腹筋を割るために知っておきたい10のこと。
加齢とともに気になる…。関節・骨の不安に「骨活トレーニング」
筋肥大に◎筋トレでテストステロンの分泌を促す。
はじめてHIITをするなら【初級編】を!
ダンベルを使いまくる王道19種目。
背中を広く厚くするなら、ロウイングがおすすめ。
女性だけじゃない。その不調、男性更年期かも?
簡単体操で「正しい座り姿勢」に!
  • 公開:

週1でも時短でも、ちゃんと効く! 自体重トレ9つの“正解”

澤木マスク(さわき・ますく)/1971年生まれ、静岡県出身のトレーナー澤木一貴さんのリングネーム。本業の運動指導で多忙な合間を縫い〈ベストボディ・ジャパン プロレス〉に参戦。空中殺法が得意な自体重トレーニング派の鉄人である。

私の名前は澤木マスク! 自体重トレーニング派のプロレスラーです。自体重トレーニングに取り組むみなさんのお悩みは、この私がしっかり受け止めて全力で答えましょう。

プロレスラー・澤木マスクは、顔は隠しても名前は隠さない。そう、リングを下りてマスクを外せば、トレーナーの澤木一貴として世のため人のためフィットネスのため、正しいカラダの使い方を広める仕事が待ち受けているのだ。

今回寄せられた質問はこちら。

  1. 自体重トレで鍛えられるか半信半疑です。モデルのようにバキバキになれますか?
  2. 自体重が重くて10回×3セットできない。そんなとき、どうすればいいですか?
  3. 週3回やるべきか、週2回で充分か迷います。最低限、週1回でも大丈夫ですか?
  4. ジムに行けないとき、自体重で鍛えると物足りないのを何とかする方法は?
  5. 同じ種目を繰り返していると飽きます。モチベーション維持のコツを教えて。
  6. オールアウトしているのかどうか謎です。どうすれば自分で判断できますか?
  7. 全身で10種目とか12種目やる時間が取れません。時短テクありますか?
  8. ひとりでトレーニングしているとき、うまく自体重で追い込む方法は?

1. 自体重トレで鍛えられるか半信半疑です。モデルのようにバキバキになれますか?

自体重トレーニングがマシンやウェイトに及ばないというのは先入観にすぎません。半信半疑ではなく、成果を信じて正しく行えば究極まで鍛えられます。

モデルのようなバキバキのカラダや、ボディコンテスト出場者のような鍛え上げた肉体に憧れる人が見落としがちなのは、彼らにはポージングやウォーキングの審査もあるという事実です。マシンやウェイトでいくらビルドアップしても、カラダの操作が下手だと客観的にカッコよく見えません。

自体重トレの優れた点は、カラダの操作性がよくなること。鍛えつつカラダ使いが上手になる一石二鳥のトレーニングです。正しく行うには頭を使いますが、自分の体重がどこにかかるか、どう負荷をかけると効くのか確かめながら行うとバキバキ以上の“カッコよく動けるカラダ”になります。

2. 自体重が重くて10回×3セットできない。そんなとき、どうすればいいですか?

そういう場合は、できる回数を3セット行うということで初心者は構いません。できる回数が徐々に増えるのを待ちます。効率的に鍛えるには、レベルダウンしたフォームで10回以上を3セット行う。これが王道です。プッシュアップなら膝をついて負荷を下げる。スクワットなら腿を手で押して負荷を軽減する。こうした工夫は、あらゆる自体重トレに取り入れることができます。

澤木マスク
自体重トレーニングは適宜レベルダウンできる。ランジ動作も腿を手で押すことで負荷の軽減が可能だ。通常のランジでオールアウトした後に、このフォームで追い込むのもいい。

逆に、10回×3セット以上できる人はどうするか。もっとやりましょう。15回×3セットなど、自体重トレは多めの回数を行うことが基本的です。そのうえで、今回の巻頭ページでも紹介されているパーシャルやTUTを取り入れると、自体重トレーニングの効果をさらに高めることができます。

10回×3セットに縛られず、自分のカラダの声を聞きましょう。

3. 週3回やるべきか、週2回で充分か迷います。最低限、週1回でも大丈夫ですか?

