足病医が指南! いつまでも歩ける「いい足」チェックリスト
「ポダイアトリスト」とは「足病医」のこと。日本では数少ないが、いい足のためには不可欠な存在だ。そもそも毎日酷使している足の構造や動きは実に巧緻。足病医の指導で理想の足をきちんと知り、ちゃんとケアして、歪ませない。いつまでも歩ける足を目指そう。
取材・文/石飛カノ 撮影/小川朋央 スタイリスト/ヤマウチショウゴ ヘア&メイク/天野誠吾 イラストレーション/野村憲司、今牧良治(共にトキア企画)
初出『Tarzan』No.828・2022年2月24日発売
川股弘治先生
教えてくれた人
かわまた・こうじ/〈東京ポダイアトリー〉院長。オーストラリアおよびニュージーランドの国家足病科医師免許取得。海外のクリニック勤務を経て現職に。メディカルエビデンスに沿った診断とトリートメントを行う足病学の第一人者。
聞き慣れない「ポダイアトリスト」という言葉。これは何ぞや?
答えはこうだ。ウオノメから歪み矯正まで足全般の不調を取り扱う医療分野を「ポダイアトリー」といい、日本語では「足科」または「足病科」。その専門医がポダイアトリストだ。
「アメリカにはポダイアトリストが約2万人います。歯科医とほぼ同じくらいの需要があるのです」と言うのは海外の国家足病科医師免許を持つ川股弘治先生。
足に不調があっても「靴が合わないから」で済ませがちなニッポン人。でも根本から見直さないと、この先楽しく歩き続けやしないのだ。今回は本物のポダイアトリストに教えを乞う。
足の骨は二足歩行に特化したデザイン
踵から爪先まで、足の骨の数は片足につき28個といわれている。左右合わせると56個。全身はおよそ206個の骨で構成されているので、小さな容積の中にその4分の1を占めるのが足というわけだ。
「足の骨の数は手の骨の数と同等です。これだけ足に多くの骨と関節があるのは生物の中でもヒトくらいだと思います。二足歩行で長く歩くにはそれだけの関節が必要と考えられるのです」(川股先生)
全身の体重を受け止めつつ一日数千歩歩き続けるための複雑精緻な足の構造。それだけに、きちんと歩かねば不具合が生じる可能性が。
歩くためには5指の中で親指が最も重要
「足の5本の指の中で、第1趾の第1中足骨が太く丈夫にできています。歩行の際、蹴るという動作はこの部分で行われるからです」(川股先生)
第1趾とは親指、中足骨とは足の甲にある長い骨のこと。上のイラストをご覧の通り、確かに親指の骨は他の指に比べて際立って太くしっかりした構造。
ちなみに、チンパンジーの足の親指は他の4指から離れて斜めに傾いている。手を開くと親指だけ正面を向かないのと同じつくり。樹上で暮らす類人猿にとっては2本足で長く歩く必要はないし、足で器用にものを摑むにはこの方が有利ということ。
太くまっすぐ前を向いた親指。これもヒトならではの足のデザイン。
全身と足の繫ぎ役は距骨という骨
股関節から足首までの2本の脚は英語では「レッグ」。足首から爪先までの足は「フット」。このレッグとフットのジョイント部分の骨を距骨という。
「脛にある2本の骨を脛骨と腓骨といいます。これらの骨と足の骨の繫ぎ目が距骨で、この関節が足関節です。カラダ全体と足を繫ぐ唯一の関節で、全体重をここだけで支えているため、負担がかかりやすい部位といえます」(川股先生)
距骨は足首の奥にある小さな骨。ここに全体重の負荷がかかってくるというから驚きだ。さらに特徴的なのが全身の中で唯一、筋肉が付着していない骨だということ。足首の奥に潜むこのフリーの骨が、実は「いい足」のキーワードとなる。
ヒトの足は7歳で完成する
ヒトは生まれながらに正しく歩くための足を持っているわけではない。成長する過程で軟骨からしっかりした骨が形成され、足裏の筋膜が張り、長く効率よく歩ける足へと変化していく。
なのでこうした成長に合わせた靴選びが重要、と川股先生。
「骨がしっかりしていない3歳までは柔らかい靴を選んだ方がいいでしょう。5歳くらいから運動量が多くなりアーチが形成され、7歳くらいでほぼ足が完成されます。5歳以降は足首をホールドする靴を履くと、足の歪みも生じにくくなると考えられます」(川股先生)
パパママは覚えておくべし。
あなたの足、歪んでいませんか?
ポダイアトリストは足の状態を総合的に判断し歪みなどを矯正していく。靴の減り方やタコ、ウオノメのできる部位などもその判断材料になるという。
靴の減り方なら下図(左足)の黄色い部分以外の減り具合が激しい場合、足が歪み、正しい歩行ができていない証拠。足裏にタコやウオノメができている場合も要注意だ。
正しい靴の減り方かチェック!
- 踵部分は外側(❶)がより減っている:→正しい歩行ができている
- 爪先部分は親指側(❷)が減っている:→正しい歩行ができている
タコやウオノメの場所でチェック!
- 指の外側部分にタコやウオノメがある:→靴が合っていない
- 足の裏側にタコやウオノメがある:→足の歪みがある