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コロナ太りが起こす血管リスク。解決策は「歩く」こと

血管 血流 対処法

コロナ禍がきっかけで、ここ数年、すっかり自粛モードやリモートワークが定着した。結果、起きたことが活動量の低下だ。活動量が落ちれば、当然肥満をはじめとした生活習慣病の悪化、筋肉量の低下、血流低下などさまざまな健康二次被害が引き起こされる。これらはジワジワとあなたの血管と血流に悪影響を与えているのです…。

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健康二次被害が問題視されている

思い起こせば新型コロナ感染の第1波が始まったのが、今から2年前。変異を繰り返すウイルスの波状攻撃でこれまで4回の緊急事態宣言が発出され、不要不急の外出自粛モードがすっかり定着。で、何が起こったか? 

人々の日常の活動量が低下し、免疫力の低下や生活習慣病の悪化、血行不良といった「健康二次被害」が今まさに問題視されている。

「コロナ禍の1〜2年目の段階まではテレワークで運動量が減った人がいる一方、通勤時間を運動に充てる人も一定数いて、二極化しています。平均するとあまり変化がないように見えますが、運動する人としない人の2つのピークがあることが今の特徴だと思います」

と言うのは、有識者や民間有志からなる「健康二次被害防止コンソーシアム」の代表発起人、筑波大学の久野譜也教授

放っておいてもカラダを動かす人は問題ない。でもそれ以外の運動不足気味のすべての人々に知っておいてほしい。あなたのカラダに張り巡らされた血管と血流がリスクに曝されているということを。下のチェック項目に思い当たる節がある人、血管と血流の健康二次被害にくれぐれもご用心。

心当たりはありませんか?
  • 通勤する日が週の半分以下だ。
  • リモートワークで1日6時間以上座っている。
  • 散歩や買い物などで外出する機会が減った。
  • コロナ禍前の運動習慣がなくなった。
  • 歩くスピードが以前より遅くなった気がする。
  • 最近、太った。
  • 怪我が治りにくくなった。

チェック項目は、スポーツ庁の健康二次被害ガイドラインなどを参考に編集部で作成したもの。

コロナ太りが、血管や血流を知らないうちに傷つけている

運動不足+過剰な食事=コロナ太り。この演算に則って体重が2〜3kg増えてしまったという人は少なくない。

「食事に関しては糖質や脂質の摂取量が増えたり、またテレワークの人たちは酒量が増えたという報告もあります。家で飲んであとは寝るだけということで安心して飲み過ぎ、さらにその頻度も増えるとなると肥満のリスクは高まります」

肥満は血管が傷ついて血流が低下する動脈硬化の最大のリスクファクターのひとつ。とくに男性に多い内臓脂肪型肥満の場合、脂肪細胞から炎症性の物質がじわじわ放出され、血管壁にダメージを与える。やがて血管壁にはコレステロールを取り込んだプラークというこぶができて血管を詰まらせ、血流を阻害する。

最悪の場合は心筋梗塞脳卒中に陥ることもあるのだ。

肥満者における動脈硬化度
血管 血流 対処法 肥満者における動脈硬化度を示すグラフ

40代の11人の肥満者と14人の非肥満者の動脈硬化度を比較。縦軸は動脈壁の伸展性を示したもので数値が低いほど動脈硬化度が高い。Miyaki, Maeda, et al., J Atheroscler Thromb 2010 改変

下半身の筋肉量が減り、動脈硬化が引き起こされる?

テレワークの日常で失われていくかつての適度に引き締まったボディライン。原因はお腹まわりに溜まった脂肪だけでなく、筋肉の量が減ってしまったことにある。

「40代以降は下半身の筋肉の量が年に1%ずつ減っていきます。これは加齢による減少量と日常生活活動の割合から割り出した数値です。不活動になると、この数値を上回ってさらに筋肉が減っていく可能性が出てきます。肥満に加えて筋肉量が減ることで、血液中に使われない糖や脂肪がだぶついて血流が悪くなることは十分考えられます

で、行き着く先はやはり動脈硬化

「新品の柔らかいホースは氷点下の環境で手で折り曲げても切れません。5年使った硬いホースは同じ環境で手で切れる可能性があります。これが動脈硬化のイメージです」

さてあなたのホースの柔軟性は?

不活動による血流低下が、肥満や高血圧のリスクを高める

駅の階段を上り下りする。電車内で踏ん張って揺れに耐える。オフィスの端までコピーを取りに行く。ランチタイムに牛丼屋まで歩く。

コロナ前には当たり前だったこうしたルーティン動作では、1歩踏み出すたびにふくらはぎの筋肉が動員されて血流が促されていた。ところが、テレワークの日常ではほぼすべての動作が割愛されてしまう。

「動脈硬化は加齢によって進みますが、それをさらに加速させるのが不活動。血流のスピードが減ることが動脈硬化に影響することが分かっています。不活動によって肥満、高血圧、動脈硬化が進めば、その先にある心筋梗塞脳卒中というリスクも当然高まってきます」

加齢によって血管が硬くなるのはある意味自然の摂理。でも、不活動で血管をより硬くしてしまうのは、不自然な健康二次被害だ。

活動・非活動における動脈硬化度
血管 血流 対処法 活動・非活動における動脈硬化度を示すグラフ

被験者は191人の60代の男女。上腕と足首の脈波から算出した数値は非活動グループの方が高く動脈硬化度が高い。Iemitsu, Maeda, et al., Hypertension 2006 改変