2回か3回は迷いどころですね。スケジュールに応じて臨機応変にトレーニング時間を確保するとして、基準になるのは「追い込み具合」です。

教科書的には筋トレ後の超回復に必要な休息は48時間から72時間。つまり2日から3日です。月水金で週3日やるなら、下の表のように金と月の間は72時間空くから高強度で追い込む。月は中強度。水は前後48時間の休息だから低強度。そのようにメリハリをつけて、金は10回×5セット、月は4セット、水は3セットといった調整を。

澤木マスク
曜日を決めて週3回トレーニングするなら、高強度・中強度・低強度の日に分けて効率よく運動・栄養・休息のバランスを取ろう。週2なら強度高めに。トレーニング時間の確保が困難なときは、週1を死守。プラス、可能なら同じ週にもう1回鍛える。

週2回のトレーニングなら、例えば火金でやった場合、下の表のように次を翌週の月曜にすれば72時間ずつの休息になります。曜日をずらして72時間ごとに高強度のトレーニングをするのは理想的ですが、火金、月木、日水土とつなぐのは現実には困難でしょう。

週1回のトレーニングで維持はできるので、作戦としては「週1を死守せよ」「できるときは週2、週3トレーニングせよ」というのが、長期に継続するコツです。

次回のトレーニングの予定が見えていたら強度を適切にコントロールして、休息をしっかり取る。栄養もちゃんと摂る。これが、ケガなく楽しく筋トレ効果を得るベターな方法論です。

4. ジムに行けないとき、自体重で鍛えると物足りないのを何とかする方法は?

ジムで100kgのバーベルを持ってスクワットしてるとしたら、同じ負荷のスクワットを自体重で行おうと考えないほうがいい。思い切って内容を変えることです。ジャンプスクワットにするとか、シングルレッグスクワットにするとか。自体重トレーニングはバリエーションが無限なので、観点を変えて“鍛えたカラダをうまく使う”トレーニングに切り替えてはどうでしょうか。

澤木マスク
自体重トレの典型、プッシュアップも工夫次第でプライオメトリクスになる。肘を伸ばして上体を押し上げた勢いで、地面から両手を離して空中で手を打ち、すかさず手幅を広げ地面につく。

公園で木の枝に飛びつくのも立派なプライオメトリクスです。階段の上り下り、柵の跳び越えなども、日頃の鍛錬の成果を動作につなげる自体重トレーニングの一種。

家で行う筋トレにプライオメトリクス要素を加えるのも、ジムに行けない日の自体重メニューとして強くおすすめできます。

5. どうしても背中や肩を鍛え残している感じがして…。アドバイスください!

自体重トレーニング派の私にとって三種の神器ならぬ“三種の神トレ”とは、逆立ち、懸垂、スクワットです。背中も肩も、逆立ちプッシュアップおよび懸垂を実践すれば完璧に鍛えられます。噓だと思ったら体操選手を見てください。彼らはウェイトトレーニングをやらなくても、自体重で逆立ちや懸垂を日々やっているから、背中も肩も鍛えられた見事なカラダをしていますよね。

澤木マスク
オーソドックスな逆立ちプッシュアップの例。壁に背を向けて逆立ちした状態から、腕を曲げ伸ばしてプッシュアップを行う。補助の人がいると安心だし、バリエーションも広がる。

巻頭の部位別トレーニング記事でも逆立ち種目や懸垂を紹介しているようですから、ぜひやってみてください。“どうしても自体重トレでは鍛え残す”というイメージを捨てて、効くと信じて実践しましょう。自体重トレーニングに不可能の文字はありません。どの部位も完全無欠に鍛えられます。

6. 同じ種目を繰り返していると飽きます。モチベーション維持のコツを教えて。

パーソナル指導を受けるお客様にも2タイプあって、種目を変えることを好まない方と、変えてほしがる方がいます。特定の部位に効かせるなら同じことを繰り返すのが効率的ですが、日常生活やスポーツの動きは変化に富むので、トレーニングもいろいろな種目に取り組んだほうが“動きに対応できるカラダ”になります。

同じ種目を飽きずに繰り返すのも才能なら、飽きていろいろな種目を取り入れるのも才能です。楽しんで続けるために、パーソナル指導を受けて新しい種目を取り入れたり、『ターザン』のバックナンバーなどを見直して、やったことがない種目を試すといいでしょう。

私は3分程度の好きな曲をかけて、その間ひたすらスクワットするといった工夫もします。

7. オールアウトしているのかどうか謎です。どうすれば自分で判断できますか?

