五味宏生さん
教えてくれた人
ごみ・こうき/日本陸上競技連盟医事委員会トレーナー部委員。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。マラソンの設楽悠太、短距離の福島千里ら、トップアスリートを指導。
「ランニングは、他の運動と大きく違うところがあります。それは、左右対称の動作がずっと続くこと。人間は決して、左右で同じ動きをすることはできませんが、その違いを自分の中でしっかりと把握して改善することが大切です」
こう語るのは、トップアスリートを指導してきた五味宏生さんである。ここでは、彼に①走る前のウォーミングアップ、②終わった後のクールダウン、そして③走らない休みの日に週1回行うトレーニングを教えてもらう。主な目的となるのはケガの予防だ。
この記事では①走る前のウォーミングアップを紹介する。
目次
筋肉を温めて関節可動域を広げる
2021年のオリンピックを見た人はわかるでしょうが、ほとんどの選手が、スタート前に入念に準備を行っていました。これは非常に重要で、初心者にも、絶対にやってもらいたい」(五味さん)
ウォーミングアップの目的は、まずは筋肉を温めること。こうすることで、収縮・伸展しやすくなり、その結果関節の可動域も広がり、カラダの柔軟性も高くなっていくのだ。
「また、血流も上がるから、酸素や栄養素も筋肉に届きやすくなる。つまり、走る態勢が整うわけです」(五味さん)
メニューを行えば、左右の違いを実感することになる。やりにくい方の回数を増やし、左右差をリセットするようなイメージで取り組もう。走りは変わってくる。
① ニーリング ハムストリング&チェストオープナー(左右4回ずつ)
- 左足を1歩前に出し、腰を落とす。
- 腰を後方に引いて左膝を伸ばし、爪先を上げる。
- 背すじを伸ばしたまま、上体を股関節から曲げて前に倒し、左にひねる。
- 左腕を上に伸ばし、右の手のひらを床につける。
② カーフストレッチ(左右4回ずつ)
- 上体と脚で三角形を作るようにカラダを折り、床に両手をつく。
- 背すじを伸ばして、上体を一直線にし、顎を引いて頭を下げる。
- 右の踵を床にできるだけ近づけ(できれば床につけ)て3秒キープ。
- 左右交互に行う。
③ ランジ&スパインツイスト(左右4回ずつ)
- 爪先を正面に向けて、左足を大きく1歩前に出し、しっかりと腰を落とす。
- 骨盤を立て、腰を前方へと押し出す。
- 上体は床と垂直に保持して腕を開き、胸の前で手を合わせる。
- 左方向へと上体を真横にひねり、体側を伸ばす。
“動かない側”はさらに2回プラスしよう
「左右差が大きいとケガに繫がることがある。得意な方に負担を押しつけて、その場所が疲弊してしまうときなどがそれ。ケガをしてしまうと、また一から始めなくてはならないから、それは避けたいですよね」(五味さん)
重要になってくるのが“気づき”。五味さんに紹介してもらったメニューは、どれも左方向・右方向の動作が対になっている。実際に動いたとき、どちら側がより動かなかったかを、常に確認してもらいたい。
「動かなかった側は少しだけ多めに繰り返しましょう。そうすれば自然と左右差は少なくなり、ケガをしにくいカラダができていきます」(五味さん)
メニューはすべて左右4回ずつ行う。そして、不得意と感じた方を、さらに2回繰り返してもらいたい。