「親密なSEX」のための心理学。愛を深める12のTIPS
普段の生活から行為後まで、愛を深めるためにできること、真剣に考えてみよう。ゆうメンタルクリニック・ゆうきゆう先生、AV男優・しみけんさん、二人の識者に聞いた今日からできる12のTIPS。
取材・文/石井 良 撮影/吉松伸太郎 スタイリスト/笠島康平 ヘア&メイク/村田真弓 取材協力/しみけん(AV男優)、ゆうきゆう(ゆうメンタルクリニック・ゆうスキンクリニックグループ総院長)
初出『Tarzan』No.816・2021年8月5日発売
目次
① 相手の“気遣い”に反応する。
マスク汗ばむ夏も2度目を迎えたが、我慢の日々は依然として続く。カップルたちはカラダを重ね合うことはおろか、会いたいと気軽に口にすることすらままならない。
その分、一緒に過ごす貴重なひとときは、より大切にしたいと思うのが人情だ。アドラー心理学を生かしたコミュニケーションなら、日常の僅かな時間でも愛を深めていけると〈ゆうメンタルクリニック〉の総院長、ゆうきゆう先生は言う。
「人間が一番快感を覚えるのは、他者に貢献すること。相手が何かしてくれたことを見逃さず、ちゃんと反応を返してあげる。そのコミュニケーションが好循環を生み出します」
エスコートしてくれたとき、荷物を持ってくれたとき、家事をしてくれたとき。会えないときの寂しさを埋める気遣いもそう。過剰に反応したり、演じたりする必要はない。シンプルに伝えられれば十分。一番良くないのは、無反応でいることだ。
② “触れたい”の気持ちに素直になる。
好きな人に触れたいという感情は本能的な欲求。「手をつなぎたい」も「カラダを交えたい」も、相手を理解したいという気持ちの表れだ。
「『チェンソーマン』(集英社)という漫画に、“エッチなことは相手を理解すればするほど気持ちよくなる”というセリフが出てきますが、まさにこれ。日常においても、普段から触れ合い、お互いを深く知ることは、熱い夜を過ごすための大切な要素」(AV男優のしみけんさん)
どうか“触れたい”という気持ちに正直に。もしマンネリに悩んでいるなら、まずは手と手を触れることから始めてみるべし。
③ 生活習慣は性活習慣とイコール。
セックスに自信がないと不安を抱えるそこの君。必殺技的なテクばかり磨こうとしていないか? 数々の一般男性たちの悩みに答えてきたしみけんさん曰く、まずは生活習慣を見直すことが先決。
「良い性活は良い生活習慣から。バランスの良い食事、質の高い睡眠、適度な運動。セックスを改善する以前に、この基本がおろそかになっている人が多いのです」
この3つの要素が与えてくれるのは、自分に対する自信。自信がつけば、パートナーとの接し方も変わるし、自然とセックスの不安も解消してくれる。生活と性活は表裏一体だ。
④ 目と手のコミュニケーションを大事にする。
パートナーの良き理解者であれ―とは前項で述べたことだが、「ちょっと難しい」と感じた人もいただろう。ならば、簡単なコミュニケーションから学んでみよう。
「まず意識するべきは、目と目の会話です。人と接するときには相手の目を見ましょう、というのは基本中の基本。何を当たり前のことをと思うかもしれませんが、行為前のイチャイチャタイムや行為中になると、できなくなる人がほとんどです」(しみけんさん)
そしてもうひとつが、手のコミュニケーションだ。人間、皮膚と皮膚で触れ合うことで感じる情報はとても多く、繊細なもの。
「体温が上がっているなとか、汗ばんでいるなとか、力が入っているな、とか。目と手を駆使することで、言葉以上に相手の感情をキャッチすることができます」
言葉に頼らないコミュニケーションのあり方は、こんな時代だからこそ身につけておきたいテクニック。早速“目と手”を駆使しよう。
⑤ 鋭い観察眼を磨き、良き理解者になる。
口やカラダは臭っていないか、毛の処理が甘いところはないか…。イチャイチャ中も、頭の中ではいろいろな思考が渦巻いている。その繊細な思いに寄り添えるかどうかに、二人の未来はかかっている。
「不安は無意識のうちに行動に表れるものです。目線が泳いだり、言葉のチョイスが普段と比べて変だったり。男女ともに、その微妙な差異を見抜く鋭い観察眼を磨くべき。愛するパートナーを第一に考える、良き理解者となってあげましょう」(しみけんさん)
相手の微かな変化を見逃さぬよう、気づいたことを日記に記しておくのも一つの手だ。あとは、不安もろとも抱きしめてあげること。
⑥ 共通のミッションをこなしてみる。
例えばテニスのダブルス。二人で協力して敵に立ち向かい、さらにはゲームに勝利するという大きな快感が伴ったとき、最高の一体感が生まれ、二人の仲はグッと深まる。そこには、同じミッションを共有することによる親近効果が働いている。
「パートナーとの日常に置き換えてみると、一緒にご飯を食べて食欲を満たすことや、セックスをして性欲を満たすことも、同じことが言えます」(ゆうきゆう先生)
そこで忘れてはならないのが、お互いの快感を確かめ合うこと。これをする・しないでは大違い。夜の営みの満足度も、ぐんぐんと上昇していくこと間違いなしだ。
⑦ “自己開放”で親密な関係になれる。
好きな人の前ではいつも素直な自分でいたい。しかし、こと行為中においては、本来の自分を出せていないという人は多い。
「“自己開示の親近効果”といって、自分をさらけ出せば出すほど相手とより親密な関係になることができると、心理学では考えられています」(ゆうきゆう先生)
