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個人経営のジムが「コロナ禍の閉鎖」で感じたホンネと、営業再開に向けて行った工夫

緊急事態宣言が解除され、徐々にジムの営業が再開されてきた。『ターザン』でトレーニングを監修する中野ひろゆきトレーナーのジムもその一つだ。東京に先駆けて宣言が解除された大阪で、どのような点に気をつけて営業を再開させたのか、その工夫を教えてもらった。

2020年5月25日(月)に緊急事態宣言が全国で解除されました。これを受けて多くのスポーツジムが営業を再開、もしくはそれに向けて動き出しています。

筆者である中野ひろゆきが経営する大阪のパーソナルジム《OSAKA FITNESS HUB》も、営業を再開したジムのひとつです。

著者自身が閉鎖期間中に感じていたことや、営業再開に向けて行った工夫をひとつの事例として紹介することで、ジムに通いたい人の判断材料や、再開予定のトレーナーの参考になればと思います。

1. 閉鎖期間中に困った3つのこと。

まずは閉鎖期間中に困ったことについて。多くの個人ジムが同様だと思いますが、①売り上げ、②固定費、③顧客離れの3つが問題となりました。

① 売上問題

フィットネスクラブ及び、各種スポーツジムは(1)定額の月額、(2)都度払い、(3)物販の売上などで売上が構成されています。そして比較的多くの施設は(1)月額を売上の軸にしていますが、コロナウィルスのように、感染症拡大処置による施設の長期閉鎖を行う場合、お客様には返金、または振替が適応される場合が多いです。これもちろん適切な対応なのですが、“固定売上”を想定して運営している施設には大ダメージです。

② 固定費問題

ジム以外の業態でも「家賃問題」が話題になっていますが、フィットネス界の家賃問題はさらに深刻です。フィットネス施設は元々“密”を避けるように、事務所や飲食店よりも“お客様一人当たりに対するスペース”を広く確保する店舗が多く、これに伴い必要な敷地面積が大きくなり、家賃も高額になりがちです。その他で言うと、人件費はもちろんですが、フィットネス機材のリース費用、プールなどの維持費、広告費などの固定費も高額な負担となります。

③ 顧客離れ

フィットネス会員の方には3タイプの会員の方々がいらっしゃいます、(1)マニア会員、(2)ビギナー会員、(3)幽霊会員 です。(中野的見解)

この方々の中で、顧客離れで心配なのが(2)と(3)の方々。ビギナーの方々の中でも、明確な目標が「ある/ない」で、再開後ジムに「戻る/戻らない」が決まると思います。幽霊会員の方々はこれを機に退会が多いと思います。

要望に答えられないもどかしさ。

また先述の金額面での問題に加え、ニーズに対応できない、というもどかしさもありました。フィットネスをされる方の理由はさまざま。趣味として運動をする人から、生活習慣の一部として、精神の安定として、健康維持として、などなど。

理由によって、人生おけるフィットネスの比重もまたさまざまです。家トレで本当に代替できる人には問題ないのかもしれませんが、フィットネス施設には家トレにない“コミュニティ”と“専門家との繋がり”があるので、これを望む声も多く、それにお答えできないことは本当に心苦しかったです。

2. 宣言解除後に行った3策。

大阪府は5月21日(木)に緊急事態宣言が解除になりました。再開に向けて一番力を注いだこと(注ぐべきこと)は、何をおいても施設の安全対策です。私自身が行った安全対策を大きく分けると、①自分たち(ジムスタッフ)でできること、② 専門家にお願いしたこと、③お客様に提案したこと、の3策があります。

① 自分たちでできること

施設の機材を配置を変えたり、パーテーションをDIYしたりといった、“安全な空間”へアップグレード。これをできる限り自分たちで行いました。詳しくは後ほどお伝えします。

② 専門家にお願いしたこと

自分が代表を務める《OSAKA FITNESS HUB》では、株式会社ZtoAの除菌・抗ウィルスコーティングサービス「SHEILD」と提携して専門家への施設安全対策を依頼。日常の除菌はジムスタッフが行い、専門的な除菌は定期的に専門家にお願いすることにしました。

③ お客様に提案したこと

安全でも不快では本末転倒。一番多く頂いた声は「トレーニング中のマスクの着用が本当に辛い」という内容でした。そこでマスクの不快感解消のためにトレーニングマスクを探し求め、株式会社エヌ・ケーの「Running mask」とパートナーシップを組み、吸汗・速乾・制菌加工の快適なマスクを提案しています。

コロナ以後の新しいビジネスモデルへ。

パーソナル・少人数グループレッスン専門店から、パーソナルトレーニング・レンタルトレーニングスペースのビジネスモデルへ移行もしました。

また今後のフィットネス再開率が低かった場合や、コロナウイルス第2波への備えとして、今のうちにオンラインレッスンの設備も準備。対面レッスン、オンラインレッスンの両方に対応できるようにしています。

