へばったカラダがよみがえる。夏の入浴&シャワー4つの正解
取材・文/井上健二 撮影/鈴木大貴 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 取材協力/早坂信哉(東京都市大学人間科学部教授)、藤村寛子(東京ガス都市生活研究所)、松永武(バスリエ代表)
(初出『Tarzan』No.770・2019年8月8日発売)
就寝1〜2時間前の入浴で、眠りの質は高まる。
冬場は浴槽入浴で芯まで温まっているという人も、暑い夏になると浴槽入浴を敬遠しがち。東京ガスの調査によると、冬季の浴槽入浴の回数は週平均4.6回なのに、夏季では週平均2.8回と大幅ダウンする。
でも、実は夏こそ浴槽入浴に励むべき。寝苦しい夜でもぐっすり眠れるように体内環境を整えてくれるからだ。
ヒトは、内臓などの深部体温が下がるときに寝入りやすい。夏場は蒸し暑くて深部体温が下がりにくく、それが眠りの質を下げて夏バテと総称される不調の引き金となる。
就寝1〜2時間前に入浴すると、温熱作用で深部体温は一時的に上昇するが、その後は放熱が促されて、入浴しない場合に比べて深部体温が下がりやすい。そのタイミングで寝入りやすくなり、眠りの質も高まり、昼の好調がキープできる。
正解その1. 40度以下で10〜20分。
入浴の生理的な作用を決めるのは、温度×時間という公式。負荷(重さ)で筋トレの効果が変わるように、何度のお湯に何分入るかでカラダに与える影響はガラリと変わる。
「40度を超える熱めのお湯だと自律神経のうち交感神経が優位になりやすく、興奮して逆に寝付きが悪くなります。心身を休息モードにする副交感神経を優位にするなら40度以下が基本。40度なら10分ほどで深部体温は上げられます。
40度が熱いと感じるなら38度に下げ、深部体温を上げるために20分ほど入ってください」(東京都市大学の早坂信哉教授)
正解その2. 38度×10分+入浴剤
真夏に40度は少々熱すぎるし、かといって忙しくて20分ものんびり入っていられない…。そんな日は38度×10分のスピーディプランで。
ぬるま湯×短時間で深部体温を上げるために入浴剤を活用。血行を促せる入浴剤を使うと、皮膚表面で温まった血液が深部に流れ込みやすく、深部体温が早く上がりやすい。
血行促進効果の高い入浴剤というと炭酸ガス系が定番だが、最近では水素系の入浴剤も登場。
炭酸ガス(二酸化炭素)も水素も入浴中に皮膚から血中へ吸収されると、血管を広げて血液の循環を促してくれる。血中に余計な二酸化炭素や水素が増えると、それを排泄するために血行が良くなるのだ。
正解その3. シャワー+足湯10分
猛暑日でも寝付けるし、浴槽入浴なんて面倒臭い。そう言い訳して浴槽入浴を断固拒否すると、知らない間に夏の疲れが溜まり、秋口になって爆発する“秋バテ”に襲われることも。シャワーだけで快調だと自己満足していても、浴槽入浴するともっと快調になって驚くに違いない。
それでもシャワーのみで済ませたいなら、バスタブやタライなどに40度前後のお湯を入れて足湯を試そう。
足湯なら、テレビやスマホを観ながらでも気軽に行える。足元で温められた血液が全身を巡るので、浴槽入浴に近い温熱作用の恩恵が得られる。足湯で寝付きや体調にポジティブな変化を感じたら、食わず嫌いを卒業して浴槽入浴にも挑んでほしい。
正解その4. 温冷交代浴
トレーニングした日や外回りで足腰が疲れたときにやってみたいのが、温冷交代浴。40度の入浴を3〜5分行った後、浴槽を出て冷水シャワーを手足に1分間まんべんなくかける。これを3セット繰り返すのだ。
熱いお湯に入ると血管が開き、冷たい水を浴びると血管が縮む。この反復で血液の循環が促される。 「加えて自律神経の機能を整えたり、冷水で局所的な炎症を抑えて筋肉痛を予防したりする効果が期待できます」(早坂先生)
温冷交代浴は冬季だと冷水シャワーが冷たすぎて難しいが、夏季なら冷水シャワーがちょうど心地よい。体温を下げないようにどの季節でも「温」で始め、「温」で終わろう。