スポーツ時の「捻挫」の対処法
トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第25回は、スポーツ時に発生率の高い足関節の捻挫について。
取材・文/黒澤祐美 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表) 参考/NSCAパーソナル
初出『Tarzan』No.832・2022年4月21日発売
捻挫は重症度で3つに分けられる
スポーツ障害のコンディショニング。今回のテーマはスポーツ障害全体の10〜28%を占め、発生頻度の高い「足関節の捻挫」について。捻挫とは、“関節が生理的な範囲を超えて運動を強いられた場合、関節を支持している靱帯の一部や関節包が損傷した状態のこと”。
加えて関節の適合性が保たれていることも条件の一つであり、損傷程度によって重症度が3つに分けられる。
1度捻挫:「軽くひねった」状態。靱帯に小さな損傷や軽度の痛みもあるが、少し休息をとれば歩行や軽いジョグもできる。当日から3日以内で競技復帰可能。
2度捻挫:靱帯の一部が切れた状態で、圧痛と腫れが強い。歩行に痛みを感じ走ることもできないため、競技復帰まで2〜3週間を要す。
3度捻挫:靱帯が完全に切れた状態。圧痛や腫れに加え、患部の熱感、皮下出血による変色が見られる。荷重が困難。病院の治療を受けて競技復帰まで1〜2か月かかる。
足関節で一番多いのは「内販捻挫」
足関節の捻挫は、サッカーやバスケットボール、バレーボールなど、突然の停止や切り返し、ジャンプを繰り返すスポーツで多く発生する。足関節捻挫でもっとも多く報告されているのは、下のイラストのように足裏を内側に向けて捻る内反捻挫。
足首の外側には、脛の外側の骨(腓骨)と、脛骨と踵骨の間にある骨(距骨)をつなぐ前距腓靱帯と後距腓靱帯、そして脛骨と踵骨をつなぐ踵腓靱帯の3つの靱帯があり、これらによって安定性が保たれている。
なかでも外側の足関節捻挫の多くに関与しているのが前距腓靱帯。それはこの靱帯が相対的に弱く、内反動作と爪先を前に倒す屈曲動作時にかかる力に耐え切れないためだ。
後距腓靱帯と踵腓靱帯も受傷することはあるが、軽度や中等度の捻挫で見られることは少なく、これらが損傷するときは骨折や脱臼を伴う重症な状態である可能性が高い。
足関節捻挫の治療と予防
軽度の捻挫は比較的治りが早い傷害であるため、自己治療を選択する人も多い。しかし損傷箇所が十分に治癒しないまま競技に復帰すると、足関節の不安定が慢性化する恐れがある。
慢性化すると身体活動の低下を招くほか、骨や軟骨に対しての二次障害や、変形性足関節症のリスク向上、捻挫の再発などを高めるため受傷後は適切な治療管理が必要だ。
捻挫をしたら、まず度合いをチェック。2度以上は医療機関を受診し、必要に応じ装具やテーピングなどで固定する。
トレーナーおよび個人で再発防止に努めるのは、受傷前あるいは1度の捻挫が完治してから。靱帯の修復には関節の保護が必要になるため、リハビリに移る初期段階では高強度のエクササイズは推奨されない。
ただし歩行はOK。歩行やバイクで心肺系持久力を維持しつつ、患部の可動域の向上、足首・足部の筋力の回復にも力を注ぐこと。加えて下のような固有受容器(センサー)を活性化する運動で捻挫の危険性を低減できるとされている。
バランスディスク(またはクッション)に片足を乗せ、逆足を後ろへ。バランスをとりながらカラダを垂直に落とす。逆も。
バランスディスクの上で片脚立ちをして、ぐらつかないようキープ。足首の動きを感じながらバランスをとる。逆も。
復習テスト
答え:3度