肌対策だけじゃケア不足。服の臭いにも配慮するべし

悪臭が放たれるところどこにでも現れ、その原因を突き止めて問題解決へと導くニオイ専門探偵「スメル探偵ホームズ」。肌対策で体臭を封じた前回に続き、今回は洗濯ひとつで変わる体臭予防を調査する。

取材・文/石飛カノ 撮影/山城健朗 イラストレーション/山口正児 監修/出来尾 格、伴 和佳、池田浩二(共にニベア花王)、山縣義文(ライオン)

(初出『Tarzan』No.699・2016年7月7日発売)

これまでの「スメル探偵ホームズ」の調査結果:

服もまた、体臭の発生原因になる。

くんくん。もう1日くらい着れるかな? いや、着れないんで!
くんくん。もう1日くらい着れるかな? いや、着れないんで!

どんなに丁寧にカラダを洗っても皮膚の常在菌を完全に取り去ることはできない。24時間後には元通りの状態に。なので毎日しっかりカラダを洗いましょう。

でもそれだけでは、体臭ケアは完璧ではない。なぜなら、あなたが身につけているその服にも、細菌が半端なくくっついているからだ。

1日着用した綿のTシャツ1g中には1万個から10万個の菌が棲んでいることも
使用した衣類が細菌の棲み処に
1日着用した綿のTシャツ1g中には1万個から10万個の菌が棲んでいることも。これは1日履いた靴下とほぼ変わらない細菌数。皮脂がつきやすいシャツの中心部に細菌が多く棲んでいるので、ここが臭いの発生源に。

たとえば、1日着用した後の綿のTシャツには1gにつき10の4乗から10の5乗の細菌がくっついている。ほぼ無菌状態の新品のTシャツが、夜になるともはや別物。これだけの菌の棲み処になっているのだ。

とくに上半身には皮脂腺が多く存在し、首まわり、脇の下、乳首周辺、ヘソまわり、背中などに皮脂量が多い。この皮脂が服にくっついて細菌のエサになっている可能性は高い。シャツのこの辺りが臭いの発生源になっていることは十分考えられる。

というわけでホームズ君、服対策も抜かりなく。

洗濯物はあまり溜めず、布用除菌スプレーを活用。

最初にはっきり言っておこう。洗濯をしても服についた菌はすべて取り除けるわけではない。菌の生命力は結構強靱で、ちょっとやそっとでは根絶できない。

さらに最近では、洗濯機の大容量化が進む一方で、家族の人数は減っている。それで2〜3日に1回とか週に1回とか洗濯の頻度は落ちているという。

せっかく一度にたくさん洗えるのなら、ある程度溜まってから洗いたいというのが人情。でも、溜め込む日数が長ければ長いほど、服についた菌は皮脂や汗をエサにして繁殖し、汚れも落ちにくくなる。

理想的にはその日着たものはその日洗うこと。これが最も服についた汚れや細菌を取り除くことができる方法。とはいえ、忙しい毎日だしほんの少量の洗濯物をいちいち洗うのは不経済。洗濯を毎日するというのは、現実的に難しい。

仕方がないので、3日分、あるいは1週間分の洗濯物を溜め込む。でも皮脂や汗をエサに細菌は増える一方。さて、どうするか。

答えは意外と簡単。布用の除菌・消臭スプレーを活用することだ。洗濯カゴや洗濯機に服を入れる前に除菌スプレーをシュッとひと吹き。当然、汚れは落ちないが、隙あらば増殖しようとする菌の数をセーブすることはできる。どうせ完全に排除できないのなら、洗う前にあらかじめ菌を増やさない工夫を。

洗濯機に入れる衣類は7割まで。

洗濯物、このくらいで7割かな。そのつど、量をしっかり確認。
洗濯物、このくらいで7割かな。そのつど、量をしっかり確認。

お次は洗濯機に入れる洗濯物の量。面倒くさいから一気に洗ってしまおうと、どんどん詰め込んでしまうのはNG。なぜなら、洗濯物の動きが悪くなってしまうから。

とくに縦型の洗濯機の場合、フタを閉めてしまうと内部がまったく見えない。ぎゅーぎゅー服を詰め込んでスイッチを押し、モーターが回っている音がしているからといって、しっかり洗えているかといえば、さにあらず。

