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【DJランナー対談】松浦俊夫×沖野修也「走りたくなる、音楽の話」

運動とは無縁な印象のあるDJという職業。でもこの2人に限ってそれは当てはまらない。毎日琵琶湖を走る沖野さんと、フルマラソンにも出場する松浦さん。ランと音のいい関係。とくと語っていただこう。

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沖野修也さん

沖野修也さん

おきの・しゅうや/1967年生まれ。1991年、DJユニットKyoto Jazz Massive結成。93年渋谷に〈THE ROOM〉をオープン。11月20日に『Tokyo Crossover / Jazz Festival』を新木場ageHaで開催。現在は滋賀県在住。

松浦俊夫さん

松浦俊夫さん

まつうら・としお/1967年生まれ。1990年、United Future Organization(U.F.O.)を結成。クラブカルチャー草創期の礎を築く。ソロ転向後も国内外のクラブやフェスで活躍。ラジオ『Tokyo Moon』(InterFM897)オンエア中。

走ることで生活にメリハリがつく

沖野 まさかこの2人で、ランの対談をするなんて(笑)。松浦君は結構若い頃から走っていたとか?

松浦 20代の頃は毎日のように朝までDJをやって、お酒もタバコもやる生活。このままだとカラダを壊すと思い近所の公園を走り始めたのが最初。

松浦俊夫

松浦さんお気に入りのウェアは〈GYAKUSOU〉。「派手ではなく大人が着られるシックな色合いが好みなんです」。

それから時間が空いて、東日本大震災の被災地の子どもたちを応援するチャリティーランの一環として、東京マラソンに挑戦したんです。

沖野 初マラソンで4時間半を切ったんでしょ? 凄いなあ。

松浦 坂道ダッシュとか専門的な練習もしたし、本番1か月前からは断酒もね(笑)。でも、今は走りたいときに気持ちよく走る感じ。だいたい1日おきに3~10kmを気分やスケジュールに合わせて走ってます。

沖野 僕は以前〈Nike+iPod〉用にランナー向けの曲をセレクトしたのがきっかけ。それまでランの経験はなかったけど、曲のテンポや聴き心地を確かめるために走りだして。

沖野修也

週に数日東京滞在する沖野さん。「たまに代官山周辺を走ります。東京は都心でも公園が多くて走りやすい」。

その後は特に走っていなかったけど、コロナ禍で在宅時間が増えたのを機に、運動不足解消目的で再ラン。家が琵琶湖の近くだから、ガーッと走ってそのまま水に飛び込むのがお約束。で、泳いだ後は砂浜のゴミ拾いをして帰る。ヘルシーじゃない?

松浦 とてもね(笑)。走ることで何か変化はありました?

沖野 うーん。“呼吸”に対する感覚が変わったかな。家のあたりは緑が多いし標高も高いので、空気って実はおいしいんだなあって(笑)。

松浦 僕らはずっと家に籠もってひとりで音楽を聴いたり、制作をする時間が長いから、走ることで生活にメリハリがつくし、気分も落ちにくくなる。

特に去年以降イベントがことごとく中止になっているので、どうしても不安がよぎる瞬間ってあって。でも、走っていると「まあ何とかなるさ」と思えてきました。

沖野 カラダを動かして酸素をたくさん吸って、全身に血を巡らせれば、それだけで前向きになれる。去年はずっと家にいたから走ってばかりいたなあ。おかげで超元気。

走りの高揚感は、いい音楽を聴いたときに似ている

松浦 走った後の高揚感って、いい音楽を聴いたときのアッパーな気分に近いかもしれない。

沖野 確かにね。僕はDJという職業柄、曲単位で聴くことが多いんだけど、ランニングのときはアルバムを通しで聴くんだよ。その意味では、走り始めて確実に“聴き方”が変わった。仕事以外のところで音楽に触れる時間が増えたというか。

松浦 僕は季節の移ろいとか、街の音を感じたい日はイヤホンをしないけど、何か聴くとしたらアンビエントやアコースティックな曲調のものがオススメ。ランニング中に流れる風景や研ぎ澄まされる肌感覚、嗅覚にマッチするよう、ゆったりめのナンバーがいいかも。

フルマラソン完走を目指して走っていた頃はドラムンベースやハウスなど速めの曲がお供だったんだけど。

沖野 松浦君はアンビエントで、僕は気分を高めるアッパー系。同じランでもスタンスの違いによって選ぶ曲も全然違ってくると。

松浦 今はサブスクや配信サービスが充実しているから、自分の走り方や気分に応じて最適な曲を選んだり、プレイリストをいくらでも作れる。いい時代だと思う。音楽を聴くのと一緒で、走ることを特別に捉えるのではなく、生活の一部と考えればいろいろ好循環が生まれるのかなと。

