ジェンダー以前に考えるべきこと。りゅうちぇるインタビュー
独特のキャラクターで早くからジェンダーを超えていたりゅうちぇるさん。1児の父となった彼が考えるジェンダーとは。ジェンダー以前に考えるべきこととは。(雑誌『ターザン』No.816〈2021年8月5日発売号〉より全文掲載)
取材・文/井上健二 撮影/山城健朗 ヘア&メイク/megu
初出『Tarzan』No.816・2021年8月5日発売
普通の人も評価される社会であってほしい
ターザン
りゅうちぇるさんは、「ジェンダーレス男子」と言われます。
りゅうちぇる
どう呼んでもらっても構いませんが、僕にジェンダーレスって何ですかと聞かれても困ります(笑)。僕はカラダもココロも男性ですが、女の子が好きになるものが好きでした。それが変えたくても変えられないりゅうちぇるという人間です。
ターザン
その個性を作ったのは?
りゅうちぇる
姉が3人いて、家にはネエネエの洋服やお人形がたくさんあり、僕も着せ替え人形のように女の子の服を着せられていました。それが楽しかったし、メイクもするようになった。
中学までは、「女の子っぽい!」とからかわれることも多かったので、ずっと自分を隠していました。でも、高校では素の自分を出したいと思い、(沖縄)県内でもいちばん自由な学校を選び、入学式からばっちりメイクをして出かけました。
高校時代に個性を全開で出せたことが、現在の自分のベースになっています。
ターザン
メイクをする男性に偏見を持つ人もまだまだいます。
りゅうちぇる
メイクする男子がマジ認められない人がいても全然いい。それぞれの意見やポリシーを尊重するのがダイバーシティだから。
でも、「メイクするな。目障りだ」と他人に言ったら話は変わる。僕も自分の意見を強要しないように気をつけています。
ターザン
SNSなどでジェンダーや性に関する悩みに答えています。
りゅうちぇる
先日も彼氏がゴムを着けてくれないというコメントを女性のファンからもらいました。男子も悪いけど、「そんなのありえない!」となぜ言えないのかを考えると、結局自分を愛せていないんじゃないかと心配。
自分は自分でいいという自己肯定感が足りない若い子が多いと感じます。自分で自身を認めて愛さないと、自らを守れないし、誰も愛してくれません。個々が自分らしく活躍できる時代になると、自己肯定感がより大事になると思います。
ただ、個性がのびのび生かせる世界でも、他人と違って目立つ人たちだけが評価されるようになってほしくない。当たり前で普通であることも素晴らしいし、尊重されるべき個性なのです。
ターザン
3歳になる息子さんの子育てで気をつけている点は?
りゅうちぇる
お腹にいるときから、パパとママはあなたが生まれてくれて本当に嬉しいし、愛していると言い続けた。子どもの頃に、自分は誰かに無条件で愛される人間なんだとわかれば、自己肯定感の土台ができると思う。
振り返ると、僕の両親はいつもハグしてくれたし、愛されているという実感がつねにありました。
ターザン
息子さんにもメイクをするような男性に育ってほしい?
りゅうちぇる
それは彼自身が決めること。男の子だから、女の子だからという以前に、子どもには一人ひとりの個性があり、性格も違う。それを伸ばしてあげたい。
シンデレラのお話を読み聞かせするとき、息子には「女の子から告白してもいいんだよ」と話しかけますし、おもちゃ売り場では「欲しかったら、バービー人形でもいいんだよ」と伝えています。
関連記事
SOGIってわかりますか? 知っておくべきジェンダーのこと