ストレッチの科学④ PNF(固有受容性神経筋促通法)

カラダ作りに関する知識を深める「ストレングス学園」。今回からは筋の柔軟性を高めるストレッチをテーマに、その種類やメカニズムについて解説する。今回はリハビリにも使われる「PNF(固有受容性神経筋促通法)」について。

取材・文/オカモトノブコ イラストレーション/モリタクマ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)

初出『Tarzan』No.874・2024年2月22日発売

PNF 固有受容性神経筋促通法

問1. PNFストレッチでおもに用いられる筋の活動様式は?

  1. 短縮性収縮
  2. 等尺性収縮
  3. 伸張性収縮

筋肉の弾力性を高め、関節の可動域を広げるすぐれたストレッチ法として、競技スポーツの現場でも多く取り入れられるPNF(Propriocep
tive Neuromuscular Facilitation)。「固有受容性神経筋促通法」と訳され、もとは理学療法のリハビリテーションで用いられるテクニックのひとつだ。基本的にはパートナーの力を借りて行うが、部位によっては壁やタオルなどを使ったセルフストレッチの方法もある。

その特徴はファシリテーション(=促通)という言葉の通り、動きづらくなった筋肉や関節と感覚神経や運動神経とのつながりを活性化させ、その機能を引き出すこと。そして数あるPNFの種類でも、広く用いられる代表的な手法が「ホールドリラックス」というテクニックだ。

まず「ホールド」とは、パートナーからの外力を押し返し、抵抗する力を加えること。筋の長さを変えずに力を出力するため「等尺性収縮」が働き、問いの答えは②となる。続いて「リラックス」では力をフッと抜くことで筋肉が緩み、このメリハリを繰り返すことで、筋肉や関節のしなやかな動きを取り戻せるのだ。

PNFは運動の前後ともに適するが、特に推奨されるのはウォーミングアップへの導入。筋肉に強弱をつけながら逆向きの動きを交互に繰り返すことで、スポーツに必要な切り返しの動きが素早く、効率よくできるようになるのがメリットだ。

問2. PNFストレッチを行うときに働く筋肉の反応をすべて選べ

  1. 伸張抑制
  2. 自動抑制
  3. 相反抑制

ここからは、PNFの「ホールドリラックス」で行う具体的な手順とそのメカニズムを説明しよう。

まずは最初にターゲットになる筋肉を痛みがない範囲で伸ばし、ゆっくり通常の静的ストレッチ(=スタティックストレッチ)の状態に。続いてパートナーが筋肉をさらに伸張させる方向へ外力をかけ、これに対抗して押し返す力を5~10秒間キープする。ただしこの時間が長すぎたり、双方が力を入れすぎると、かえって筋肉は緊張するため要注意。7割くらいの力で行うように意識するといい。

その後は続けて、パートナーが力を緩めると同時に筋肉をリラックス。何度か繰り返すうち、関節の可動域が広がっていくのを実感するようになるだろう。

PNFでは筋肉に等尺性収縮の力が加わって腱が伸ばされると、筋が切れないようにセンサーとして働く“ゴルジ腱器官”が刺激を受け、筋肉を緩めようとする「自動抑制」の反射が起きる。

さらに筋肉が収縮すると、反対側の拮抗筋が緩むという「相反抑制」も同時に発動。こうした神経や脊髄の反射が複合的に働くストレッチ効果によって、筋肉の弾力性や関節可動域を安全に、効率よく高められるのだ。よって問いの答えは②と③。

PNF 固有受容性神経筋促通法

腿裏のセルフストレッチでは、仰向けで脚を上げて足裏にタオルを引っかける。膝は伸ばして伸びを感じるまで手で引っ張ったら、これに抵抗をかけるように踵方向へ力を入れてキープ。リラックスして繰り返す。