下のグラフをご覧いただこう。容量が8kgの洗濯機に8kgの洗濯物を入れてしまうと、洗濯機の上部、中部の汚れ落ちが悪くなる。つまり、洗濯物はほとんど動いていない状態で、洗濯液の中にただ浸かっているのと同じこと。

洗濯機に服を詰め込みすぎると洗浄力が低下する
服を詰め込みすぎると洗浄力が低下する
縦軸は汚れ落ちのレベル。洗濯機に衣服を詰め込みすぎるとモーターが回る下部はそれなりに動くが、中部と上部はほとんど動かない。水流に乗って洗われるということがないので汚れ落ちも悪いのだ。
資料提供/ライオン

服を入れる量は乾いた状態で洗濯機の容量の7割。縦型洗濯機の場合、洗濯槽の内側の銀色の部分が5cm程度見えるラインまで。入り口ギリギリまで詰め込んではいけない。水に濡れると嵩が減るので、一見、洗えているように思えるが、そんなことはまるでないのだ。

ドラム式の洗濯機も同様に容量の7割までが許容量。ドラム式の場合、外から洗濯状況が見えるのがメリットだが、ぐるぐる回っていればそれでOKというわけではない。

基本的にドラム式は“叩き洗い”というスタイル。上から下に落として叩くように洗う。ぐるぐる回っているということは、相対的に止まっているのと同様。その場合は明らかに詰め込みすぎということ、覚えておこう。

スポーツウェアは浸け置き洗いを。

毎日洗っているのに、臭いが落ちない。なんだか新品のときに比べて黄ばんできたような気もするし。

気のせいではない。とくに汗や皮脂がべったりついたスポーツウェアにこうしたことが起こりがち。学生時代、部活で汗をかいた服をロッカーに忘れていき、翌日ロッカーを開けたら臭ッ!

それほどにスポーツウェアには細菌のエサとなる汗、皮脂、角質などが豊富で菌も増殖しやすい。たとえ毎日洗ったとしても、菌や臭い物質が残りやすいのだ。

そういうときにおすすめなのが、浸け置き洗い。洗っても臭いが残っているという衣類を 度くらいのお湯に浸け、1回分の洗剤とできれば漂白剤を入れる。そのまま 分から2時間くらい浸けておく。

大きめの桶やタライのようなものに浸けてもいいが、面倒という場合は、洗濯槽に直接服を入れて浸かるくらいのお湯を入れて浸け置きしておいてもいい。

浸け置いた後は、他の洗濯物と一緒にして通常通りにスイッチオン。この際、洗剤は追加しなくてよし。

すると、あーら不思議。嫌な臭いはどこへやら。気になる黄ばみも真っ白に。実は綿素材の服に比べて、化学繊維が使用されているスポーツウェアは、汚れや臭い成分が繊維の内部にまで入り込みやすい構造。なので、通常の洗濯モードではなかなか取り除くことが難しい。

浸け置きすると洗剤の濃度は通常の約10倍なので、ここでまず洗剤の成分を浸透させる。しかも水に比べてお湯の方が皮脂や汚れを落としやすい。一回浸け置きをしてから洗うだけで、驚くほどキレイになる。

週に1度くらいの頻度で定期的にこうした洗い方をすれば、臭いもきれいさっぱり解消だ。

スーツ対策も重要。インナーの活用を。

三つ揃いのスーツは僕のユニフォーム。これからはステテコ穿こ。
三つ揃いのスーツは僕のユニフォーム。これからはステテコ穿こ。

夏場、厄介なのがスーツ問題。1回着ただけでいちいちクリーニングに出すわけにもいかないので2回、3回と着るうちに、どんどん臭いがキツくなってくる。

最近では丸洗いできるスーツも増えてきているので、夏場はそちらを利用する手もあるだろう。また、普通のスーツを3着くらいローテーションして、今日着たものは風通しのいい場所に吊るし、菌が好む湿気を取り除くという手もあり。

さらに、下半身の汗対策を取り入れるのもおすすめ。上半身はインナーとワイシャツで汗が直接スーツに触れることはないが、下半身はまるで無防備。スラックスに直接汗が触れベタベタになることもしばしばだ。当然、細菌が喜んで増殖する。

というわけで、最近利用する人が増えているのが下半身のインナー。別名、ステテコ。これ一枚を穿くことでサラサラ感をキープできる。必須アイテムかも。