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山を走る上で、大切なこと。

山に入る、そして走る。そのためには、ロードを走るのとは異なる備えや知識が必要だ。11月に秩父を舞台に開催されるトレイルランニング大会『FunTrails Round 秩父&奥武蔵』を主催するプロトレイルランナーの奥宮俊祐さんに、山を楽しく駆けるための準備について話を聞いた。

教えてくれた人

奥宮俊祐/プロトレイルランナー、〈ファントレイルズ〉主宰。2015年日本山岳耐耐久レースで優勝を皮切りに、その後も国内外のレースで活躍。同年埼玉で初となる100k超えのトレイルランニング大会『FunTrails Round 秩父&奥武蔵』を開催し、今年で10回目を迎える。

山を走るということ。

「山を走る行為は、旅に近い感覚があります」

地域と地域を山で繋ぎ、それぞれの集落の暮らしを垣間見る。そしてその土地の食べものをいただき、また次の場所へと移動する。ランニングという移動手段を使えば、そんなローカルな旅が可能になる。

トレイルランナー奥宮俊祐さんは、秩父・奥武蔵というエリアで、多くの人に 自身が体験した“旅感“を味わってもらいたいという想いで『FunTrails Round 秩父&奥武蔵』※を主宰している。

※〈adidas TERREX〉やDM三井製糖の持続性エネルギー源《パラチノース®︎》が公式スポンサー。

「いきなり山を走るのはハードルが高いかもしれませんが、その点安全が管理された大会は装備させ整えれば安心して山に入ることができます。迷いやすい箇所には誘導のスタッフが立ち、一定区間に食べ物と飲み物を補給できるエイドステーションもある。10〜20kmのレースであれば、気軽に自分の走力試すことができます。さらにロードで2,30km走ることができるか、2泊3日程の縦走を経験したことがある人であれば、『FunTrails Round 秩父&奥武蔵』の50kも十分チャレンジすることができますよ」

色づいた山々に澄んだ空気と、秋の山はこの上なく気持ちがいい。そんなタイミングでトレイルランニングデビューを目指すなら山遊びの基本を抑えておきたい。

十分な食糧計画。

山を走るための準備、一つ目は「補給」。ゆっくり歩いても適度に走っても、アップダウンのある山で遊ぶと普段よりも格段にお腹がすく。エネルギーを切らさず無事ゴールに辿り着くには、余裕を持って行動食を準備することが重要だ。

「トレイルランニングの場合、1時間あたり150〜200kcalのエネルギーを摂るのが望ましいとされています。よって、3時間の山行であれば最低でも約600kcalの行動食が必要になる。さらに山の中では、道を間違えてしまったり、天候が変わって停滞をしたりと、予想よりも時間がかかることもよくあります。万が一に備えて少し余分に食べ物を持っていくといいでしょう」

おにぎりやパンもちろんいいが、荷物が重くなればなるほどそのぶん疲れやすくもなる。レースに出場する選手はなおさら、腰を下ろしてゆっくり咀嚼する時間もない。そんなトレイルランニングの場面で重宝するのが、効率的にエネルギーを摂取できる補給食だ。レース経験が豊富な奥宮さんが補給について長年試行錯誤を重ねた結果、昨年たどり着いたのが《パラチノース》だという。

「ジェルや羊羹のように素早くエネルギーに変わる補給食に対し、《パラチノース》は吸収が穏やかなため、エネルギーが持続するのが特徴です。たとえばオレンジジュースは高GI※な補給食ですが、《パラチノース》は低GIな補給食。実際に〈シンパフィット〉というアプリを使って血中のブドウ糖濃度を測ってみて実感しました。つまり、突然ガクンとエネルギーが切れにくいということ。長時間動き続けるトレイルランナーにとって安心感があります」

※GI値=グリセミックインデックス食品に含まれる糖質の吸収の度合いを示し、摂取2時間までの血液中の糖濃度を測ったもの

《パラチノース》は1袋20gあたり76kcal。おにぎりなどの行動食と合わせて数本ザックに入れておけば、万が一のときにも安心のお守り代わりになる。

パラチノース

水の入ったソフトフラスクに《パラチノース》を2〜3本入れ、走り出す30分前から少しずつ飲む。

パラチノース

走っている最中も、水分補給としてこまめに摂取。

パラチノース

《ピュアパラスティック》

《パラチノース》はてん菜から作られた砂糖を酵素変換したもので、自然界では蜂蜜などに含まれる「天然の糖質」。エネルギーは砂糖と同じく4kcal/gだが、吸収スピードは5分の1とゆるやかで持続的にエネルギーを供給できる。この《パラチノース》が100%配合されたのが《ピュアパラスティック》。レース中は水500mlに40g(スティックタイプ2本)、またはスポーツドリンク500mlに20g(スティックタイプ1本)を入れてこまめに補給可能。甘さは砂糖の約半分でスッキリ飲みやすい。 20g×10袋入り 1,150円。

