五味宏生さん
教えてくれた人
ごみ・こうき/日本陸上競技連盟医事委員会トレーナー部委員。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。マラソンの設楽悠太、短距離の福島千里ら、トップアスリートを指導。
「ランニングは、他の運動と大きく違うところがあります。それは、左右対称の動作がずっと続くこと。人間は決して、左右で同じ動きをすることはできませんが、その違いを自分の中でしっかりと把握して改善することが大切です」
こう語るのはトップアスリートを指導してきた五味宏生さんである。ここでは、彼に①走る前のウォーミングアップ、②終わった後のクールダウン、そして③走らない休みの日に週1回行うトレーニングを教えてもらう。主な目的となるのはケガの予防だ。
この記事では②終わった後のクールダウンを紹介する。
左右差が鮮明に。自分の癖を知る
クールダウンの目的の一つは、翌日に疲れを残さないこと。走った後の筋肉は収縮して硬くなってしまう。こうなると血液の流れは阻害され、筋肉中に溜まった代謝物(エネルギーを使った後に出るゴミ)を排泄できにくくなり、疲れが残る。筋肉を伸ばすことで、これを解消できるのだ。
「さらに、大切なことがあります。走った後は、カラダは疲労しているから、左右差をより感じやすくなっています。右側の太腿の前は張っているのに、左側はそれほどでもないとか。過剰に使った場所とそうでない場所がより鮮明にわかる。だから、これを自分の走りの癖として捉え、改善していってほしい。そうすれば走りは整っていきますからね」(五味さん)
① ラテラルストレッチ(左右4回ずつ)
- 頭上で手を組み、腕を伸ばして立つ。
- 両足の爪先を前に向けて揃え、背すじを伸ばし、顔を正面に向ける。
- 右足を1歩後方へ下げ、脚と上体、腕でCの字を描くようにイメージし、カラダを真横に倒す。
② クワッドストレッチ(左右4回ずつ)
- 両足を床につけ、膝を90度ほどに曲げて座る。
- 上体を後ろへ倒し、両手を床につき、腕でカラダを支える。
- 尻を床から浮かせ、上体を一直線にする。
- 踵を上げて、爪先でバランスを取りながら、膝を左右へ倒す。
③ スキャプラムーブメント(左右4回ずつ)
- 右足を大きく1歩前に出して腰を落とし、左の膝から足の甲までを床につける。
- 手のひらを内側に向け、両腕を前へ伸ばす。
- 左腕を頭上へと上げ、手のひらを外へ向け、
- 肩甲骨を寄せるように肘を曲げて後方に引く。
“動かない側”はさらに2回プラスしよう
「左右差が大きいとケガに繫がることがある。得意な方に負担を押しつけて、その場所が疲弊してしまうときなどがそれ。ケガをしてしまうと、また一から始めなくてはならないから、それは避けたいですよね」(五味さん)
重要になってくるのが“気づき”。五味さんに紹介してもらったメニューは、どれも左方向・右方向の動作が対になっている。実際に動いたとき、どちら側がより動かなかったかを、常に確認してもらいたい。
「動かなかった側は少しだけ多めに繰り返しましょう。そうすれば自然と左右差は少なくなり、ケガをしにくいカラダができていきます」(五味さん)
メニューはすべて左右4回ずつ行う。そして、不得意と感じた方を、さらに2回繰り返してもらいたい。