長時間の座位生活でエコノミークラス症候群の危険性も

食事や水分を十分に摂らず、長時間座って過ごすことで、血行不良が起こり血液が固まって血栓ができる。ふいに立ち上がって歩いた拍子に血栓が血管の中を猛スピードで流れていき、肺の動脈に詰まってしまう。

これが世に言う「エコノミークラス症候群」。これと同じことが長時間のテレワークで起こる可能性はゼロではない。

「全身に血液を巡らせるためにはふくらはぎの下腿三頭筋の収縮によるポンプ作用で静脈の血流を促す必要があります。テレワークで即血栓ができることはありませんが、筋ポンプは歩くことで働くので、座りっぱなしが、ひとつのリスクとなる可能性はあります」

テレワークで1日に6時間も7時間もデスクにかじりついているという人、ふくらはぎの血流が渋滞を起こしているかも。

手始めに、まずは歩く量を増やすこと

令和元年の厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、日本人の1日平均歩数は男性30代で8135歩、40代で7734歩

でも、テレワークの日はとてもこの数値に満たないという人は多いはず。夕方にふとスマホの歩数カウンターを見て、愕然としたことはないだろうか。

「スマホや歩数計で自分の歩数を管理することは非常に大事だと思います。1日8000歩をひとつの目安として自分で決めて動く習慣をつけることをおすすめします。ただし、1日単位で必ず8000歩クリアするというより、1週間の平均として8000歩クリアすればいいと考えてください」

たとえ今日は4000歩でも、週末の天気がいい日に1万歩ずつ歩けばそれでOK。まずは歩き、そしてむろん暴飲暴食を慎んだうえで動脈硬化のリスクを回避しよう。

トレーニング前後における動脈硬化度
血管 血流 対処法 トレーニング前後における動脈硬化度

30〜60代の21人の肥満男性が週3回、40〜60分のウォーキングを3か月実施。トレーニング後は動脈硬化度が明らかに下がった。Miyaki, Maeda, et al. Am J Cardiol. 2009 改変

筋肉量の低下は下半身のゆる筋トレで防ぐ

ならば、有酸素運動だけしていれば血管や血流の健康は保てるか? そう話は簡単ではない。

前述した通り、下半身の筋肉は年に1%ずつ減っていく。全身の筋肉の重量を25kgとする。そのうちの約6割が下半身の筋肉量だとすると15㎏。つまり1年につき150gずつ減っていくということ。コロナ禍の不活動生活ではこれよりも減る量は多いと考えられる。よって筋トレは必要不可欠

「有酸素運動だけ行う、筋トレだけ行うというのでは50点。基本的にはどちらかではなく両方行うというのが正しい理解です。筋トレの場合、とくにポンプ作用を担う下腿三頭筋にストレッチ要素を取り入れた筋トレで刺激を入れるのが有効だと思います」

血管と血流の健康はバランスのいい運動で初めて維持できるのだ。

有酸素運動で毛細血管を新生させろ

血液をカラダの隅々にぐるぐる巡らせるためには、動脈や静脈だけではなく毛細血管の働きも重要。実際に末梢組織に酸素や栄養を供給し、老廃物を回収するのは毛細血管の役割だからだ。

「毛細血管は運動によって2週間程度で新たに作られます。筋肉を収縮させて酸素供給量が増えると既存の毛細血管だけでは賄えないからです。週3回のペースで20分程度の速歩きやジョギングを習慣化すると、2週間くらいで楽になり疲れにくくなります。これは毛細血管が新生して酸素の供給効率がよくなるからです」

ただし、せっかく増えた毛細血管も、運動をやめれば消えてしまって元の木阿弥。

まずは2週間やると決めて6回の有酸素運動(ただし速歩き以上)を行おう。効果を実感したら、必ず習慣にしたくなるはず。

トレーニングと⼼臓の⽑細⾎管
血管 血流 対処法 トレーニングと⼼臓の⽑細⾎管

白い部分が心筋細胞、赤い部分が毛細血管。加齢によって心臓の毛細血管は萎縮するが、8週間の水泳トレーニングで高齢ラットの毛細血管が回復。Iemitsu, Maeda, et al., Am J Physiol Heart Circ Physiol 2006 改変

血液検査の結果は、毎年比較検討すること

今まで血液検査ではオールAという人も油断は禁物。今日の不活動が即、血管や血流にダメージを与えるわけではなく、健康二次被害はじわじわ忍び寄ってくるからだ。

「高齢者に関して言うと、筋力や認知機能の低下といった健康二次被害が大きいのは、これまでアクティブだった人。本来なら介護とは無縁だった人たちです。このため私は、今年の終わりから来年くらいに要介護の高齢者が増えてくるのではないかと危惧しています」

高齢者に限らず、今の不活動生活の結果が健康二次被害として姿を現すまでにはタイムラグがある。だからこそ毎年行う血液検査は長期的に観測する必要があるという。

「急に生活習慣病が増えるわけではありませんが、今から3年後5年後のオーダーで数値の比較検討をしていただきたいと思います」

取材・文/石飛カノ イラストレーション/Hi There 取材協力・監修/久野譜也(筑波大学大学院教授) 資料提供/前田清司(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)

初出『Tarzan』No.834・2022年5月26日発売

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