とはいえ、いきなり性癖をカミングアウトしては、パートナーを動揺させてしまいかねない。まずは行為中に感じたじれったい気持ちを口にすることから始めよう。「こうやって攻められたい/攻めてみたい」「こんな体位がいい」「どこが気持ちいい」など。言葉にするのが恥ずかしいなら、触ってほしい部分に相手の手を導くだけでもいい。
「察してほしいという気持ちも分かりますが、それはコミュニケーションを放棄しているのと一緒。結局どんなプレイをしたらいいか分からず、盛り下がってしまいます」(しみけんさん)
自分から積極的にさらけ出すことで相手も思っていたことを言いやすくなり、二人の愛は相乗効果でさらに燃え上がる。この方程式こそが良いセックスを生み出す極意だ。
⑧ 快感を引き出す質問術を身につける。
『ターザン』が実施したアンケートによれば、6割の人がセックス中に積極的な会話をしていないと答えた。これは実にもったいない。
「上手に会話を展開して、パートナーのセックスに対する理想を聞き出しましょう」(ゆうきゆう先生)
王道は「どうされたい?」「どこがいい?」など。“ど”から始まるオープンクエスチョン。デキるビジネスパーソンの常套句としても有名で、会話を広げる効果があるとされている。
恥ずかしくて答えられないなら、「はい/いいえ」で答えられる2択の質問で攻める。それを繰り返していくと、少しずつ相手が望むプレイや気持ちいいスポットに近づいていく。行為中の会話こそ“私たちなりのセックス”を育んでくれるのだ。
⑨ セックスにゴールなんてない。
相手を思えばこそ、ついつい“イカせなきゃ”と力んでしまう。それを受ける側も、こんなに頑張ってくれているのだから“イカなきゃ”と焦る。絶頂こそゴールと思われがちだが、その考えは払拭したい。
「好きな相手とのセックスに敵うものはありません。カラダを重ね合うだけで十分に幸せであり、そこにイカなきゃ、イカせなきゃ、という考えは必要ない」(しみけんさん)
心理学的にも正しいようだ。
「信頼するパートナーと交わることの心理的な満足度は高く、ときとして肉体的な快感を凌駕するともいわれています」(ゆうきゆう先生)
二人の間に信頼感が築けてさえいれば、それ以上、何もいらない。
⑩ 男たちよ、せめて5分だけでいい。
射精後の男性の“賢者タイム”は原始時代の名残ともいわれ、行為後は急激に冷める。一方、女性はじっとして長く余韻に浸りたい。事後を特別な時間にするためにも、そんな男女の特性をしっかり理解したうえで、お互いに歩み寄りたい。
ゆうき先生、しみけんさんともに、男性にはせめて5分だけでいいから、女性に寄り添う心の余裕を持ってほしいとの見解だ。
「この人は、ちゃんと一緒にいてくれる、大切にしてくれるっていう気持ちが女性に伝わることが大切です」(しみけんさん)
ここで男性が取るべき行動は、優しく抱きしめて「幸せだよ」と耳元で囁く、これ一択。遠足は家に帰るまで、セックスは幸せな気持ちを共有し、ふたり眠りに落ちるまでだ。
⑪ 褒めると伸びる。比べると醒める。
一段落すると、徐々に会話も増えてくる。この気の緩んだタイミングでは失言に気をつけたい。例えば、「今までで一番気持ちよかった」。ワンナイトの相手であれば褒め言葉かもしれないが、パートナー相手には絶対にNGと覚えておこう。
「社会的比較理論といって、人間は自己評価を正確に把握するため、無意識に周囲と比較してしまう生き物。せっかくの二人の時間にいきなり他者がチラつくと、その本能的な思考が先に立ってしまい、行為中であればうまくできなくなってしまう原因になります」(ゆうきゆう先生)
相手を傷つけない言葉選びもセックスのテクであると心得たい。
⑫ ポジティブ思考で口論を減らす。
最後になるが、本テーマで並べた方法は、今日、今からでも意識するだけでできること。そして、パートナーとの関係を良好に保つために欠かせない愛情表現の一例だ。
もちろん、セックスはその最たるものであるが、じゃあセックスだけしていれば安泰かといえば、そうは問屋が卸さない。
「“結婚に対する幸福感=セックスの回数ー口論の回数”という公式があります。週4回性行為をしていてもその間に5回いざこざが起これば、不幸せであると感じてしまうのです」(ゆうきゆう先生)
仲直りのセックスとはよく言ったものである。とはいえ、口論をしないに越したことはない。そこで本稿のテーマであるパートナーとの接し方が生きてくるというわけだ。
「“言葉が未来をつくる”という意識もぜひ持ってほしいですね」とはしみけんさん。会話にネガティブ要素が多いと、どうしても気持ちが引っ張られる。憂鬱な雨の日には「相合い傘ができるから嬉しいね」と、ネガティブなこともポジティブに変換できれば、口論だって自然と減るはずだ。
セックスを生かすも殺すも、普段からの心掛け次第なのである。
『ターザン』816号「性学」特集・好評発売中!
こちらの記事も収録している『ターザン』816号「性学」特集。今どきのセックスライフを紐解きながら、真面目に「性」について深掘りして考えていく特集です。
カラダへの効果、性欲の不思議、ホルモンの高め方といった学びから、妊活、セックスレス、性差、といった気になる話題にもアプローチ。生理学、心理学、脳科学、社会学、栄養学、自慰学、感染症学といった、ジャンルに分けて誌面は展開していきます。
セックスライフをより良くするためのエッセンス満載でお届けする一冊。パートナーへの理解を深めて、カラダとココロに効くセックスへ誘います!