3. 具体的に自分たちで行った工夫。

先ほど、宣言解除後に行った3策として「自分たちでできること」という項目を上げました。具体的にジムスタッフでどのようなことを行ったのか、ご紹介したいと思います。

① パーテーションDIY

おしゃべりや呼気による飛沫の拡散防止として、パーテーション(衝立)をDIYしました。ジムに設置するようなサイズを購入しようとすると、コストもそれなりにかかること、また丁度よいサイズを探すのが難しいことがDIYに至った理由です。

DIYした飛沫防止パーテーション
実際にDIYした飛沫防止パーテーション。

木材で枠組みを作り、最近コンビニやスーパーなどのレジで見かける「飛沫防止用のビニールシート」を工作用ホチキスで留めるだけ。DIYが得意でなくても真似していただけると思います。今回、自分が用意したものは下記の通りです。

中野ひろゆきさんがパーテーションDIYで用意した道具と材料
パーテーションのDIYで用意した道具と材料。
  1. 木材(中野が購入したのは建築現場の下地に利用する材木のサイズ=長さ2700mm×横40mm×縦27mm で約350円。カットは難しいので店内カットをしてくれるホームセンターにて)
  2. タッピングねじ(35~45mm。パーテーション1つにつき24本利用)
  3. L字ブラケット(パーテーション1つにつき4つ利用)
  4. ビニールシート(厚み:0.3mm、幅:915mm、長さ:50m、材質:ポリ塩化ビニール)
  5. 工作用ホッチキス
  6. 電動ドリルドライバー
  7. メジャー
  8. 手袋

前述のように、作り方も難しくありません。ジムの経営者でなくとも、今後はさまざまな分野でパーテーションが必要な場面があるかもしれません。ぜひDIYができることを知っていてください。

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パーテーションをDIYする中野ひろゆきさん
木材の組み合わせ方が決まったら、電動ドリルドライバーを使用してL字ブラケットとタッピングねじで固定します。

パーテーションをDIYする中野ひろゆきさん
工作用ホッチキスを使ってビニールシートを木材に留めます。

パーテーションをDIYする中野ひろゆきさん
ビニールシートを留めた木材と、先ほど作っておいた土台を組み合わせます。

DIYした飛沫防止パーテーション
追加でビニールシートを工作用ホチキスで土台部分に留めたら完成。

② 安全な空間作り

DIYしたパーテーションを設置した中野ひろゆきさんのジム。
DIYしたパーテーションで区切られたジム内。

大きなお店のスペースを手作りパーテーションで2分割して飛沫感染を予防。また各空間に空気清浄機を設置し、各スペースでの空気の清浄を常時実施しています。

③ 空気循環テク

中野ひろゆきさんのジムに設置された大型扇風機。
ジム内に設置した大型の扇風機。

施設内の異なる方角に窓がある場合は、双方を開けることによって比較的簡単に空気の循環は実施できるると思います。しかし、窓が少ない場合は大型の扇風機を用意して1つを屋内の空気循環用として、もう1つは窓の近くに設置して外との入れ替え用として、空気の流れを作るようにしています。

宣言解除のいま考える、今後の課題。

最後に、個人ジムを運営する一人のトレーナーとして、今後の課題について考えてみたいと思います。これからはフィットネス界もコロナ以後の“NEWノーマル”を作り上げる必要があり、なかでも ① 顧客から選ばれる、② 今いるお客様を大切にする、という2つの視点が求められると思っています。

① 顧客離れを防ぐ

これまでは顧客離れの阻止や新規顧客の集客には「安さ」や「通い易すさ」が重視されてきましたが、これからは「安全と配慮」がポイントとなるのではないでしょうか? フィットネス事業はより一層お客様目線での安全と快適を考え、お客様に、安い高いではなく「コストパフォーマンス」で選んで頂けるお店作りが必要です。

② 潰れないお店を作る

これからの「潰れないお店」はロイヤルカスタマー(長期間利用してくださるそのジムのファン)が主となってお店が存続していくでしょう。少し前までの一過性の「インスタ映え」を意識した手法や、「アフィリエイト」のような広告手法では今後は厳しくなる、というのが個人的な意見です。

まずは目の前のお客様を大切にし、「知り合いに紹介したいお店」になる事が大切です。感謝の心を忘れず、ナンバーワンを目指すより、オンリーワンを目指すビジネスモデルがフィットネス界の“NEWノーマル”を生き延びる秘訣だと思います。


“アフターコロナ”とも言われる「私達が経験したことのない未来」がやってきます。この時代の正解を誰も知りません。

だからこそニュージーランドのアーダーン首相の言葉にあるように「Stay strong, be kind (=強く、そして優しく)」を心に留め、事業者は顧客の人生を豊かにする為にあらゆる努力をし、顧客は事業者の失敗を感情的に“叩く”のではなく、冷静なフィードバックとして事業者に伝え、共により良い“NEWノーマル”を一緒に作り上げていけると最高だと思います。

中野ひろゆき

なかの・ひろゆき 1984年生まれ。SPARTAN SGX。大阪・堀江のパーソナルトレーニングスタジオ〈OSAKA FITNESS HUB〉代表、ReebokONE アンバサダー。15歳から23歳までカナダに留学し、オカナガン大学卒業。カナダCJFLや日本Xリーグでアメフト選手を経験し、日本でトレーナーとして活動。

文・写真提供/中野ひろゆき

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