ホームジム経験者が語る成功&失敗エピソード
ホームジム導入の悲喜こもごも。四者四様、経験者の本音エピソードに学べ。
取材・文/倉石綾子 撮影/北尾渉 イラストレーション/安ヶ平正哉
初出『Tarzan』No.801・2020年12月17日発売
トレーニング時の騒音には注意。
20年以上前、一人暮らしのワンルームで、ダンベルとベンチ代わりのバランスボールでホームジムライフをスタートした白戸拓也さん。引っ越しをしてスペースが広くなるたびに機材を徐々にアップグレード、現在はインクラインベンチやハーフラック、ダンベル、バーベルはもちろん、バトルロープ(!)やトレーニングハンマー(!!)まで揃う充実ぶり。
いち早く導入している分、まさにエピソードの宝庫。「深夜にトレーニングをしていて階下の住人に怒鳴り込まれた」など、数々の失敗談を披露してくれた。
「壁に取り付けるタイプの懸垂マシンでトレーニングしていたら壁が壊れたり、家の柱にTRXを巻きつけていたら柱が折れたり。日本の家屋は耐久性に難ありのケースがあるので、ドアや壁への取り付けはお勧めしません」
これからホームジムを始めるトレーニーへは、「ミラーと音楽環境にこだわれ」とアドバイス。長く続ける秘訣はモチベーション維持にあり。
自宅に籠り過ぎるとメンタルの不調に。
お笑い芸人のコアラ小嵐さん(超新塾)は2019年初頭、YouTubeの動画撮影ロケーションとして自宅リビングにホームジムを導入。「自分のカラダと命を預けるものだから」と安全面を考え、信頼のおけるフィットネスショップに相談した。総額56万円也。なかなかの環境に思えたのだが…。
「動画撮影に編集、全て自宅でできるので家から一歩も出なくなり、メンタルがやられました。このままではいけないと奮い立たせ、ボディビルのジムを併用するようになったんです」
メンタルが復調したことから、ホームジムはやめよう、普通のリビングを取り戻そう、そう思った矢先のこと。
「ステイホームですよ。機材のすべてが瞬く間に売り切れ、日本中のマッチョたちが鉄を奪い合う、戦国時代の様相に。誰が勝者だったかというと、すでにホームジムを導入していた僕たち。羨望の眼差しを向けられました」
あらためてホームジムのありがたみを感じ、ウィズコロナをホームジムとともに生きていくと誓ったのだった。
DIYで予算を抑える。
コロナ禍に伴うジムの営業自粛により生きがいを失い、念願だったホームジム導入を決意した若林大樹さん。パーソナルトレーナーの知り合いに紹介してもらったスミスマシン一体型のパワーラックをインスタ経由で購入。トータル40万強で設置できた。床には3層構造の養生を施したが、DIYだったのでかなり予算を抑えられたようだ。
「搬入スタッフと自分の2人で組み上げましたが、支柱だけでも100kgあり搬入自体がすでに筋トレ。自宅が1階なのでなんとかなりましたが、階段でアクセスする住居は厳しいかも」
もはやジムに通う必要はなくなったが、3×3mのスペースで黙々と筋トレに励むのはモチベーションの維持が難しく、現在はホームジムのほかにパーソナルトレーニングを併用している。
「誤算は引っ越ししづらくなったこと。業者が受けてくれないんです! マシンの解体にもコストがかかりますし、賃貸に住んでいる人は引っ越しを考えて導入の検討をしてください」
オフィスにオンラインエクササイズを導入。
オフィスジムを導入して劇的な変化を感じているのは、会社社長の森平茂生さん。筋トレは続けていたがコレステロール値、中性脂肪値が悪く、有酸素運動を取り入れることに。目をつけたのが、アメリカで超人気のペロトン。最新のオンラインエクササイズだ。
「専用バイクとモニターを使うのですが、機材は米国国内にしか発送できないと言われたので現地に住んでいる妹の家へ。妹夫婦が解体して海外発送してくれました」
本体価格が約26万円、輸送費用が25万円。しめて51万円の出費である。これに月会費が39ドルかかる。
「7月からほぼ毎朝ペロトンに乗っていますが、リリーススティックとの併用ですぐに劇的な効果が表れました。血液検査の結果が改善し、体重は4か月でマイナス8kg。腹部が凹みました。朝から血流が良くなり、体調もメンタルも絶好調。あまりに調子がいいので、福利厚生の一環として社員にも自由に使ってもらっています」
継続の秘訣は、朝の時間を有効利用できること、ペロトンのインストラクターの乗せ方や選曲が素晴らしいこと、大音量でトレーニングできること。
「おかげで毎晩おいしい酒を飲んでいます。56歳、まだまだがんばれる!」