1月のハーブ_松|ワンモア・ハーブvol.3

日本人にとって馴染み深い松は、「非常に有用な植物」と〈ハーブスタンド〉の平野優太さんは言います。かつては日常生活で自然と使われていた松をハーブとして捉え直し、もう一度、暮らしの中へ。平野さんの提案は決して奇抜なものではなく、むしろ伝統を繋ぐもの。正月飾りのイメージが強い松には、どんな使い方があるのでしょう。

取材・文/村岡俊也 撮影/ナタリー・カンタクーゾ 料理/阿部匠海(Stage)

松は強いんです。日本では古くから城の周りや防風林として植えられてきました。環境が厳しいところでも、力強く生きている。そして、常緑です。通年、葉を落とさないために城の目隠しとして使える上に、実は栄養価も高い。非常食としても有用だったんですね。

秋田には松皮餅という、赤松の樹皮の内側の繊維を練り込んだお菓子がありますが、ロシアや北欧ではヴァレーニエというシロップ漬けにした松ぼっくりを食べるそう。健康のために葉を青汁やスムージーとして飲む方もいらっしゃいますね。それから中国ではローストした葉っぱを松葉茶として飲んでいます。

今回は、澄まし汁の出汁として松葉を使いましたが、お米と一緒に炊き込んでも旨味成分が出て、美味しいんです。特にさつまいもの炊き込みご飯はオススメ。和食のあしらいとして使われる通り、殺菌作用もあるのでオイルにも向いています。なぜ松が日本中にあるのか? それは、とても心強い味方だからかもしれません。

こんなふうに使ってみるのはどう?

●「食べる」
松の葉出汁とキノコの澄まし汁

―材料―
※2杯分

・水500g
・乾燥松の葉30g、フレッシュ松の葉10g
・好みの麺つゆ 25g
・醤油 25g
・酒 30g
・塩 味をみて調整用
・好みのきのこ数種類 80g

―作り方―

1.ドライ、フレッシュ、両方の松の葉を入れて沸騰させ、出汁を取る。

2.極弱火にして5分置き、それから濾す。

3.鍋に酒を入れ、アルコールを飛ばす。

4.出汁、麺つゆ、醤油、きのこ(今回は、しめじと舞茸)を入れ、沸騰させる。

5.きのこに火が通ったら味をみて、足りないようなら塩で味を整える。

6.椀によそい、松葉を盛り付けて完成。

お正月らしく、松で出汁をとったお吸い物です。とても優しい味なので、きのこの旨味と合わせていますが、ほんのり奥の方に松が香るはず。味付けは醤油だけでも良いですが、市販の麺つゆを使うと味が決まりやすいです。仕上げに松をあしらって、見た目にも美しい椀を作ってみてください。

●「使う」
松のオイル

―材料―

・太白ごま油(200ml)
・フレッシュな松の葉50gほど

1.太白ごま油を火にかける。一度熱すると、肌につけやすくなるそう。

2.耐熱容器に移して冷ましておく。

3.松の木から葉を外す。シゴくようにすると簡単に外れる。

4.傷んだ葉や汚れを取り除いておく。

5.松の葉を刻んでオイルへ。

6.一晩浸けたら使うことができる。

乾燥する季節に、ほんのり香るオイルとして髪や肌に馴染みます。松の香りと聞いて、はっきりとイメージできる方はそれほど多くないかもしれませんが、とても爽やかで、スーッと気持ちも落ち着くはずです。太白ごま油には抗酸化作用、松には殺菌効果があるので、冷暗所で保存すれば、漬け始めてからおおよそ1ヶ月ほど使うことができます。

1月のハーブスタンドの様子

富士山は真っ白になり、その山麓にある私たちの森もとても冷え込んでいます。霜が降り、時折、雪も舞っている。いつもよりもさらに静かな冬の森では、小さな生命反応にも敏感になりますね。ウサギやリスなどの小動物が、時折、遠くで葉を踏む音がします。