沖野 その感覚わかるなあ。

松浦 そういえば最近多いのが、自宅から都心まで10kmくらい走って、おいしい料理があるデリをテイクアウトして、電車で帰るってこと。ちょっとした旅ランだけど、知ったつもりの東京の街が違って見えて。

沖野 遠くに行けないご時世だけど、逆に近所を走る楽しみが増えたってことだね。今度、一緒に走りに行こうか?

沖野さんの愛用品

安定のBOSEサウンド
BOSEのスポーツ用ワイヤレスタイプのイヤフォン

BOSEのスポーツ用ワイヤレスタイプを愛用。「音をしっかり聴きたい派の僕も満足できる高音質。この手のイヤホンは紛失しやすいんだけど、とにかくフィット感がいいので安心して着けられるのもポイント」。

2人とも同タイプを着用。
Nike REACT INFINITY FLYKNIT

《Nike REACT INFINITY FLYKNIT》。偶然にも松浦さんも同じタイプを履いていた。「ソールが地面をしっかり摑んでくれる。砂浜も走るので接地したときの足裏感覚を重視しています」。

松浦さんの愛用品

有線タイプを選ぶ理由は。
松浦俊夫さんのイヤホンは有線タイプ。

松浦さんのイヤホンは有線タイプ。「走っている最中にスマホとのペアリングが切れるのが嫌で、BOSEの同モデルを3代続けて使っています。ラジオを聴くこともあるので、音域がフラットな方が好みです」。

ランナーのバイブル。
村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』(文春文庫)

村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』(文春文庫)を愛読。「ラン未経験者にも読んでほしい一冊です。村上さんが走っているときに考えていることや見えている世界に共感を覚えました」。

松浦さんのSONGS FOR RUN!

『Music』(Cleo Sol)
『Music』(Cleo Sol)

アルバム『MOTHER』に収録。FOREVER LIVING ORIGINALS/輸入盤CD2,750円(税込み)。

オーガニックソウルサウンドとエキゾチックな雰囲気が魅力のシンガーソングライター、クレオ・ソルの一曲。「朝焼けに包まれて静寂の街を駆け抜けるときに最適」。

『swag w/ kav』(Joy Orbison)
『swag w/ kav』(Joy Orbison)

アルバム『still slipping vol.1』に収録。XL Recordings/国内盤CD2,420円(税込み)。

10年代UKガラージ・ハウスにおける孤高のDJジョイ・オービソンのハウスナンバー。「都会の摩天楼の明かりを見上げながらカラダが音と一体化するナイトランに」。

『Goodbye for Now』(Nathaniel Cross)
『Goodbye for Now』(Nathaniel Cross)

EP『THE DESCRIPTION IS NOT THE DESCRIBED』に収録。FIRST WORD/輸入盤レコード1,300円(税込み)。

トロンボーン奏者、ナサニエル・クロスのブロークンビーツにブラスが絡むブラジリアン・フュージョン。「晴れた日に川沿いを爽やかな風に乗って走りながら」。

沖野さんのSONGS FOR RUN!

『Aspects』(STR4TA)
『Aspects』(STR4TA)

アルバム『Aspects』に収録。Brownswood Recordings/国内盤CD2,420円(税込み)。

ジャイルス・ピーターソンとインコグニートのブルーイによるプロジェクト、ストラータによるブリットファンクナンバー。「僕の走るペースにちょうどいいテンポ」。

『ONE WORLD』(DJ KAWASAKI)
『ONE WORLD』(DJ KAWASAKI)

Village Again・EXTRA FREEDOM/CD2,500円(税込み)。

DJ KAWASAKI11年ぶりのオリジナルアルバムに、Monday満ちる、多和田エミらが参加。「ランのペースをキープするのに最適な、開放感と高揚感を感じられる一枚」。

『Mood Valiant』(Hiatus Kaiyote)
『Mood Valiant』(Hiatus Kaiyote)

Brainfeeder/国内盤CD2,420円(税込み)。

ネイ・パーム率いるフューチャー・ソウル・バンドの新譜。「クールでドラマチックでエキセントリック! 走りに飽きないよう刺激を与えてくれます」。

取材・文/黒田創 撮影/小川朋央

初出『Tarzan』No.820・2021年10月7日発売

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