小杉好紀院長
教えてくれた人
こすぎ・よしのり/南青山ウィメンズクリニック 院長。医学博士。産婦人科専門医、臨床遺伝カウンセラーとして活動。生命科学と医学の橋渡しをするトランスレーショナルリサーチを専門的に行う。
不妊治療、一般的な6ステップ
12か月以上、定期的に避妊なしのセックスしても妊娠に至らない。これがWHOによる不妊の定義だ。「日本でも1年ほど様子を見て治療を始めるカップルが大多数」と話すのは小杉好紀院長。
カップルで取り組むとなれば、下図のプロセスが一般的。
「どのような流れで進めるかはカップルによります。人工授精は専門家ばかりでなく、最近は注射器に精液を入れて膣内に注入するキットがネットでも買えるため、自宅で行うケースも。またタイミング法は比較的取り組みやすいものの、心理的なプレッシャーがかかると本末転倒です。排卵日以外の時期も含めコンスタントに性交をした結果、妊娠した例もあります」
それらで妊娠に至らない場合は男性の不妊検査や女性の排卵誘発療法などを行う選択肢も。
「今は新生児の16人に1人は体外受精で生まれているといわれます。ただ体外受精についての捉え方はカップルによりさまざまです。どんなアプローチを選ぶにせよ、不妊治療における精神的なストレスは自律神経にも望ましくありません」
体外受精を行う2グループの一つに通常通り施術し、もう片方にはメンタルケアも行うと、後者の妊娠率が倍増したという論文もある。ストレス過多で交感神経が優位になると抗ストレスホルモンのコルチゾールが、副交感神経が優位なら性ホルモンの前駆体となるDHEAが分泌されるからだ。
「近年行われた動物実験ではヒトの60歳に相当するマウスにビタミンB3の一種であるNMNという成分を投与すると妊娠・出産しました。生殖医療は飛躍的に研究が進んでいます。いずれにせよ、リラックスして取り組めるように二人で支え合って進めるのがベストです」
妊活は共同作業。始めたタイミングでイクメンを目指して
「妊活は結婚後に行うものと捉えられがちですが、実際は違います」と、不妊治療に取り組む患者のケアを中心に行うKOKO先生は話す。
「パートナーがいなくても卵子凍結を検討する女性から、結婚はしなくても出産はしたいという方まで、いろんな形の妊活があります」
コロナ禍になり、不妊治療に取り組む人のメンタルにも影響が。
「以前のペースで通院できない状況に対する焦りや、“妊活が十分にできてない”と自己否定感を抱く方も。そうなるのも無理はなく、女性の心身は生涯ティースプーン1杯分しか分泌されないエストロゲンに大きく左右されます。よって男性は日頃から性差に寄り添う姿勢が大切。
例えば生理前のPMSでパートナーが大変そうな時にサポートすると、女性への理解につながるはず。イクメンの素地は出産後でなく妊娠前から作られると思います」