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なぜ人は眠くなる? 睡眠負債って何? 3つのキーワードから睡眠の謎に迫る

ずっと起きていると眠くなる、果たしてその理由は? 「睡眠リズム」、「睡眠負債」、「睡眠物質」の3つのキーワードを読み解き、いまだ解明されていない睡眠の謎に迫る。

健全な眠りのサイクルとは?

キーワード1「睡眠リズム」

ベッドに入ってバタンキュー、気がついたら朝だった。という幸運かつ健全な人は睡眠について熟考する必要はない。ただ、その安らかな眠りをモデルケースとさせていただくことにする。

バタンキューの直後、睡眠の深度はその夜で最も深いレベルに突入する。後に詳しく述べるが、睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があり、このうちノンレム睡眠の深度は4段階あるとされている。若くて生きのいい人間ならば、眠りに入ってから数十分程度でレベル3から4の深い睡眠に達し、その後レム睡眠にシフトする。このサイクルが朝までに4〜5回繰り返される。1サイクルの長さには個人差があり50〜120分。

1サイクルごとに睡眠深度は浅くなり、ハッと気づけば爽快な朝。

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規則的リズムを刻む健全な睡眠サイクル。
眠りについてすぐにノンレム睡眠の最も深いレベルに達し、その後、レム睡眠が現れる。朝の覚醒までこのリズムが4〜5回続く。1サイクルは約90分といわれるが実は個人差がかなり大きく、50分という人もいれば120分の人もいる。

覚醒中の負債を睡眠で返却する。

キーワード2「睡眠負債」

日本人の5人に1人は「負債」を抱えている。お金じゃなく睡眠という財産を日々切り崩し、負担を背負っている。そう、最近よく耳にする睡眠負債というヤツだ。

睡眠負債というと何だか深刻な感じだが、平たく言えば「寝不足」のこと。

眠気や睡眠の深さはその前の覚醒時間や心身の疲労の影響を受けている。起きている時間が長いほど睡眠負債は嵩んでいく。徹夜明けのあのシンドさは、大きな負債を抱えて首が回らない状態と考えていい。

この睡眠負債と一日の覚醒レベルを図式化したのが下の概念図。睡眠医学の世界では「ツー・プロセスモデル」と呼ばれている有名な概念だ。

睡眠負債は起きている間嵩む一方で、その負債を返済する方法はただひとつ、バタンキューと眠るしかない。この概念は非常に分かりやすいが、じゃあ睡眠負債の実態って一体何なの? という答えにはなっていない。いってみれば睡眠と覚醒の現象を説明しているだけ。

負債が溜まっていくメカニズムも眠ることによって返済が完了するメカニズムも、未だ謎に包まれているというのが現状なのだ。

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最も古典的な睡眠負債の概念図。
1982年にボルベイらが提唱した「ツー・プロセスモデル」。白い波形のラインは覚醒シグナル。覚醒中に溜まっていく睡眠負債を睡眠によって返済するという概念を表したもの。40時間寝ないで覚醒しっぱなしだと負債がどんどん蓄積。

脳の中の物質が眠りを促す?

キーワード3「睡眠物質」

睡眠負債のメカニズムには複合的な条件が重なり合っているに違いない。そう考えた睡眠の研究者たちは、20世紀初頭に先駆的な発見をする。長時間断眠させた犬の脳脊髄液を別の犬の脳内に投与したところ、その犬が突如としてグーグー眠ってしまったのだ。

こうして、脳内に眠りを促す睡眠物質が存在するのではないかという考え方が広がった。睡眠負債の正体の一部は睡眠物質と見たり!

現在までに30種類に及ぶ睡眠物質候補が報告されているが、その中で最も有力なのが「アデノシン」という物質。アデノシンはあらゆる細胞のエネルギー源、ATPの構成成分。アデノシンにリン酸が3つくっついたものがATPだ。

全身の組織や臓器の中で、脳は最も大食らい。ATPを大量に消費するので、その分解物であるアデノシンがどんどん溜まる。一方で、眠るとアデノシンは分解されたり、ATPに再合成されたりして量が減る。

が、話はそう単純ではない。アデノシンの受容体を破壊したマウスが普通に眠るし起きもするのだ。かくて、眠りの決定打とは言い難いのだ。

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ATPが分解される際にエネルギーが発生。
アデノシンに3つのリン酸基(P)が結合したATPから、ひとつのリン酸基が外れるとADPに、ふたつ外れるとAMPになり、その際エネルギーが発生する。よって膨大なエネルギーを要する脳にはアデノシンが蓄積。

取材・文/石飛カノ 撮影/山城健朗 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/大谷亮治 監修/櫻井 武(筑波大学医学医療系)

(初出『Tarzan』No.730・2017年11月9日発売)

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