大人のための平泳ぎ講座。初心に帰ってマスターしよう!

取材・文/井上健二 イラストレーション/中村知史 監修/加藤健志

(初出『Tarzan』No.746・2018年7月26日発売)

日本人は、平泳ぎに向いている。

1kmを1時間ほどで優雅に泳ぐ大人スイマーになるために、ぜひ覚えておきたい泳法が平泳ぎ。クロールとスイッチして泳ぐのもいい。

「肩甲骨の付き具合など、骨格的に日本人は、平泳ぎに向いているといえます」(東海大学水泳部ヘッドコーチの加藤健志さん)

平泳ぎには大きく分けると「ウェーブ型」と「フラット型」がある。

ウェーブ型は、波打つようなカラダの上下動を活用しながら、両膝を開いてガニ股のまま足裏で水を押し出すウェッジキックを行う。ウェッジキックとはいわゆるカエル足だ。ここでは初心者にもやりやすいウェーブ型を中心に解説していくが、トップスイマーでもウェーブ型で泳ぐ選手は少なくない。

一方のフラット型は上下動をなるべく抑えつつ、水面に近いところをミズスマシのように進む。キックは両膝を開かずにまっすぐ後ろに水を押し出すウィップキックである。

今回はウェーブ型のストロークとキックの効率的なフォームとプロセスをイラストで解説している。平泳ぎのメカニズムを頭に入れて、そこに近づくためにイメージトレーニングを重ねたい。

ウェーブ型・ストロークの5つのプロセス。

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1.エントリー&グライド

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両腕を肩の延長線上にまっすぐ伸ばしてエントリーする。その際、手のひらを少し外側に向け、両手の親指から優しく入る。続いて遠くの水を捉えるようにひと伸びするグライド。

2.キャッチ

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手のひらを外側に向けて、スカーリングの要領で両腕を少し横に開きながら肘から先で水の塊を捉えるキャッチを行う。このキャッチがアウトスイープの始まりとなる。ここまで鼻から「ん〜」と息を吐いておく。

3.アウトスイープ(プル)

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手のひらを外側に向けたまま、両腕を左右に開いて水を搔くアウトスイープを行う。肘を高く保つ「ハイエルボー」で60〜90度の角度まで開く。水をたくさん摑んで浮力を得たら、頭を水面上に出し、口を開いて呼吸を行う。

4.インスイープ(フィニッシュ)

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呼吸をしつつ、水を抱えて胸に向かって搔き込む。手のひらを後ろに向け、腕を内側へ巻き込むように動かしながら、手のひらを内側に返してフィニッシュ。顎下で手を合わせる。

5.リカバリー

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4大泳法の中で唯一、平泳ぎだけが水中でリカバリーを行う。フィニッシュから動きを止めず、水面と平行に一気に両腕を前に伸ばす。リカバリーでは手のひらは下に向ける。

ここにも注意! ストロークのポイント。

ストローク
平泳ぎの腕の動きは、プールの底から見たときに「逆ハート形」を描くのが正しい。肘から先を手のひらだと思い、斜め45度に傾けて、水をこねるように内外に動かすスカーリングの要領で肘から先で水を摑んだら、手のひらを外→後ろ→内→下と向きを変え、水を集めて推進力に変える。これらの一連の動きはいずれも肩の前で行う。動きが止まるのは、両腕を前に伸ばしたときだけだ。

ウェーブ型・キックの5つのプロセス。

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1.ストリームライン

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両脚を水面と平行に伸ばしてストリームラインをできるだけ長くキープする。その際、足首はまっすぐ伸ばしておく。足首が曲がっていると水の抵抗が増えてマイナスになる。

2.引きつけ

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踵を徐々にお尻に引きつけて、膝を肩幅くらいに開く。水の抵抗を受けないように太腿は立てない(お腹と太腿の角度は110〜130度が理想)。膝が力んだり、足首が硬かったりすると、太腿が立って水の抵抗になってしまう。

3.蹴り出し

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足首を曲げて、ガニ股のまま足裏全体で水を捉える。両膝を伸ばして捉えた水を後方へ押し出す。できるだけ長い間水を蹴り出そうと意識する。膝を曲げすぎると水の抵抗になりやすい。

4.蹴り挟み

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膝が伸びたら、間にある水を挟むように両脚を閉じていく。これがさらなる推進力の上積みにつながる。

5.フィニッシュ

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両脚が伸びたところで足首のスナップを利かせる。最後は両脚を少し水面に向かって持ち上げてやると、抵抗の少ないストリームラインに近づき、ブレーキがかかりにくい。

教えてくれた人

かとうつよし
加藤健志さん(かとう・つよし)/1965年、愛媛県生まれ。東海大学水泳部部長兼ヘッドコーチ。JOCオリンピック競泳強化コーチ、イトマンスイミングスクール特別コーチも兼任。愛弟子の金藤理絵選手はリオ五輪女子200m平泳ぎ金メダル獲得。自身もマスターズスイマー。