いくつわかる? 血管&血流のウソ・ホント16

血液と血管は、健康を左右する重要なファクター。だけど、意外にもその実態について知らないことが多いのでは? そこで今回は知ってるようで知らない、血液、血管のウソ・ホントをクイズ形式で紹介。あなたは何問正解できるかな?

取材・文/井上健二 イラストレーション/加納徳博 取材協力/梅津拓史(保谷厚生病院循環器内科部長)

初出『Tarzan』No.834・2022年5月26日発売

血管 ウソ ホント クイズ イラスト

① 血液はペットボトル500mLで20本分ある

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血液は、体重の約13分の1。体重65kgなら5kg分になる。血液の約半分は赤血球や白血球などの血球成分なので、水よりちょっぴり重いが、だいたい500mL入りのペットボトル10本分と思えばいいだろう。

その量で酸素や栄養素の運搬、不要な二酸化炭素や老廃物の排泄といった多彩な仕事をこなすのはご立派。心臓を出て最速約50秒で還流するほど、最小限の血液を効率的に巡らせる血管ネットワークが整っているのだ。

② 肌から見える血管の多くは動脈である

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手足に見える血管の多くは、動脈ではなく静脈。血液を隅々まで送る動脈が傷つくと一大事なので、動脈の大半はカラダの深い安全な場所を通り、代わりに静脈が体表に近いところを走るのだ。病院で腕から採血される際、注射針を刺すのも静脈。

ただし、例外もある。「首すじの頸動脈、手首の橈骨動脈、太腿の大腿動脈は体表に近いところを走っており、そこから詰まった心臓の血管などに治療用カテーテルを入れます」(保谷厚生病院循環器内科部長の梅津拓史医師)。

③ 耳たぶを見れば、血流の状態がわかる

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血流の良し悪しを気軽に知りたいなら、耳たぶに注目。耳たぶは体脂肪が豊富で大きな血管が少なく、ほとんどが毛細血管。血流が減ると、脂肪組織が萎縮するため、耳たぶに縦ジワが入るようになる。

「耳たぶにシワがある人は、血管内皮細胞の機能が下がり、脳心血管疾患に罹りやすいという報告もあります。血圧や血糖値が高い人で、シワを見つけたら、念のために内科で血管を詳しく調べてもらいましょう」。

④ オシッコが黄色だと血流は落ちている

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想定外に長引いたオンライン会議で水分補給を怠り、終了後にトイレに行った際、普段よりオシッコが黄色くて驚いた経験ってない?

それは脱水のサイン。水分不足で血液が濃くなり、血流はスローダウンしている。血漿は一定濃度に保たれる。一方、汗をかかなくても、水分は呼気や皮膚などから失われるので、水分補給を怠ると血液は濃くなる。すると濃度を保つため、排泄する成分が増え、その色でオシッコは黄色くなるのだ。

⑤ 血液には緑茶よりもコーヒーの方がいい

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血管と血流に悪さをする天敵は、有害な活性酸素による酸化。体内には酸化を防ぐ抗酸化酵素も備わるが、その活性は加齢で落ちる。

そこで大切なのは、抗酸化成分を摂り入れることだ。

もっとも手軽なのは、飲み物の活用。緑茶にはカテキン、コーヒーにはクロロゲン酸という抗酸化成分が含まれる。両方、アリだ。だが緑茶もコーヒーも利尿作用を持つカフェインが豊富。脱水で血液ドロドロにならぬように水分補給はこまめに。

⑥ 心臓は1時間で浴槽1杯分以上の血液を送り出す

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心臓の大きさは、本人の拳大。疲れ知らずのポンプで、 24時間休みなく動き続け、1回当たりエスプレッソカップ1杯分の70~80mLの血液を勢いよく送り出す。

心拍数が毎分70拍なら、1分間で約5L、1時間で浴槽1杯分(約240L)を超える300Lもの血液を射出するのだ。1日で約7200L、80歳まで生きるとするなら、一生で大型タンカー1艘分の約21万トンもの血液が、心臓から津々浦々までデリバリーされる計算。脱帽!

⑦ マッサージをするだけで血流が良くなる

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肩こりや腰痛に悩む人にはマッサージ店を利用する人も多い。慢性的な肩こりや腰痛のおもな原因は、血行不全。マッサージで一時的に肩こりや腰痛が軽くなるのは、硬くなった筋肉が緩み、血流が促されたからだ。

「アメリカ・イリノイ大学の研究では、①筋トレ+マッサージ、②筋トレのみ、③マッサージのみの3群に分けて調べると、①と③では90分後に血管内皮細胞の機能が改善し、血流が良くなることが示唆されています」。

⑧ 血流が澱むと血管は詰まりやすい

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下半身の筋肉は、「第二の心臓」。ポンプ作用で血液循環を促す。坐りっ放しだとこの作用が不発に終わり、流れが澱んだ川が汚れるように、血流が滞って血液は固まりやすい。それはいわゆるエコノミークラス症候群のリスク。

