松
松は強いんです。日本では古くから城の周りや防風林として植えられてきました。環境が厳しいところでも、力強く生きている。そして、常緑です。通年、葉を落とさないために城の目隠しとして使える上に、実は栄養価も高い。非常食としても有用だったんですね。
秋田には松皮餅という、赤松の樹皮の内側の繊維を練り込んだお菓子がありますが、ロシアや北欧ではヴァレーニエというシロップ漬けにした松ぼっくりを食べるそう。健康のために葉を青汁やスムージーとして飲む方もいらっしゃいますね。それから中国ではローストした葉っぱを松葉茶として飲んでいます。
今回は、澄まし汁の出汁として松葉を使いましたが、お米と一緒に炊き込んでも旨味成分が出て、美味しいんです。特にさつまいもの炊き込みご飯はオススメ。和食のあしらいとして使われる通り、殺菌作用もあるのでオイルにも向いています。なぜ松が日本中にあるのか? それは、とても心強い味方だからかもしれません。
こんなふうに使ってみるのはどう?
●「食べる」
松の葉出汁とキノコの澄まし汁
―材料―
※2杯分
・水500g
・乾燥松の葉30g、フレッシュ松の葉10g
・好みの麺つゆ 25g
・醤油 25g
・酒 30g
・塩 味をみて調整用
・好みのきのこ数種類 80g
―作り方―
お正月らしく、松で出汁をとったお吸い物です。とても優しい味なので、きのこの旨味と合わせていますが、ほんのり奥の方に松が香るはず。味付けは醤油だけでも良いですが、市販の麺つゆを使うと味が決まりやすいです。仕上げに松をあしらって、見た目にも美しい椀を作ってみてください。
●「使う」
松のオイル
―材料―
・太白ごま油(200ml)
・フレッシュな松の葉50gほど
乾燥する季節に、ほんのり香るオイルとして髪や肌に馴染みます。松の香りと聞いて、はっきりとイメージできる方はそれほど多くないかもしれませんが、とても爽やかで、スーッと気持ちも落ち着くはずです。太白ごま油には抗酸化作用、松には殺菌効果があるので、冷暗所で保存すれば、漬け始めてからおおよそ1ヶ月ほど使うことができます。
1月のハーブスタンドの様子
富士山は真っ白になり、その山麓にある私たちの森もとても冷え込んでいます。霜が降り、時折、雪も舞っている。いつもよりもさらに静かな冬の森では、小さな生命反応にも敏感になりますね。ウサギやリスなどの小動物が、時折、遠くで葉を踏む音がします。