〈よしもと若手マッチョ部〉が挑戦! 選ばれし陸自隊員が行う基礎トレ4種目
団体行動のため、狭いスペースで合理的に鍛えられる、自衛隊のトレーニング。一見シンプルだが、忠実に行うとこの上なくキツい。今回、そんな4種目のトレーニングを〈よしもと若手マッチョ部〉のにしだっくすさん、ノリさんに挑戦してもらった。
取材・文/石井良 撮影/山城健朗 協力/陸上自衛隊
初出『Tarzan』No.827・2022年2月10日発売
レンジャー課程の中間ノルマに挑戦!
“レンジャー”を知っているか。陸上自衛隊の中で最も過酷とされる訓練を受けた精鋭で、有事には最前線で偵察や攻撃などの特殊任務を担う。加藤大地さんは、そんなレンジャーを育てる教官だ。
加藤大地教官
教えてくれた人
階級は1等陸尉。陸上自衛隊富士学校の教官を務め、特に過酷な訓練で有名な「幹部レンジャー課程」を担当。プライベートでは最新の栄養学なども取り入れながらウェイトトレーニングに励む筋トレ好きでもある。
「任務は常に危険と隣り合わせ。迅速・確実・安全に完遂するため、隊員たちは常に心身を徹底的に鍛え、己の限界と闘っています」と加藤教官。
なかには50kgもの装備を背負い、4日間ほぼ不眠不休で山中を行軍する訓練も。その驚異的な体力の礎となるのが、レンジャー流の基礎トレだ。レンジャーを目指す隊員は、団体生活を送りながら、狭い廊下や大部屋で、日夜この基礎トレに励む。
今回〈よしもと若手マッチョ部〉の2人がレンジャー課程基礎トレの中間ノルマに挑戦! 芸能活動の傍らパーソナルトレーニングで指導もする二人は体力にも根性にも自信あり。さあ、無事にクリアできるのか!?
にしだっくすさん&ノリさん
よしもと若手マッチョ部
筋肉とお笑いを融合したライブを行う〈よしもと若手マッチョ部〉。左=にしだっくすさん/ピン芸人の傍らパーソナルトレーナーやフィジークの選手としても活動するマッチョ部の顔。右=ノリさん/高校から大学ではアメリカンフットボール部に所属し、全国ベスト8の成績を収めた。JBBFの大会出場経験あり。
課題①:腕立て伏せ(ノルマ35回)
手は4指を揃え、肩幅程度に開いて床と垂直に伸ばす。それにより肩が前に出るのを防ぎ、故障しにくい。頭を上げて正面を見るのは、訓練中、教官が隊員の体調変化に気がつけるようにという安全面の配慮の意味もある。大胸筋と上腕三頭筋、腹直筋がメインターゲットだ。
教官の笛の音に合わせ、2秒かけて下がり、2秒かけて上がるのが1カウント。「ゆっくり動くため、体幹も鍛えられます」(加藤教官)。
肝は、いかに姿勢を下げられるか。胸が床に触れるほど下げることで負荷が高まる。まずは膝をついてもいいので、10回を目安にトライしてみよう。
「そこまでやる!?っていうほど、手や腰の角度に細かい。自体重でもこんなに追い込めるんだ」(にしだっくす)
「心理的な負荷もあって、抜きどころがない! 笛の音が怖いです(笑)」(ノリ)
課題②:起き上がり(ノルマ35回)
膝は閉じ、90度に曲げる。両手は指を組まずに後頭部に重ねて、寝そべることなく、肩甲骨の下部〜頭はしっかりと浮かせるのがポイントだ。意識するのは腹直筋と腹斜筋で、腸腰筋を使わないように注意。実施する際に補助者がいなければ、脚はベッド下などで固定しよう。
いわゆるツイストクランチに似た種目で、上体を捻りながら起こし、膝に肘を引き付ける。
「肩甲骨の下端が床に触れるくらいが基本の姿勢。1回ずつ静止することで、常に腹筋に力が入った状態を作り出します」と言いながら不敵に微笑む加藤教官。瞬発力と柔軟性が求められるぞ。
「教官はすごく厳しいけど、檄を飛ばされると、もっとできる気がするから不思議!」(ノリ)
「マシントレーニングとはカラダの使い方が全く違うので勉強になります」(にしだっくす)
課題③:胴回し(ノルマ8回)
仰向けに寝て、脚を垂直に上げる(膝を曲げないこと!)。腕はカラダの軸に対して直角に開き、手のひらは床につける。脚を左右に倒す際には開いた腕と平行に。脚は床につかないギリギリまで下げると腹斜筋に効く。
重要なのはハムストリングス(太もも裏の筋肉)。柔軟性がないと膝は曲がり、姿勢が崩れる。加藤教官のアドバイスは、実施する前後に一般的な前屈のストレッチを行うこと。
「正しいフォームとケガ防止に繋がる」という。ちなみに、レンジャーは片足約2kgのブーツを履いたまま行うため、負荷はより強い。
「姿勢をキープすることすら難しいなんて。悔しいけど膝が曲がっちゃう」(ノリ)
「全身運動だからか、普段あまり意識しない部位にガッツリ効きました」(にしだっくす)
課題④:かがみ跳躍(ノルマ45回)
右足を半歩前に出してかがみ、臀部を左踵につける。胸を張った姿勢のまま、笛の音に合わせて垂直に跳び上がり、空中で左右の脚を前後に入れ替える。跳ぶ高さは踵を基準に15cmだ。着地時にはカラダが前後にブレたりしないよう、胸を張った姿勢を保つ意識を大切に。
今回のメイン種目。「主体は大腿四頭筋ですが、心肺機能も鍛えられる全身トレとしても効果的」と加藤教官。
全身の持久力の向上を狙い、レンジャーでは重い装備を着けた状態で行うという。ただし、やりすぎは酸欠になるので注意。ケガを避けるため、とにかく正しい姿勢を意識すべし。
「ひと通りやってみて、自分に足りない部分が浮き彫りになりました。貴重な経験ありがとうございます!」(ノリ)
「これが基礎トレのほんの一部だなんて…。レンジャーってすごい。尊敬です!」(にしだっくす)