疲弊したメンタルを超回復。自宅でできる坐禅の組み方
坐禅で脳にアプローチするには、カラダの準備が大切。曹洞宗僧侶の藤田一照さん指導のもと、アスリートの佐々木唯さんが初体験しました。
取材・文/坂田滋久(本誌) 撮影/小川朋央
(初出『Tarzan』No.774・2019年10月10日発売)
坐禅は、カラダから脳へのアプローチ。
ストレスの多い現代人は、慢性的に身心が緊張している。そんな疲弊したカラダへの処方箋として「 坐禅でメンタルをリセットするのが有効」と言うのは、曹洞宗僧侶の藤田一照さん。
藤田さんは、東京大学教育学部を経て、発達心理学を学ぶ博士課程を中退し禅の道へ。アメリカで17年にわたり坐禅の指導に努め、帰国後も葉山を拠点に全国で坐禅指導にあたる、現代の坐禅伝道師だ。
「リセットばかりを急ぐと失敗しやすい。急がば回れでフィジカルを先に調えれば自然とメンタルも調う。これを禅の言葉で“身心一如”といいます」と言う藤田さん。その言葉に従って、坐禅をイチから学ぶのは、ダブルダッチのプロ、佐々木唯さんだ。
「動くのは得意ですけど、じっとしてるのは経験がなくて」と不安がる佐々木さんとともに、坐禅の基本を順を追って身につけよう。
坐禅に入る前にカラダを下から調える。
1. 足指を回す
坐布の上に坐り、右足を右手で持つ。左手で右足の小指をつまみ、反時計回りに回す。10回ほどで、今度は逆回し。薬指、中指…と親指まで同様に回したら、次は左足を左手で持つ。小指から親指まで同様に回す。
2. 足指を開く
右足の親指を右手で、第2指を左手で持ち、左右に開く。3回ぐらいに分けて徐々に広げる。第2指と中指、中指と薬指、薬指と小指の間も同様に。続いて左足の指についても、同じように両手で持って開く。
3. 手足の指で握り合う
2で開いた右足の指の間に左手の指を挟む。左手の指で右足を3回ほど握る。次に右足の指で左手を3回ほど握る。最後に右足と左手でお互いに3回ほど握り合う。左足の指と右手の指でも同じように行う。
4. 足首を回す
3の要領で左足の指と右手の指で互いに握り合ったら、左手で左の足首を持ち、ぐるぐる足首を回す。15回ほど回したら、15回ほど逆回転。今度は手と足を入れ替えて、右の足首を回す。15回ほど回し、15回ほど逆回転。
5. 膝下を回す
足首がほぐれたら、右腕を右膝の下に通して脚を抱える。膝を軸に、くるぶしで大きく円を描くように回す。丁寧に10回ほど回したら、10回ほど逆回し。今度は左腕を左膝の下に通して、同じように両方向に回す。
6. 骨盤を回す
脚を前後に、楽な側を前にしてあぐら坐り。骨盤を床に押し付けながら、盃を回すように回す。背骨も自然についてくる。1回15秒ほどで3回転したら、逆回しで同様に3回転。無理をしないで、だんだん大きく回す。
下から上へと徐々に回転させて、安定するポジションを見つける。
7. ヘソ中心に上体を回す
6よりも回転軸を少し上げ、ヘソを中心にするイメージで上体を3回転させる。1回15秒ほどでゆっくり回す。今度は逆回転。やはり1回15秒ほどかけて、ゆっくり3回転させる。ブレイクダンスのつもりでトライ。
8. 胸の高さで回す
さらに回転軸を高く、胸の位置まで上げて回す。イメージするのは乳首の高さ。15秒ほどかけて1回、2回、3回ゆっくり回したら、同じように逆回し。心地よければ音楽でも聴きながら、好きなだけ回してもよい。
9. 頭の高さで回す
さらに回転軸を上げて頭の高さでゆっくり大回し。1回15秒かけて3回転するのも変わらない。パラボラアンテナになったつもりで、骨盤は固定したまま頭を大きく回す。カラダは自然についてくる。逆回転も同様に。
10. 全身を柔らかく大回し
最終的に首の力を抜いて、全身ぐにゃぐにゃになったつもりで大きく上体を回す。骨盤を床にしっかりつけて、柔らかくなった上体が遠心力で回る感覚。1回15秒で3回転したら、同じように逆回転させる。
体幹が安定したところで、腕の位置を決めて坐禅に入る。
11. 落ち着くところで止まる
回転を終えたら、上体が落ち着くところで止まる。カラダの縦軸が決まり、姿勢を意識しなくても楽に坐れる。回転によって内臓の位置が調い、脳の緊張がほぐれてリラックスしてきた。〝身心一如〟の入り口はもうすぐ。
12. 肩甲骨を回す
カラダの縦軸はそのまま維持して、肩甲骨を回転させる。両肩に指先を添えて、肘で円を描くように回す。10回ほど回したら、今度は逆回転させる。慣れてきたら肩に指先を添えなくても、肩甲骨だけ回すことが可能に。
13. 両肩を上げてストンと落とす
肩甲骨がほぐれたら、両肘を伸ばし、両腕を垂らした状態でリラックスする。両肩を上げて肩甲骨を寄せ、胸を開いた状態で肩の力を抜く。自然に腕が下がる。それがニュートラルな腕の位置だ。さらに坐禅に近づいた。
14. 坐禅に入る
肘から先を前に出し、膝に乗せる。右手を下、左手を上にして重ねる。半眼といって、目を薄く開いて外界と内面を同時に観るつもりで視線を安定させる。楽に坐る。1分でも5分でも、思考をリセットする時間を持つ。
PROFILE
藤田一照さん/1954年、愛媛県生まれ。曹洞宗僧侶。東京大学教育学部を経て、発達心理学を学ぶ博士課程を中退し禅の道へ。アメリカで17年にわたり坐禅の指導に努め、帰国後も葉山を拠点に全国で坐禅指導にあたる。
佐々木唯さん/1988年、京都府生まれ。プロのダブルダッチチーム〈REGSTYLE〉のメンバーとして現在、世界最高の大会『DOUBLE DUTCH CONTEST WORLD』で3連覇している。インスタグラムは@sasakiki1988。