ニオイ発生の真犯人を暴いて、体臭からオサラバせよ!
いよいよ春らしい陽気になり、汗もかけば匂いも気になってくるように。そこで登場するのが、天才的な洞察力と推理力を持つ「スメル探偵ホームズ」。悪臭が放たれるところどこにでも現れ、その原因を突き止めて問題解決へと導くニオイ専門探偵だ。今回のニオイ案件は、ズバリ体臭。体臭を発生させる凶悪犯を見つけ出せ!
取材・文/石飛カノ 撮影/山城健朗 イラストレーション/山口正児 監修/出来尾 格、伴 和佳、池田浩二(共にニベア花王)、山縣義文(ライオン)
(初出『Tarzan』No.699・2016年7月7日発売)
目次
滝のような汗。これこそ臭いの真犯人!?
とくに夏の暑い時期、炎天下で人はだらだらと汗をかく。汗が蒸発するときの気化熱を利用して上昇した体温を下げるためだ。
その汗の大部分は「エクリン汗腺」という汗腺から分泌される。エクリン汗腺は唇や生殖器など一部を除く、全身の皮膚に分布している。その数、1平方センチメートルのエリアに130〜600個。総数は300万個ともいわれている。ちなみに一日にかく汗の量は平均して700〜900ml。
「汗くさい」とよく言うくらいだから、クサい。いや、怪しいという意味でだ。非常にクサい!
エクリン汗腺からとめどなく流れ出る汗は、皮膚の上でさまざまな細菌と出合う。そこで渾然一体となって酸っぱいようなほろ苦いような独特のスメルが発生するのかもしれない。そう、汗こそ容疑者の大本命だよ、ワトスン君!
皮膚上に広がる天然のクリーム。もしや、それが体臭の原因?
真皮には毛を包み込んでいる毛包が斜め状になって存在している。表皮の上にある毛包の出口が、いわゆる毛穴だ。で、毛包の横っちょにちょこんとついている袋状の器官。これが皮脂腺。
皮脂腺は「ワックスエステル」「トリグリセリド」「脂肪酸」などからなる皮脂をせっせと作り出す工場。皮脂は毛穴から皮膚上に出ていって、汗と混ざって皮膚の表面に広がる。いってみれば天然のクリーム。このクリームの膜はpH4〜6の弱酸性の状態に皮膚を保ち、外から有害物質が侵入するのを防いでいる。
カラダを外敵から守っているわけだから、犯人のはずがない? いや臭いという意味では話は別。というのも、酸化した油が臭うように、脂ぎったオヤジ臭の正体は皮脂ってことも考えられるんじゃないか? 依然、こいつも容疑者のひとりだ。
皮膚に常駐している最近が匂いを発生させる黒幕か?
皮膚の上にはさまざまな細菌や真菌が棲んでいる。一説にはその数、1兆個ともいう。このうち、3大常在菌と呼ばれるものが、「表皮ブドウ球菌」「アクネ菌」「マラセチア菌」だ。
これらは菌といっても人に害をなすわけではなく、通常の状態では人と仲良く共生している状態。たとえば表皮ブドウ球菌は抗菌作用のあるペプチドを作って皮膚を有害な細菌から守っている。
ただ、ごく一部の人では皮膚上に「コリネバクテリウム」といった特殊な菌が紛れ込んで、これがアクネ菌の作る脂肪酸と混ざりワキガ臭が発生することもある。また、アクネ菌は毛穴が詰まった空気のない環境では炎症を起こす物質を生成する。マラセチア菌は脂が大好物で、頭皮や顔などに多く存在し、増えすぎると脂漏性皮膚炎などの原因に。
むむっ、ワトスン君、ここで皮膚常在菌という隠れた容疑者が浮上したようだ。こいつは見逃せない!
微妙な場所にかくアポクリン汗。“男くささ”の正体かも?
ヒトがかく汗はなにもエクリン汗腺から出るものだけではない。もうひとつ、「アポクリン汗腺」という汗腺から出る汗もある。アポクリン汗腺はエクリン汗腺のように真皮や表皮に単独で存在しているのではなく、皮脂腺同様、毛包とユニットになっている汗腺。
これは全身に分布しているのではなく、脇の下、乳首周辺、外耳道、生殖器周辺に多く存在している。分布する場所も場所で、毛とセット。しかも思春期以降に発達することから、生殖機能と関連しているのではないかと考えられている。
袋状になったアポクリン汗腺の中には細菌が相当数いて、ここで汗が製造されるといきなり菌と混じり合うことになる。
最初から細菌まみれの汗となれば、これはもう臭うに違いない。よくいう「男くささ」の実態は、アポクリン汗なんじゃないだろうか。ワトスン君、どう思うかね?