モチベーションが高い証拠ですね。それならばぜひ、“オールアウト探し”をしましょう。トレーニングに役立ちます。

澤木マスク
Q3の「週3回か週2回か」の問題も、オールアウトの感覚がわかると対処の精度が上がる。高強度の日はオールアウト後さらに追い込み、中強度の日は通常のオールアウト、低強度の日は余力を残す。

どんな種目でも構いません。1回からスタートして、毎日1回ずつ、回数を増やします。1か月後には30回ですね。そこから先、続ければ遅かれ早かれ限界が必ず訪れます。その感覚がオールアウトです。カラダで覚えてください。急ぐなら30回から始めて“オールアウト探し”をしてもいいです。

例えばプッシュアップでオールアウトしても、低負荷の膝つきプッシュアップならあと数回できます。これを高強度とし、通常のオールアウトを中強度、その手前を低強度として負荷設定できます。

8. 全身で10種目とか12種目やる時間が取れません。時短テクありますか?

超多忙なら“バラ売り”です。少ない回数で全身満遍なく鍛えるより、1部位ずつとことん追い込みましょう。例えば朝スクワット、昼プッシュアップ、夜チンニング、各5分といった“バラ売り”です。長めに1回90秒のTUTを3セット行えば約5分。これでオールアウトすれば、その部位は確実に維持できます。

澤木マスク
器具やマシンで負荷をかけるのは自体重トレーニングではないが、プッシュアップバーなどを活用して、稼働域を広げるのは自体重トレーニングとしておすすめ。必ずしも専用の器具がなくても、本を重ねて代用するなどの工夫が可能だ。本がズレないように束ねる、テープで巻くなど、安全性への配慮も心がけたいもの。

朝・昼・晩で3種目ずつ3〜4日かければ全身の種目を回せますね。休日などに1回、全身やる日を設けるなど、時短テクは工夫次第です。トレーニングは食前がいいので、朝昼晩の食事の前に5分ずつ、時短の筋トレをしては?

昼休みをトレーニングタイムにして、昼ごはんは午前と午後の2回に分けてデスクでおにぎりなどの軽食をつまむ手もあります。

9. ひとりでトレーニングしているとき、うまく自体重で追い込む方法は?

例えばプッシュアップの場合。カラダを一本線にしてお尻の穴を全力で締め、限界まで押し上げたらゆっくり下ろし、胸を床につけるといった重要なポイントがあります。全部まとめて覚えるのは困難なので、パーソナル指導では2つぐらい同時にできるようになったら次に進みます。全部ひとりで習得するのは難しい。一度正しい指導を受けると追い込み方が会得できそうです。

トレーニングしていない時間に、トレーニングについて学ぶことも重要です。運動生理学や機能解剖学の本を一冊、読むといいでしょう。筋トレには基礎があり、多くの人が知っている応用があり、人それぞれの特異性がある。他人の個性、特異性を真似るより、基礎を学んで応用を知り、自分に合ったやり方を編み出すのが最善です。

澤木マスク
基礎を学び、応用を知り、特異性に関心を持つ。トレーニングの工夫にはこれらすべてが必要なので、できるだけ視野を広げよう。

ひとつ具体的なアドバイスをすると、稼働域はすごく大事です。フルレンジの動作でオールアウトすると、パーシャルなどで追い込む意義が強まる。プッシュアップバーなどの器具を使って、自体重トレの稼働域を広げるのは多くの人が知っている応用です。道具がなくても、例えば本を重ねるなどして稼働域を広げることができます。これも応用のうちです。基礎と応用、工夫を大切にしましょう。

取材・文/坂田滋久(本誌) 撮影/小川朋央 イラストレーション/中村知史 取材協力/澤木一貴(SAWAKI GYM)

初出『Tarzan』No.777・2019年11月28日発売

Share
Share