• ハッピーなデブという道もある|脂肪について、本当の話をしよう(4)
FOOD
2019.01.21

ハッピーなデブという道もある|脂肪について、本当の話をしよう(4)

20181225_moriya_05
森谷敏夫(もりたに・としお)/1950年、兵庫県生まれ。専門は応用生理学、スポーツ医学。京都大学名誉教授。京都産業大学、中京大学客員教授。アメリカスポーツ医学会をはじめ多数の学会で理事、評議員を務める。発表した論文は200本以上。

本誌749号で運動生理学の権威・森谷敏夫先生に取材し、叱ってもらった『ターザン』編集部。叱られたくてまたまた先生を伺いました。これまでの全3回の記事で森谷先生の講義は終了しましたが、今回は補習の時間。『ターザン』編集部員が個人的な脂肪の悩みについて相談しました。

これまでの講義内容:

第1部:遺伝で肥満にはならない!|脂肪について、本当の話をしよう(1)

第2部:リバウンドしたくないなら交感神経を刺激せよ!|脂肪について、本当の話をしよう(2)

第3部:サルコリピンをノックアウトしたら太ります|脂肪について、本当の話をしよう(3)

ハッピーなデブという道もある

Tarzan (トントン)研究室まで押し掛けてすみません。今日の講義で質問し損ねたことがありまして。

森谷先生(以下、森谷) いいけど、これから別の大学の講義があるから、手短にね。

Tarzan 第1部の講義で、脂肪細胞の数は子どもの頃に増えるって話がありましたよね? 僕、子どもの頃肥満児で、そのとき脂肪細胞が増えちゃったと思うんですけど、大人になるにつれ人並みの体型になりました。でも40歳越えてからは運動してるのにお腹が出てきてしまって、どうしたらいいかと。

森谷 脂肪は一定以上に大きくなると、炎症を起こします。細胞膜が引っ張られて火傷のような状態に陥るんです。

Tarzan (腹を押さえて)火傷…ですか。

森谷 とくに炎症を起こした内臓まわりの脂肪細胞からは、高血圧や糖尿病、動脈硬化、血栓、認知症、がんなどの病気を引き起こす生理活性物質がたくさん出ることが分かっています。

Tarzan メタボってことですよね。僕、多分、それ寸前です…。

森谷 でも、腹が出ている人がみんなメタボかというと、そんなことはありません。実際、お相撲さんにはメタボは一人もいませんから。内臓脂肪の特徴は運動で消費されやすいということ。彼らは食事で野菜をたくさん食べてよく運動するので内臓脂肪はほとんどなく、あるのは皮下脂肪です。

Tarzan 運動していれば、内臓脂肪は溜まらないんですか?

森谷 運動したときに骨格筋から出る生理活性物質は内臓脂肪が出すそれと真逆の働きをします。骨格筋由来の生理活性物質は抗炎症作用を発揮するので、よく運動する人は健康的で内臓脂肪が少ないことが分かっています。

Tarzan 僕、ジョギングが日課です!

森谷 (聞こえないふりで)こんな興味深い疫学データがあります。太っていて体力がない人と痩せていて体力がある人の8年間の病気の死亡率を比べると、前者は10倍死亡率が高いことが分かりました。

Tarzan それはいかにも、という感じがします。

森谷 でも同じデータでは、太っているけど週に5、6回運動する人は、スリムだけど運動していない人に比べて死亡率が低いことが分かったんです。

Tarzan えっ? 痩せてる文科系より太ってる体育会系の方が長生きするってことですか?

森谷 まあ、そういうこと。運動しているから内臓脂肪が少ない。内臓脂肪が少ないと悪い生理活性物質が出ないから死亡率が低いということです。太っていること自体に問題はない。よく運動して内臓脂肪が少なければ、ヘルシーでハッピーな人生が送れるわけです。

行く先はメタボ人生か? ハッピーなデブ人生か?

Tarzan 僕、どっちですかね? 一応、健康診断のデータを持ってきたんですけど。

森谷 BMI25.2、軽肥満。なんでBMIなの? 体脂肪率じゃないの?

Tarzan 体脂肪率は測りませんでした。

森谷 いまだにBMIが肥満の指標になってるのは、20年くらい前アメリカで肥満に関する論文を書くときに、体脂肪率が測れる機器がなかった名残という説もある。

Tarzan 体脂肪計って意外と歴史が浅いんですね。

森谷 実際、体脂肪を正確に測るのは難しいんです。体脂肪計の中には同じ身長と体重で同じ体脂肪率にならないよう、100人分くらいのデータを基にした数式が入ってる。最初に身長と体重を入れてBMIをはじき出して、コンピューターに「こいつ、ちょっと太ってるで」とか「痩せてるで」と伝える。で、カラダに電流を流して水の量を測る。水が多いというのは筋肉が多いということだから。その数値を数式に当てはめて体脂肪率を出す仕組み。だからBMIが低い女性は体脂肪率が少なめに出る。コンピューターには「この子ちょっと痩せてんで」と伝わるけど、実際カラダに電流流したら「あれ? この子太ってんで?」となって、「でもBMIから言うと痩せてるからこのへんにしとこ!」ということに。

Tarzan 隠れ肥満の場合は、コンピューターが忖度しての数値になるんですね。正確な体脂肪率を測りたいときはどうしたら?

森谷 インボディなどの体組成計なら比較的正確に計測できます。

Tarzan ジムに行ったときに試してみればいいんですね。でも、僕は「隠れ」じゃないから、普通の体脂肪計の数値と変わらないかも。

森谷 そうね。どれどれ、血圧は正常。内臓脂肪があったら血圧高いはずだから大丈夫じゃないの?中性脂肪も正常、オッケー。LDLコレステロールが高いけど、前日、何かいたずらしたの?

Tarzan してません! 酒も飲んでません!

森谷 でもHDLコレステロールが増えてるから問題ないでしょう。

Tarzan それじゃ僕は皮下脂肪型ということになるんですね。皮下脂肪は内臓脂肪より落としにくいっていいますけど、どうしたらいいですか?

森谷 いいじゃん、放っとけば。

Tarzan へ?

森谷 世の中にはハッピーな肥満者というのがいるのよ。布袋さんみたいに。内臓脂肪がなければコレステロールも血糖値も正常で病気にもならないんだから放っとけばいい。腹が出てるからメタボだろうというのは偏見。太っていること=悪じゃないんです。

Tarzan ハッピーなデブもまたあり?

森谷 その通り。補講終了!

こちらもチェック! 関連記事:


取材・文/石飛カノ 撮影/山城健朗 取材協力/森谷敏夫(京都大学名誉教授)
(初出『Tarzan』No.756・2019年1月4日発売)

Tarzan 公式アカウントから
最新情報をお届けします。

雑誌『ターザン』770号

ここにエラー文言が入りますなりゆきですここにエラー文言が入35文字以内

ご登録いただくと、弊社のプライバシーポリシーとメールマガジンの配信に同意したことになります

完了

ご登録ありがとうございます。

雑誌『ターザン』770号