万全な装備。

山を走るための準備、二つ目は「装備」。

「前途したとおり、山では突然雨が降ってきたり、道に迷ったり、最悪の場合怪我をしたりと想定外の出来事が起こり得ます。恐れすぎる必要はありませんが、万が一に備えた準備は不可欠。最低でも怪我の応急処置ができるエマージェンシーキット、冷えを防ぐ防寒着、暗くなった時にあたりを照らすヘッドライトは持ち歩くといいでしょう」

奥宮さんが普段から持ち歩いているエマージェンシーキットの中身は、体温低下を防ぐエマージェンシーシート、テーピング、絆創膏、三角巾、滅菌ガーゼ、ポイズンリムーバー、常備薬(痛み止め)等。グループを引率して山に入ることもあるため、参加者の出血に備えて感染対策のビニール手袋も常備している。

「凹凸の多い山道を走る際に多いケガが、捻挫です。ひどい場合は動けなくなることもありますが、テーピングやサポーターでしっかり固定さえすれば歩いて降りられることが多いです。ただし、かかる時間は走る時の倍以上。汗も冷えるので防寒着が必須になります」

ポケットにコンパクトに収納できるタイプなら、使わない時でも嵩張らない。《テレックス Xperior 2.5層構造 ライト RAIN.RAYジャケット》24,200円。偏光レンズのサングラスは、眩しさや照り返しを抑えコース状の凹凸もはっきり捉えられる。飛び出した枝葉から目を守るメリットも。

防寒着として1枚ザックに入れておくなら、防水性と透湿性を兼ね備えた薄手のレインジャケットがいいだろう。雨風を凌げるだけでなく、体温の低下を防ぐことができる。

「たとえどんなに晴れている日でも、山の中で停滞すると汗が冷えて体温が急激に下がります。『FunTrails Round 秩父&奥武蔵』では、そういったリスクに備え、50kの短いレースでもレインジャケットを必携品としています」

アディダステレックス

500mlのソフトフラスクを2本使用。胸元にあることで補給しやすいだけでなく、水分の減り具合を確認しやすいというメリットもある。

今季から搭載した厚みのあるソールは、弧を描く弓なり形状で転がるような蹴り出しをサポート。〈Continental™ラバーソール〉が険しい道や滑りやすい路面にもしっかり食いつき、安定感がある。 《テレックス アグラヴィック スピード ウルトラトレイルランニング》 23,760円。

山域周辺のリサーチ。

山を走るための準備、三つ目は、下山後のお楽しみを含めた「下調べ」。

山地図を開いておおよそのコースタイムとルート確認し、登山計画を立てておくことは入山前のルール。これに加えて下山後の立ち寄りスポットを調べておくのも、トレイルランニング“旅“の醍醐味だ。

奥宮さんが主宰する『FunTrails Round 秩父&奥武蔵』の舞台となる秩父&奥武蔵エリアも、歴史を感じられる寺社仏閣の数々や、セメント採掘のために削られた山容が特徴の秩父の名峰『武甲山』、11月が見頃の雲海など見どころが充実している。

「足腰の神様がいる『子ノ権現』や、国宝の仏像がある『高山不動尊』など、寺社仏閣を巡ることができるのもレースの魅力の一つ。自然を感じるという意味では『芦ヶ久保駅→大野峠→丸山→果樹公園→芦ヶ久保駅』の周回コースがおすすめです。広葉樹の多い山深いエリアで、レースが開催される11月は紅葉真っ只中。真っ赤に色づいた紅葉と、ふかふかの落ち葉の絨毯を楽めます。下山後は武甲温泉に浸かり、秩父名物のわらじカツ丼や味噌豚丼、秩父ホルモンなどの地元グルメもぜひ味わってほしいですね」

『FunTrails Round 秩父&奥武蔵』

西部秩父駅から徒歩15分の場所にある『羊山公園』をスタート地点とし、秩父と奥武蔵の山々をぐるりと一周するトレイルランニング大会。10周年を迎える今年は、100kのコースに加え50kと100mile(約168km!)が新設され、さらにパワーアップ。充実したエイドステーションでは、《秩父ワインゼリー》、《飯能すいーとん》、甘辛く煮付けたいなり寿司などご当地グルメが味わえる。

主催:FTR 秩父&奥武蔵実行委員会
企画・運営:FunTrails合同会社
オフィシャルパートナー:adidas TERREX
会場:羊山公園(前日受付、スタート および フィニッシュ)
https://fun-trails.com/race/100k/

※《パラチノース®︎》はDM三井製糖の登録商標です。

取材・文/黒澤裕美 撮影/伊藤明日香

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