筋トレでダイエット。なら下半身トレがおトクな理由

運動で消費できるカロリーは思いの外、微々たるものだが、運動にはその後も脂肪が燃え続ける「アフターバーン効果」という大きなご褒美がある。その恩恵を最大限に得るには大きな筋肉が集まる下半身の筋トレがリーズナブル。

取材・文/井上健二 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/大谷亮治 取材協力/向本敬洋(東京理科大学教養教育研究院講師)

初出『Tarzan』No.835・2022年6月9日発売

スクワットをする人 アフターバーン効果

運動後も脂肪燃焼が持続する「アフターバーン効果」を誘発せよ

痩せるのに運動が欠かせないのは承知だが、30分のランの消費カロリーはあんパン1個分程度。肝心の体脂肪も思ったほど燃えない。

そう思うと心は折れそうだが、体脂肪を燃やす運動の威力は、その場限りでおしまいではない。運動後も、体脂肪を燃やし続けるのだ。これを「アフターバーン効果」と呼ぶ。

アフターバーン効果の正体は、運動後過剰酸素消費(EPOC)によるもの。EPOCとは、激しい運動をした後、疲労回復のために酸素の摂取量が増える現象である。

体内では酸素1Lで5キロカロリーのエネルギーが代謝されており、安静時にそのエネルギー源となるのは、おもに体脂肪。運動時以外でも、体脂肪はつねに代謝されているが、EPOCで酸素供給量が増えると体脂肪は普段より多めに燃えるから、痩せやすくなるというワケ。

「運動の種類や強度により、EPOCが続く時間は変わります。一般的に有酸素運動よりも、筋トレの方がEPOCは長続きしますし、高強度の筋トレでは最長38時間続くという報告があります」(東京理科大学教養教育研究院の向本敬洋講師)

筋トレをすると38時間酵素消費量が増える
運動前後 と 酵素消費量 の推移

ベンチプレス、パワークリーン、スクワットという3種目の筋トレを、8〜12回×4セット行った結果。トレーニング後、38時間にわたり、トレーニング前よりも酸素消費量が有意に増えている。Schuenke MD.et al. Eur J Appl Physiol(2002)86: 411-417

向本先生らの研究によると、EPOCを期待して筋トレをするなら、プッシュアップのような上半身の種目よりも、スクワットのような下半身の種目を重点的に行うのがお薦め。

お尻太腿の大きな筋肉を使うため、EPOCも多くなりやすいのだ。一度に8〜10回反復するのが限界という強めの負荷で、3セット行うのがベスト。少々辛そうだが、あとは1日半ほど体脂肪が勝手に燃え続けるのだから、試してみる価値アリ。