浮気性は遺伝子レベルで決まっている?
尿の量を調節する役割を果たしている「バソプレシン」と呼ばれるホルモンが、数年前から別の観点で脚光を浴びることになった。そのきっかけになったのが、米国のラリー・J・ヤング教授が行った研究だ。
一夫多妻制を取る種類のネズミのグループと、一夫一妻制を取る種類のネズミのグループを比較した場合、バソプレシンをキャッチする受容体に「多型」という違いがあることがわかったのだ。
そして、一夫多妻制の種類のネズミに一夫一妻制の種類のネズミの遺伝子を組み込むと、一夫多妻制から一夫一妻制に変化したという。 その結果、バソプレシンは「離婚遺伝子」とも呼ばれるように。
もしかしたら、ヒトの浮気性にもバソプレシンが関係しているのではないか、とまことしやかに推測されるようになったのだ。
ヒトの脳の受容体は一夫一妻制の型
とはいえ、ヒトの脳はネズミと比較にならないほど高度に発達しているため、このバソプレシンだけが浮気に関与しているとは考えにくい。ただ、何かしらの影響を及ぼしている可能性は捨てきれないと坂本先生は指摘する。
「そもそもヒトは一夫一妻制の受容体を持っていると言われていますが、それ以上に個人差が大きく、その型によって浮気しやすい人としにくい人を分けられるかもしれません」(岡山大学・坂本浩隆准教授)
その主張を強固にするのが、バソプレシンが分泌される場所。脳の視床下部にある下垂体の後葉から分泌されるホルモンは、バソプレシンとオキシトシンのふたつなのだ。しかも、ともに9つのアミノ酸で構成されており、構造が非常に似ている。
「オキシトシンは他者と絆を形成するホルモンとして有名ですが、バソプレシンにも同様に働きがあるとされています。ヒトの行動に影響を及ぼしていることは間違いないでしょう」(坂本浩隆准教授)
バソプレシンの働きについてはまだ未知な部分も多い。このまま研究が進むことで、浮気性を改善する特効薬が生まれる日が訪れるかも!? そんな空想をせずにはいられないのだ。