「レコーディングダイエット」が行動経済学的に正しい理由|痩せる行動経済学①
健康的に痩せたい! そう思っていても目標達成が難しいと感じるのにはワケがある。太る・痩せる行動パターンを解明する「痩せる行動経済学」シリーズ。痩せたいのに痩せられない理由を、経済学者の古川雅一さんとともに紐解く。
取材・文/石川優太、村上広大 イラストレーション/平井利和
ゴールへの最短距離は描けるのに、そこに向かえない理由。
経済学において、合理的に自己利益を追求する人のことを「経済人」と呼ぶ。しかし、完全な経済人など存在しない。なぜなら、人間の行動には心理的な要素が影響しており、必ずしも合理的な選択をするとは限らないからだ。
行動経済学では、様々な実験によって、目標を達成するための狭間に生じる“思い込み”や“感覚のズレ”を分析し、体系化していこうという試みが行われている。前置きが長くなってしまったが、つまるところ行動経済学はダイエットにも応用できるのだ。
「痩せる行動経済学」の仕組みをわかりやすく図にすると、以下のようになる。
達成するコツは「記録すること」。
上の図から分かるように、目標の「痩せる」という自己利益を最大化するためには相当な胆力が必要だ。では、ダイエットにおいて合理的選択を続けるためには、どのような工夫をすればいいのだろうか?
「食事の内容や体重を記録する『レコーディングダイエット』がおすすめです。人間の脳は、自分が思っている以上に記憶を都合の良いように書き換えてしまいます。あまり食事をしていないつもりでも、意外と食べていた、なんてことを一度は経験したことがあるはずです。そのような自分にとって都合の良い思い込みを排除することができますし、脳内の情報が整理されて客観的に考えることができます」(経済学者の古川雅一さん)
最近はダイエットの記録を手軽に管理できるアプリが豊富に登場しているので、それらを活用してみてもいいだろう。
また古川さんによれば、身の回りの人に目標を共有すると外圧がかかってモチベーションをキープしやすいという。アプリへの入力がいちいち面倒だという方は、SNSに記録するのもおすすめだ。人の目線が気になって、やる気が起きるかもしれない。
次回からは、「選好の逆転」や「ヒューリスティックス」など、行動経済学的キーワードと共に、より専門的に解説していく。人間の行動パターンの癖や、それを上手く利用してダイエットに誘導するティップスなど、ダイエットが続かないというあなたは、要チェックだ。