発酵食品が刺激になる人もいる。腸活とFODMAP(漢方薬剤師・鹿島絵里さん)
「漢方薬店kampo's(カンポーズ)」薬剤師・薬学博士の鹿島絵里さんが漢方医学視点からのカラダづくりを提案する連載「漢方でつくるヘルシーボディ」。今回は「FODMAP」をご紹介。
漢方医学的視点からカラダづくりを応援する、漢方薬店kampo’s(カンポーズ)薬剤師・薬学博士の鹿島絵里です。
発酵食品の摂りすぎにも注意?
発酵食品に食物繊維、オリゴ糖など、腸活のために積極的に摂っている人も多いと思います。しかし良かれと思って食べているこうした食品によって、却って体調を崩す方もいらっしゃいます。
過敏性腸症候群(IBS)や小腸内細菌異常増殖症(SIBO)と呼ばれる疾患で、普段からお腹の張り、ガス、下痢、腹部の膨張、消化不良などの症状を訴えます。どちらも腸内細菌のバランスがくずれていることが大きな原因で、こうした方には発酵食品などがときに刺激物となって、却って症状を悪化させてしまうのです。
プロバイオティクスはカラダにいいもの?
健康の増進を目的として生きた善玉菌を食品として取り入れること、またその食品そのものを「プロバイオティクス」と言い、腸活において一目置かれる存在です。
ですが生きた菌を積極的に摂取することは、上記の疾患の場合はリスクになる可能性が高いです。データに基づいた知見となると「プロバイオティクスとして何を用いたか、治療期間はどれほどか、評価対象集団などのような人たちか、診断方法や基準はどうか」などの詳細が一貫性に欠けてしまい、いいか悪いかということは結論付けられていませんが、臨床では注意が払われているのが実際のところです。
症状を悪化させるのも腸内細菌、回復に必要なのも腸内細菌、なのですね。つまり「腸内細菌のバランスの崩れ方によって、有用な菌もあればよくない菌もある、その詳細はまだ解明されていないから、充分に注意して!」ということです。
FODMAPとは?
プロバイオティクスはグレーゾーン、では食物繊維やオリゴ糖などのプレバイオティクスはどうでしょう。やはり控えるべきなのでしょうか。IBS(過敏性腸症候群)ではFODMAP(フォドマップ:fermentable oligosaccharides, disaccharides, monosaccharides, and polyol=発酵性の、オリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオール)の少ない食事は治療に有効であることが示されています。
これは、腸内細菌が炭水化物やその発酵産物にさらされる機会を減らし、その結果、細菌の増殖を抑制したり、ガス産生を変化させたりするためと考えられています。
しかしながら、低FODMAPの食事がSIBO(小腸内細菌異常増殖症)患者に有効かは結論が出ていません。巷では「オリゴ糖は摂るな」という意見もあれば「環状オリゴ糖はSIBOにいい」という意見があったり、混乱気味です。少なくとも「カラダにいいと言われているんだから!」と妄信的にこれらを摂取するのは避けるべきしょう。
妄信的にならずにカラダを観察しよう
多くの現代人は食物繊維の不足が原因で体調不良を訴えますから、発酵食品を摂るなどの腸活が健康や美容のメリットとなります。でも万人に当てはまるわけではないことは知っておく必要がありますね。
腸内細菌と人の健康との強い結びつきが明らかになって、まだわずかな時間が経過したばかりです。当然、いくつかの腸疾患は命名から歴史が浅く、治療法はおろか診断方法さえ議論の最中です。
もしIBS、SIBOと診断されても、その原因、症状の重さ、罹患の期間など人によってまちまちですから、今わかっていることだけから無理に答えを見つけようとせず、自分のカラダをよく観察しながら一番いい方法を探し出してほしいと思います。