下半身で血栓(血の塊)が生じ、何かの拍子に移動して肺で血管が詰まる。「この他、不整脈の一種で心臓が震える心房細動が起こり、血流が滞ると、左心房という場所で血栓ができやすくなります」。

⑨ 歩くスピードが速い人は、血管も丈夫である

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運動不足だと、30代から筋肉は年1%の割合で減る。「老化は足腰から」といわれるように、衰えやすいのは下半身の筋肉。足腰が弱体化すると歩くスピードは遅くなる。

筋肉が減ると、血液を巡らせるポンプ作用が落ちるし、血管のコンディションを左右する血圧や血糖値の状況も悪化し、血管の老化が進む。歩く速度が速い人はおそらく筋力低下が防げており、血流も血圧も血糖値も正常に保たれやすい。たぶん血管も丈夫だ。

⑩ 血管を考えるなら、フレンチよりイタリアン

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フレンチはバターをよく使い、イタリアンはオリーブオイルをたっぷり使う。バターなど動物性脂肪の摂りすぎは、血中の脂質のバランスを崩し、血管に悪影響を与える脂質異常症の誘因。

「対照的にエキストラ・バージン・オリーブオイルに含まれるオレオカンタールやビタミンEには抗酸化作用があり、血流を促して血管を守ります」。フレンチには適量の赤ワインを。赤ワインにはレスベラトロールなど抗酸化成分が多いのだ。

⑪ 貧血とは、血液が少ないことを言う

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疲れやすさや息切れといった自覚症状があるなら、貧血の疑いが。

貧血は血中の赤血球で酸素を運ぶヘモグロビンの濃度が低下した状態。血液の量は一定。なので、酸素不足によるものだ。

貧血の多くは、ヘモグロビンの成分で、酸素と結びつく性質を持つ鉄の欠乏による。回復には、鉄を含むレバーなどの食品や鉄剤が有効。月経などの出血でヘモグロビンが減ったり、ランの着地衝撃でヘモグロビンが壊れたりして貧血を招くことも。

⑫ タンパク質は血液にも血管にも必要である

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タンパク質は、血液にも血管にも必要不可欠。赤血球内で酸素を運ぶヘモグロビンは、タンパク質と鉄が結びついたもの。また、血漿中には100種以上のタンパク質が含まれる。その約60%を占めるアルブミンは水分を保持して血液の浸透圧を保ったり、ホルモンと結合して運んだりする。

動脈や静脈を作るのは平滑筋という筋肉。やはりタンパク質から作られる。肉や魚や大豆食品などから、毎食必ずタンパク質を摂ろう。

⑬ リンパ液と血液は別物である

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全37兆個の細胞に血液を届けるのは、毛細血管。毛細血管の薄い壁や隙間から、田んぼの稲を水が満たすように血液の液体成分である血漿の一部がしみ出し、細胞に酸素と栄養素を届け、細胞から二酸化炭素と老廃物を受け取る。その後、血漿は毛細血管に戻り、静脈へ流れ込む。

だが、毛細血管からしみ出た血漿の一部は、隣接するリンパ管へ流入する。このリンパ管に入った血漿がリンパ液。リンパ管も最終的には静脈に合流する。

⑭ 運動は長く続けないと血管は若返らない

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太ると溜まる内臓脂肪からは、血流を阻害し、動脈硬化のリスクを高める悪玉物質が出る。そう聞くと怖くなるが、内臓脂肪は運動で減りやすいという性質がある。しかも、短期間である程度の結果が期待できる。

「高血圧患者が1週間に30~60分の有酸素運動やストレッチを続けたところ、8週間で血圧が下がったという研究もあります」。血圧以外にも運動は善玉コレステロールを増やし、高い血糖値を下げる。やらない手はない。

⑮ 血流は速ければ速いほどいい

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血流は滞りなくサラサラ流れてほしいものだが、血流は速ければ速いほどいいわけでもない。血管は次々と枝分かれしながら、カラダ中にくまなくネットワークを張り巡らす。

血液の流れがあまりに速すぎると、スピードを出しすぎたクルマが分岐点を思わず通り過ぎてしまうように、血液が末梢までちゃんと届きにくくなる恐れもある。「そもそも血流が速すぎる場合、その背景に血管が硬くなる動脈硬化が隠れているケースもあります」。

⑯ 血流には、野菜よりも果物の方がいい

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野菜も果物もビタミン、ミネラル、食物繊維に富む。ビタミンは抗酸化作用で血管を守り、カリウムやマグネシウムは塩分排出を促して血圧を下げる。食物繊維には、血流を邪魔するコレステロールを減らす作用も。

野菜と果物の二者択一なら、正解は野菜。葉野菜などの硝酸塩は血管内皮細胞の働きを高めて血圧を下げるし、食物繊維も総じて野菜の方が多い。また甘い果物は糖質が多く、血糖値が高くなり、血管にも血流にも×。