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効果的な筋トレのために知っておきたい「運動ホルモン」基礎知識

運動の前に知るべきは、カラダを作る仕掛け役。鍛えることで分泌されるホルモンとその働きをめぐる研究は、今日もアップデートされている! ホルモンを味方に、効率的にボディメイクだ。

1. 運動によるホルモンの働きで“腱肥大”が起こる。

運動の刺激によって筋肉が養われる。これもまた、ホルモンの作用。具体的には、IGF-1というホルモンの働きによって筋肥大が促されることが分かっている。

ところが筋肉だけでなく、筋肉を骨に繫ぎ留めている腱もまた、IGF-1によって太くなることが最近分かってきた。剣道の選手を例にとると、踏み込む側のアキレス腱の面積の方が逆脚より大きいのだという。フェンシングの選手も同様、前脚の膝蓋腱の方が発達しているらしい。

考えてみれば、筋肉だけが肥大していって腱がまったく成長しなければ筋肉のパワーに腱がついていけない。腱の損傷や断裂といったケガの原因にもなる。ホルモンの働きによって筋肥大だけでなく“腱肥大”も起こり、ケガの予防にもなる。

2. 運動後のホルモン作用で食欲が制御できる。

運動刺激で分泌されるホルモンは数知れない。なかでも成長ホルモンは昔から運動によって分泌が促されることが分かっている。さらに近年では、この成長ホルモンが運動後の食欲のコントロールにも関わっていることが明らかになった。

運動によって成長ホルモンが増えると、胃から分泌されるグレリンという食欲増進ホルモンが減るというのだ。

実験によると、10RMで1分間インターバルの筋トレと3〜6RMで3分間インターバルの筋トレを行った場合、前者の方が成長ホルモンの分泌が多くグレリンの血中濃度が低くなった。少ない量の食事でより心地よい満腹感を得られたのも前者。運動を制するものは、食欲もまた制す。

3. 筋肉で作られるマイオカインによる驚きの健康効果。

脂肪細胞がレプチンなどのホルモン分泌器官であることが分かったとき、肥満研究者たちは度肝を抜かれたが、その数年後、筋肉もまたさまざまなホルモンの分泌器官だということが判明した。それが1994年のこと。

筋肉から分泌されるホルモンの総称をマイオカインという。あるマイオカインは脂肪細胞に働きかけて分解を促し、別のマイオカインは骨に作用して骨形成を促す。最近ではBDNFというマイオカインが脳の認知機能の改善に関わっているのではないかという説もある。

健康の万能薬、マイオカインの分泌を促すには、もちろん運動刺激が不可欠。筋トレの動機づけに。

4. ランナーの貧血は炭水化物制限によるホルモンが原因?

マラソン選手や市民ランナーは貧血や鉄欠乏に陥ることが多いというのは、よく知られた話。その原因のひとつは肝臓から分泌されるホルモン、ヘプシジンにあることが分かっている。

ヘプシジンは食事から摂った鉄の吸収を抑制する作用がある。これは体内で鉄が過剰にならないようにする防御システム。なので、正常に働く分には問題がない。ところが、食事で炭水化物を極端に制限すると肝臓のグリコーゲンの低下がスイッチとなり、ヘプシジンレベルが急上昇。一気に鉄の吸収が悪くなって貧血状態に陥る。

ランナーにとって過度な炭水化物制限は命取りになるということ、覚えておくべし。

5. 運動後の食事はエムトール活性で筋肥大を底上げ。

運動刺激によってIGF-1というホルモンが分泌されるのは前述した通り。このIGF-1は筋肉内のエムトールというタンパク物質の活性度を上げることにひと役買っている。エムトールは筋肥大を促進するシグナルを出す近年注目のニュースター。その活性度を上げることが筋トレ効果の底上げに有効とされている。

方法のひとつは運動後の食事。実はエムトールはインスリンによっても活性度が上がることが分かっている。糖質とタンパク質を一緒に摂った方がインスリン分泌は長持ちする。よって運動後はプロテインのみではなく、主食+おかずをきっちり食べた方が筋肥大には効果的なのだ。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/八重樫王明 取材協力・監修/後藤一成(立命館大学スポーツ健康科学部) トレーニング監修・指導/澤木一貴(SAWAKI GYM)

初出『Tarzan』No.782・2020年2月22日発売

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