「うまい渓流魚と大自然で心身を癒やし、働く活力に」鰤岡力也さんと渓流釣り
釣りにハマる人が増えている。“食べるための釣り”こそ本筋であり醍醐味。人気のショップや飲食店の内装を手がける鰤岡力也さんの渓流釣りを拝見。
取材・文/宮田恵一郎 撮影/鈴木 新
初出『Tarzan』No.873・2024年2月8日発売
自ら作った道具で釣って、食べる、最高の贅沢
ヤマメやイワナ、ニジマスといった天然魚の保護の観点から、9月末頃から2月末頃まで、河川の禁漁期を迎える渓流釣り。そのため、「毎年、春が待ち遠しい」と話すのは、木工作家の鰤岡力也さん。大自然が広がる東北地方を中心に年間50回以上、全国の河川へ繰り出す強者だ。
「山道を歩きポイントへと向かう渓流釣りは、同時に登山も楽しめる、最高の遊びです。禁漁期は腕が鈍らないようアトリエ近くの管理釣り場〈うらたんざわ渓流釣場〉へ。ここは水がきれいで、放流されて育った魚体は肉厚でなかなか見事!」
釣り場は、相模原市を流れる神之川の最上流部にある。
「海釣りと違い、水中にいる魚の姿が透けて見えるので、沢を歩きポイントを見極めていきます。例えば、あの岩肌の下!」と狙いを決めると、竹竿を組み立て、ものの2、3分で仕掛けを準備してキャスティング。
「釣り竿を持つ手と逆の手でラインをたるませて持ち、釣り糸を出したり引いたりして長さを調整しながら素振りする動作は渓流釣りならでは。こうやって、狙った水面に仕掛けを落とし、あとは川の流れに任せてヒットを待つ。これを何度も繰り返していきます」
魚の食いつきが悪ければ、迷わずに毛バリを変更。
「どんな虫が生息しているか。これを読み切れないと釣れない世界なんです。魚を知るには、まずはフィールドを知ること。森や木々といった周りの環境も観察することが必須です」と話しながら、首から下げたチェストフライボックスを開けると、中には毛バリがわんさか。
「すべて自作の仕掛けです。色や大きさ、さらに水に浮くもの、沈むものなど、同じ仕様は一つとしてありません」
そう言って、いくつかの毛バリを試しながら、何度もキャスティングを繰り返す。途中、水に浮く小さい毛バリに変更したところ、1匹目がヒット! 釣れたのは、約25cmのニジマス。
「シンプルにオーブン焼きにするか、燻製にすると、これが酒のアテに最高!」と、この日はじめての笑みが溢れる。続いて、「来た、40cm級」と大物を釣り上げる。この管理釣り場の釣果制限である計10匹をあっという間に釣り上げ、この日は大漁。
「自分で作った釣り具で釣り上げると喜びも2倍! 美味しく調理できれば、喜びは3倍! ほんとに最高の贅沢です」