ラグビーの“反則”がよく分からないという人へ。ラグビーW杯の基礎知識(3)
9月に迫った「ラグビーワールドカップ2019 日本大会」(ラグビーW杯)の開幕を前に、「これだけ知っていれば十分楽しめる!」というポイントを教えてもらう全4回の短期集中連載。第3回はラグビーのちょっと複雑なルール、「反則やスクラム、ラインアウト」について。
取材・文/神津文人 写真提供/長岡洋幸
大学ラグビー部のコーチ経験もある、菅原順二トレーナーにラグビーW杯の楽しみ方をお訊きする本連載。前回はラグビーのルールのなかでも、得点の仕組みを教えてもらったが、今回のテーマは、楽しく観戦するために最低限知っておきたい知識。
菅原さんに言わせれば、細かいルールや反則をしっかりと覚える必要はなく、最初はざっくりと「ラグビーのやってはいけないこと」を捉えておくだけで、十分だそう。
ボールを前に投げてはいけない。
「ラグビーはボールを敵陣深くに運んでいく陣取りゲームだという話を前回しましたが、ボールを運ぶために前方に投げるのは“スローフォワード”という反則になります。ボールを投げてパスをしていいのは、自分の横、もしくは後ろにいる選手だけ。
また、パスではなくてもボールを前に落としてしまうと“ノックオン”という反則になります。前に投げても落としでもダメなのですが、ボールを前方に向かってキックするのはOKです」(菅原さん)
前にボールを投げる、前にボールを落とすのはダメだと覚えておこう。
倒れたままプレーしてはいけない。
パス、ボールを持ってのランでボールを運んでいくのを、相手はタックルで防いでくる。上の写真のように、タックルをされても簡単に倒されず、少しでも前にボールを運ぶことが大切だ。もしタックルで倒された場合、選手は素早くボールを放す必要がある。
「タックルで倒された選手がボールを放さないと、“ノットリリースザボール”という反則になります。そしてタックルをした選手も、そのまま相手を抱えているとホールディングという反則を取られます。
お互い倒れたままプレーしてはいけなくて、倒されたらボールを放す、倒したら選手を放す必要があるんです。タックルをした選手は、選手を放して一度立ち上がればボールを奪うことができますし、倒された選手もボールを放して立ち上がれば、もう一度ボールを持ってプレーすることが可能です」(菅原順二さん)
倒れたままのプレーは反則だというのを覚えておけば、ぶつかり合いの局面が理解できるはず。
「タックルされたときに無駄に痛がるのもNGですね(笑)。相手になめられるだけじゃなく、味方からも信頼されません…」(菅原順二さん)
スクラムとラインアウトも知っておこう。
ラグビーの基本的なプレーの1つに“スクラム”がある。スクラムはボールを前に落とすノックオン、ボールを前に投げるスローフォワードのような比較的軽い反則が起きたときに発生する。また、相手の反則で得たペナルティキックをスクラムに変更することもできる(前大会の南アフリカ戦での決勝点がこのケース)。
「スクラムはフォワードの選手8人で組みます。特に最前列で相手と組み合うことになる3選手は重要です。押し合ってボールの奪い合いをするのですが、スクラムで優勢に立てると攻撃の幅が広がりますし、逆にスクラムが弱いと自陣での反則が大ピンチに直結します」(菅原順二さん)
反則が起きた場合はスクラムやペナルティキックで試合再開。そしてボールがタッチラインを割った場合に行われるのが“ラインアウト”だ。
「ラインアウトでは、1mの間隔をあけて両チームの選手が並びます。その両チームの列の間にスロワーがボールを投げ込んで、ボールを奪い合います。ボールをタッチラインの外に出した側にもチャンスがあるので、ボールを蹴ってタッチラインの外に出すことがあるんです。
ジャンプしてボールをキャッチするジャンパー、ジャンパーを持ち上げてサポートするリフター、ジャンパーがキャッチしたボールを受け取るレシーバーという役割があります」(菅原順二さん)
この記事で紹介した最低限の反則と、スクラム、ラインアウトさえ分かっていれば、試合が中断したときに何が起こっているのか、おおよそ理解できるようになるはずだ。