おこもり太りを防ぐアイデア【水泳選手・中村克さん】

限られたことしかできないからこそ生まれた、プロたちの創意工夫はすごかった!

取材・文/門上奈央 撮影/小川朋央 イラストレーション/森拓馬

(初出『Tarzan』No.792・2020年7月22日発売)

長期間の泳げない苦しさをカラダの進化に変える。

日本記録ホルダーの中村克選手。東京五輪が延期となりプールも閉鎖。そんななか、野暮な質問と承知のうえで、おこもり太りを懸念していたかと問うと「なかったです」と即答。

「今回”泳げない”苦しさを久々に感じました。それで体重まで気にしたらストレスでしかない…。だから逆に僕は太っても仕方ないな、と。ただ、競技のことを考えてやるべきことはやると決めました。長期間泳がなければ感覚が間違いなく変わる。でもどうせ変わるなら進化する方向に変わりたいなと思ったので」

水泳選手・中村克さん

【体重】77kg(4月)→ 81kg(6月)

中村克さん
なかむら・かつみ/1994年生まれ。イトマン東進所属。専門種目は自由形。インターハイで2連覇。2012年に早稲田大学入学後、数々の大会で優勝。15年以後、日本新記録を次々に樹立。

中村克さんのおこもりスケジュール

中村克さんの1日のスケジュール
家トレは1回につき約1時間。朝と昼に分けて行う日もあった。食事は三食自炊することが多く、夜に翌日分の大根おろしを用意することも。睡眠時間もきちんと確保。

筋肉量を増やした家トレ。

週3〜4日行う家トレでは、自体重のほか、3kgのダンベルやチューブなどで筋力アップに励んだ。

「細部を意識して鍛えることに時間を費やしました。”こう動かせばこう刺激が入るのか”と探求するのが楽しくて、手応えのあるエクササイズも新たに発見しましたよ。久しぶりに水中練をした時、水を捉える感覚が変わったのを実感しました」

3kgのダンベルで背中の深層筋を寝ながら刺激。

背中の深層筋を刺激

家にある唯一のウェイト=ダンベルを駆使。横向きに寝て上側の手でダンベルを持ち、脇を締めたままダンベルを上げ下げ。腕の筋力でなく肩甲骨を動かす意識でゆっくり行うのがコツ。左右各30回。

これ、僕にとっては背中トレです。

背中トレ

動作はダンベルショルダープレスの片手ver.。「でもこの動作で僕は背筋を使います。ダンベルを握らず、手に乗せるイメージでやると背筋を意識しやすいです」。ジムでは十数kgの重量を扱うが、在宅中は3kgのダンベルで。

超ワイドなウデタテで胸を刺激!

ワイドなウデタテ

機能性と見た目、両面において胸トレは欠かせない。腕立て伏せで胸に効かせたい時は手幅を肩幅の倍近く広げて行う。15秒間全力で腕立て伏せをして15秒休憩。「これを6回繰り返すと胸がパチパチに!(笑)」。

スクワットをした後の定番種目。

スクワット後の定番種目

キックの強化のため、ジムでは昇降台で行っていた踏み込みの練習。在宅期間は高さ1m超の机を活用。タオルを敷いて片足を乗せ、全身を引き上げて上に乗る。左右各10回。時に重りを入れたリュックを背負って行う。

食事は楽しみの一つ。栄養もしっかり。

先日、体組成計で測定した時、筋肉量の増加が目立ったという。

「唯一堪えたのはラーメンを食べに行けなかったこと。誘惑に勝てず夜食にラーメンを作ることもありました(笑)。でもさっぱり味が好きで、野菜も欠かさず摂りますよ」

中村克さんの食事
三食、タンパク質はマスト。夕食には刺し身や炒めた肉を食べることが多く、写真は特製のホタテ丼。また冷蔵庫には豆腐とモズクと大根おろしを常備。トマトやブロッコリーなどの緑黄色野菜も積極的に。

逆境に負けず、日々できることに取り組んだ中村さんの今の目標は。

「来年開催予定の東京五輪、個人の100m自由形でメダルを獲る。自己記録も更新したいです。記録が出ないと面白くないので! 家トレでの発見も今後に生かしたいですね」