ポイントは10箇所。「骨盤の歪み」を防ぐリモートワーク環境

リモートと通勤、二刀流が当たり前の時代。自宅には、骨盤不調の要因を徹底排除した作業部屋を用意しよう。すぐ実践できる10のポイントをもとにQOLの向上を狙おう!

取材・文/門上奈央 イラストレーション/Kenro Shinchi 監修/伊藤和磨(Maro’s代表)、八納啓創(G proportionアーキテクツ代表)

初出『Tarzan』No.826・2022年1月27日発売

一見フツー? なこの空間に、ちりばめられた骨盤対策とは

ホームオフィスの環境

上に描かれた空間と男性は究極の“骨盤想い”。何それ? 一体何が? 答え合わせのその前に、まずは自宅で行うリモートワークが骨盤の乱れを助長する原因を知っておこう。

「職場では移動したり誰かに呼ばれて話をしたりと、1時間に1回は自然と席から立ち上がる状況になると思います。一方、自宅だと2〜3時間座りっぱなしということもザラ。姿勢は次第に乱れ、骨盤にも悪影響です」(一級建築士の八納啓創さん)

座っている状態が良くも悪くも、骨盤に直接的な影響を与えている。

「重要なのは座り方。座面に骨盤をまっすぐ立て、浅く座ること。座面に深く座ることがラクと捉えがちですが、骨盤の傾きや疲労感につながるので避けるべき。いい姿勢を保つストレスを減らすよう、デスク回りも工夫しましょう」(コンディショニングトレーナーの伊藤和磨さん)

だが実際、仕事中に骨盤を気遣うのは大変。作業空間を改善しつつ骨盤のため最低限心得るべきことは?

「骨盤と頭蓋骨は連動しており、骨盤への意識が抜けても顎を引いて頭蓋骨の位置を正せば骨盤まわりも整います。顎を軽く引くと背すじが伸びて仙骨が立ち、骨盤もいい位置に。骨盤の真上に頭蓋骨がある状態を心がけ、同時に頭蓋骨を正しい位置に誘導&維持するような空間にすれば、骨盤にも理想的です」(伊藤さん)

数字で示した部分には、骨盤を整える鍵がある。一体何が“骨盤想い”なのか、答え合わせをどうぞ!

ホームオフィスの環境

ポイント① 本棚は手の届かない位置に置こう

「30分に1回は立ち上がるのが“骨盤想い”のルール」(伊藤さん)。デスクに置く書類は最小限にしてそのほかは本棚に。「デスクから2m近く離れたところに本棚を置き、資料は都度取りに行くよう仕向けましょう」(八納さん)。

ポイント② 全身鏡で姿勢をチェックしよう

骨盤の状態を心がけたところで、良い姿勢が取れているかは別。「デスクの真横に全身鏡を置き、姿勢を目視するのが一番。5円玉に長めの糸を通して結び、鏡に吊るして垂直線の指標にするのもいいでしょう」(伊藤さん)。

ポイント③ 猫背改善アプリを使ってみよう

仕事中は姿勢に配慮できない! ならばアプリを。スマホを胸ポケットに入れると猫背になった時に警告音が鳴る『背筋がシュッとニャン太くん』やPCのフロントカメラで姿勢を追跡する『Zen』など、自分に合うものを活用。

ポイント④ 書見台を置こう

顎を過度に引くと姿勢が崩れ、骨盤にも負荷がかかる。「デスクに書類を直置きにするよりも書見台を使い、頭蓋骨はいい位置にキープしましょう」(伊藤さん)。書見台がなくても、書類はPCより奥の位置に置くのが理想。

ポイント⑤ 休憩時間はバランスボールに乗ろう

自宅にバランスボールがあれば、休憩時間には積極的に活用を。「ボールに座って腰を前後左右に動かして転がすと、腰部の筋肉のこわばりが解けます」(伊藤さん)。骨盤まわりの筋肉も活性化していい状態にリセットされる。

ポイント⑥ 足台を用意しよう

骨盤のいい状態を保つには足元に高さ約10cmの台を置くのも策。「片足を乗せることで踏ん張りが利き、骨盤の過度な前傾や猫背になるのを回避できる。スタンディングで作業する時も片足を乗せるといいでしょう」(伊藤さん)。

ポイント⑦ 目線の高さに印となるものを用意しよう

「PC画面を見ていると、頭蓋骨の位置が変わり骨盤も傾きやすいです」(伊藤さん)。悪姿勢を解消するには頭蓋骨の位置を正すきっかけをつくりたい。椅子に座り姿勢を正した時に目の前に見える位置に絵や写真を飾るのもアリ。

ポイント⑧ スタンディングデスクを併用しよう

座位では大なり小なり骨盤に負担がかかる。「その点、高さ調節可能なスタンディングデスクがあれば、意識的に姿勢を変えられます」(八納さん)。ずっと立位で作業するのは疲れる。座位に疲れたら使う、その程度でも十分だ。

ポイント⑨ 在宅勤務の座り方を見直そう

座り方の見直し

骨盤をまっすぐ立てることが大原則。そのうえで心がけるべきは、座面に“腰掛ける”こと。「座面の端にお尻を軽く乗せる程度にします。その幅は20cm程度が目安。腰を掛ける間は骨盤の垂直線上に頭蓋骨が位置するよう、顎を軽く引きましょう」(伊藤さん)。

座面の高さは膝の角度が鈍角になるよう設定。またPCのキーボードに手を置いた時に、肘の角度も90度以上になるのが理想的。「足を前後に開いて座ることで骨盤が立ちやすくなる。十分なスペースがない人は脚を真横に大きく開いて座ると骨盤が立ちやすいです」。

ポイント⑩ 骨盤に優しい椅子の選び方

骨盤に優しい椅子の選び方

ポイント⑨で説いた座り方を習慣づけるには、姿勢をサポートするのに適した椅子を使うのも一案。

「骨盤を第一に考えるなら背もたれや肘掛けは必要ありません。一方、座面の位置調整機能は不可欠。座面の傾きはフラットか前傾タイプを選ぶと骨盤のいい状態を保ちやすい。買い替えを検討している人は、乗馬の鞍のような座面の形状の椅子がおすすめ」(伊藤さん)。