【漢方の視点で解説】やる気の低下は梅雨のせい?(漢方薬剤師・鹿島絵里さん)
「漢方薬店kampo's(カンポーズ)」薬剤師・薬学博士の鹿島絵里さんが漢方医学視点からのカラダづくりを提案する連載「漢方でつくるヘルシーボディ」。今回は「梅雨時期のやる気」について。
眠い、やる気がでない!それって梅雨のせい?
漢方医学的視点からカラダづくりを応援する、漢方薬店kampo’s(カンポーズ)薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。
じとじと雨が続くと、洗濯物は乾かないやら移動に時間はかかるやら、いつもやっている何でもないことがスムーズにいかず気分も塞ぎがちになります。でもその感覚、漢方医学的には対処できます! しかもお薬を使わずに養生だけで乗り切る方法があるんです。
いやいや、雨の影響ですからこればかりは…と思った方、少し漢方の理論にお付き合いくださいませ。
湿度は消化器系のパワーをダウンさせる
梅雨と言えば湿度がぐんと上がる季節ですが、自然の摂理を人体に反映した五行説によると、この湿度は消化器系をパワーダウンさせる性質があります。
消化器系のことを漢方医学の五行説では「脾(ひ)」と呼び、飲食物からエネルギーを作り出すこと、さらにそれを全身に送り出すことが脾の主な機能として知られています。
現代医学でいう脾臓(免疫・造血などに関係している)とは違うものです。
食べたものが美味しいと感じられ、スムーズに消化されてエネルギーになり、そのエネルギーを使って気持ちよくカラダが動く、そんな巡りの良い状態が理想的ですよね。
しかし湿度が高い気候は脾に影響することでこれらをことごとく邪魔してくるのです。漢方用語の「湿邪(しつじゃ)」という呼び名には、いかにも悪者感が出ています(笑)。
消化が滞ると疲れやすくなる
湿邪が力を増す梅雨の季節は飲食物の消化もエネルギーの消費も思うようにすすみません。お腹がすきにくく、食べた割にはエネルギーは上手く使われず、その結果疲れやすくなってしまうのです。
朝気持ちよく起きられない、一日中なんだか眠い、やることはあるけど気持ちが向かない、こんな心当たりがあったら、カラダはすでに湿邪に侵されているかもしれません!
お腹が空いてからご飯を食べる
ではどうするかということですが、さすがに梅雨の季節を終わらせるとか、日本中の湿度を下げるとか、そんな自然の神様に抗うことはできません。できるのは自分のカラダをコントロールすること。漢方のコツを活用しながら湿邪の乱暴なふるまいを阻止しましょう!
今すぐに脾を丈夫にすることは難しいので、自分の生活の方を脾のペースに合わせます。機能ダウン気味ですぐにキャパオーバーになってしまう梅雨時期の脾ですから、そのキャパシティを守ってあげることが大事です。
「お腹がすかない」はキャパオーバーのサイン。逆にぐうぐうとお腹が鳴って空腹を感じていれば消化器が活発に動いている証拠。この確かな空腹を待ってから食事をするように心がけます。
いつもと同じ決まった時間に食事をするには、一回一回の食事の量をぐっと減らさなければならないことに気付くでしょう。そうしないとお腹がすいてくれないからです。漫然といつもと同じ習慣で食事をしていては、湿邪の思うツボです。
季節に合わせた食べ方があることを覚えておいてください。
腹八分目におさえる
そしてお腹がすっきりして空腹を感じたからと言って、お腹いっぱい食べるのもやはりNGです。すぐにキャパオーバーになりますから、そうならない適度な量を守って食事をしてください。そうすると不調はどこへやら、巡りの良くなったカラダで気持ちよく動けるはずです。
さらに脾は温かくしておくとその機能を保ちやすいです。冷たい飲食を避けることも今時期の不調回避には有効です。もちろん、消化に時間のかかる脂っこいもの、刺激の強い辛いものも、摂りすぎないように注意しましょう。
脾のキャパシティを守って、不調知らずで梅雨をお過ごしください。脾の養生は夏を乗り切る助けにもなりますよ!