があると骨盤の角度を保てるので効率的です。ぜひお試しを」