免疫力を鍛えるには? 風邪を引きがちな人が意識すべき、3つのこと
「すぐに風邪をひく」「突発的に高熱が出る」「インフルエンザやウイルス性胃腸炎にかかりやすい」「ヘルペスや口内炎ができやすい」。これらは原因菌やウイルスなどが原因で引き起こされるが、その全てを個別に予防するのは難しい。だからこそ“免疫力”を鍛えて病原体を寄せ付けないことが肝要だ。
取材・文/黒田 創 イラストレーション/しりあがり寿、岡田 丈(visiontrack) 取材協力/今津嘉宏(芝大門いまづクリニック院長)
(初出『Tarzan』No.766・2019年6月13日発売)
免疫力を高めるカギは、「睡眠」「整腸」「体温」の3つ。
高熱、胃腸炎などを起こす風邪は、多かれ少なかれ誰でも起こしがちな症状。すごく身近だけど、実は「風邪」という病気は存在しない。医学的には上気道感染症と言い、目に見えないウイルスや細菌、カビなどが原因で起こる感染症のうち、口や鼻、喉を中心に症状が強く出るケースがそう呼ばれている。
感染力が強く高熱を出すインフルエンザや最近話題のはしかも感染症の仲間だし、急に嘔吐したり下痢をするウイルス性胃腸炎も、ウイルスが胃腸に入って胃腸の働きを悪くすることで起こる感染症のひとつ。だから「お腹の風邪」と言われるのだ。
風邪の原因となる微生物の9割はウイルスで、残り1割が細菌やマイコプラズマなど。ではどんなウイルスや細菌に感染すると風邪をひくのだろうか?
「風邪の原因菌は200種類もあり、これ!とは言い切れません。ただひとつ断言できるのは、ウイルスや細菌、寄生虫やカビといった私たちの健康を左右する病原体を寄せ付けないためには“免疫力”が一番大事ということ。そのカギとなるのは睡眠と整腸、体温の3つ。各々を普段から強く意識することで、免疫力は高められます」(芝大門いまづクリニック・今津嘉宏先生)
1. 睡眠
良い睡眠のコツは就寝時間ではなく、“起床時間”を一定にする。
よく眠れば免疫力は高まる。頭ではわかっているけど、具体的に何をすればいいのだろうか。
「まずは寝る時間より起きる時間を一定にしましょう。“毎日睡眠時間を一定に”と言われますが、私たちのカラダは起きたタイミングでスイッチが入ってその16時間後に眠くなるようにできており、このときメラトニンというホルモンが分泌される。逆に日中はオレキシンという覚醒物質が分泌されて活動的な状態が維持されます。両者をうまく働かせるには起床時間を揃えるのが一番。これで頭もカラダも深い眠りに誘われます」(今津先生)
よく推奨される7~8時間睡眠だが、赤ん坊から青年期、老年期と加齢につれ睡眠時間が少なくなるのが当たり前。実はアバウトな基準なので、それよりも生活実態に合った睡眠時間をとり、起床時間をなるべく毎日揃える。これが睡眠の質を高め、免疫を活性化させるいくつかのホルモンを分泌させるという。
睡眠の質を高めるには目に入る光の調節も大事な要素。2つの簡単なテクニックをお試しを。
2. 整腸
免疫は腸が作る。食物繊維を摂って腸内環境を改善。
腸は、食べ物と一緒になって病原菌やウイルスなどが入り込みやすい場所。ゆえに外敵を撃退するべく免疫細胞が働いており、実に免疫細胞の7割が腸に集結している。
もうひとつ、腸の健康維持のために欠かせない存在が数百兆個といわれる腸内細菌。善玉菌と悪玉菌、そしてどちらにも働く日和見菌に大別され、通常は各々がバランスをとって腸内環境を保っている。
腸内細菌が健全に機能しているかを知るには大便の色をチェックすればOK。便が黄褐色でほどよく太いバナナ状だと理想的。腸内にビフィズス菌などの善玉菌が多い証拠だ。逆に便の色が黒っぽかったり、硬かったりする場合は腸内に悪玉菌が溜まっている。
「善玉菌はもちろん、近年はクロストリジウムという菌が注目されています。この菌は腸内で食物繊維をエサに免疫細胞を生み出しており、免疫力向上に大きく関わっている。つまり食物繊維をしっかり摂ることが、結果的に免疫力アップにつながるというわけです」(今津先生)
免疫細胞と腸内細菌をきちんと機能させて、免疫力を高めよう。
3. 体温
体温0.15度アップで、内臓機能も代謝もアップ。
「すぐに風邪をひいたり、お腹を壊しやすい方に共通しているのが、皆さんカラダを冷やしがちという点。ごく普遍的なことですが、平熱を上げることで免疫力は格段にアップします」(今津先生)
体温が上がると、まず血流が改善して血中のウイルスと戦う白血球が活発になり、撃退しやすくなる。また自己治癒力も自然と高まり、生活習慣病やがん、感染症に罹患するリスクも減少、エネルギー代謝が上がって体調も良くなる。夏場は建物や電車、バスの中がエアコンで冷え切っているケースが多いので、うっかり冷やさないよう対策したい。
「カラダを温めるというとお腹まわりや背中などに集中しがち。もちろんどちらも大事ですが、首や肩まわりもお忘れなく。この周辺には体内に熱を発生させる褐色脂肪細胞が多いので効率的に体温を高められます。また首や肩まわりを温めるとリラクセーション効果も高いのです」(今津先生)
具体的に目指したいのは現状の平熱から0.15度アップ。食事の摂り方なども意識して、外側と内側からしっかり火をくべてあげよう。