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昼間、脳疲労をリセットする3つのテクニック|心身も神経も、すべて脳の疲労でした

デスクワークの疲れ、精神的疲労、運動の疲労…。あらゆる疲れの発信源はほかならぬ脳にある。その疲労を取って心身を絶好調に導くため、昼間できるテクを3つ紹介。

様々な疲れとは、すなわち脳の疲れである!

疲れが残ったままでは体調は上向かない。では、疲れの正体とはなにか。わたしたちはデスクワークは精神的、運動は肉体的な疲労と分けて考えがちだが、すべての疲労は脳の疲労だった。

「私たちの研究では、4時間カラダに負担を加え続けても、筋肉にも肝機能にもほとんど影響がないことがわかっています」(疲労の専門家である大阪市立大学大学院の梶本修身教授)

運動で脳が疲れるのは、筋肉の伸縮はもちろん、血液循環や体温上昇の抑制などを水面下ですべて脳がコントロールしているから。疲れが抜けないうちに次の運動をすると怪我などのトラブルを起こしやすいのは、脳が無意識に行っているコントロールが疲れのために乱れてしまい、動作やフォームに微妙なズレが起こってしまうからなのだ。

「疲労」と「疲労感」は異なる

自律神経の疲労を、疲労感と自覚するのは脳の前頭葉。前頭葉は意欲・達成感の中枢で、前頭葉が異常発達したヒトは意欲・達成感が疲労感を容易に消す。徹夜したプレゼンが成功するといった達成感があると、疲労はあれど疲労感はない。

「この疲労感なき疲労が疲労の蓄積を招き、過労死リスクを高めます」

疲労の累積を避けるために試したいのは、疲労を招く負荷量とそれによる疲労度の見える化。

負荷には大きく、運動・行動、デスクワーク、過度の飲酒、その他(上司からの叱責や知人との喧嘩など)の4つがある。それぞれを記録し、さらに翌朝起きた瞬間、前頭葉が働く前の感覚で、どのくらい疲れが残っているかをモニタリング。そして疲労度ができるだけ少なくなるように負荷量の調整に励もう。

脳疲労を取るためにできる3つのテクニック

脳疲労を昼間にリセット|心身も神経も、それすべて脳の疲労でした

1. 集中しすぎず、タスクを絞り、上手に手を抜く

一般的に集中は善であり、落ち着きがなく注意散漫なのは悪とされる。

でも、疲れない脳を作るには、集中しすぎないのがポイント。集中すると脳の同じ場所ばかりが使われて酸化ストレスが溜まり、疲労が生じやすい。同じことを続けて「飽きた」と感じるのは、集中を避けるため「そろそろ他のことをせよ」という脳からのサインだ。それを無視して集中を続けると脳が疲れるし、知的パフォーマンスも低下する。

「1日8時間集中して100%仕事を頑張ろうとするのが間違い。集中より注意をうまく分配する方が生物には重要。適度に休みを入れて手を抜き、60%の努力で70%の成果が出せたら大成功だと発想を切り替えるべき。それが本当の働き方改革」

疲れない真の働き方改革のために大事なのは、日々のやるべきこと(タスク)に優先順位を付け、上から順に片付けること。タスクを全部片付けようとせず、その日の疲労度に応じて処理するタスクを絞ろう。

2. 変化を求めて席を立ち、自らゆらぎを作る

オフィスは通常窓を閉め切って空調を効かせ、蛍光灯で隅々まで明るく照らした変化のない均一の環境だ。仕事効率を上げる意図だろうが、それが逆効果となり、脳疲労を誘発する恐れがある。

木漏れ日やそよ風、小川のせせらぎのように、自然の光や風や音はある程度の規則性を持ちつつ、一定の不規則性を持つ「ゆらぎ」がある。ヒトも自然の一部だから、脳や自律神経にも適度なゆらぎがある。自然に親しむと心からホッとできるのは、外界と内面のゆらぎがシンクロして心地良いから。ゆらぎのないオフィス環境は不自然でストレスだから、交感神経を優位にして疲労を招くし、ゆらぎを失った脳の思考パターンは均一化して新たなアイデアも生まれにくい。どうすべきなのか。

仕事場にゆらぎがないなら、自ら作り出せばいい。1時間に1回はデスクを離れ、トイレやコンビニまで歩くだけでも環境が変化してゆらぎが生じる。可能ならときおり窓を開けたり、デスク上に観葉植物を置いたりして自然を感じやすくしよう。

3. 自分だけの空間と時間でリラックスできる人間になる

満員電車に揺られて通勤し、大勢の人たちとオフィスで仕事をして、公私ともに見知らぬ他人と毎日のように出会う……。現代人にとっては当たり前の状況だけれど、それも脳疲労の誘因となる。

「ヒトという動物は広いアフリカ大陸で進化したため、電車やオフィスのような狭い空間で大勢の人と緊密に触れ合う環境を想定していない。原始時代の狩りだってせいぜい数人単位のチームで行っていました。想定外の状況なので交感神経が興奮し続けて脳疲労が溜まるのです」

かといっていきなり在宅勤務は無理だろうから、せめて自宅とオフィス以外のいわゆるサードプレイスで自分一人になる時間と空間を設ける。オフィス近くのインターネットカフェやカラオケ店の個室で、30分でいいから一人の時間を作り、交感神経の興奮を抑えて副交感神経を優位にしよう。誰もいない公園のベンチで一人になり息抜きをするのは、ゆらぎ環境に身を置けるので一石二鳥。

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取材・文/井上健二 取材協力/梶本修身(大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授、東京疲労・睡眠クリニック院長)

(初出『Tarzan』No.757・2019年1月24日発売)

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