肝臓に優しいお酒の飲み方|肝臓ケアの五つの噺
肝臓は、生きていくために最低限必要な基礎代謝量のうち21%を占めている。肝臓は代謝界随一のマルチプレーヤー。多芸な肝臓の5つの噺から、その多様な働きを学ぼう。今回は「肝臓に優しいお酒の飲み方」について。
取材・文/井上健二 イラストレーション/ニシワキタダシ 取材協力/栗原 毅(栗原クリニック 東京・日本橋院長)
初出『Tarzan』No.806・2021年3月11日発売
お酒は体質を見極め、自らの適量を嗜む。
肝臓の宿敵とされるのが、お酒。アルコールは肝臓の2種の酵素で酢酸となり、最終的に二酸化炭素と水に変わる。この解毒作用に忙殺されると、肝臓は疲れモードに。
一般的に肝臓に優しい節度ある酒量の目安は、純アルコール換算で1日20g。ビールならロング缶1缶、ワインならグラス2杯だ。
肝臓のアルコール代謝能力は、体格や体質による個人差が大きい。日本人の約44%は、アルコール分解酵素の活性が低いか、ほぼほぼゼロ。飲むと顔が赤くなり、お酒に弱いのはこのタイプなので、お酒に無理して手を出さぬこと。
「お酒が飲める残りの約56%で肝機能のγ-GTPが正常範囲なら、1日40gまでが許容範囲です」(肝臓専門医の栗原毅先生)
つまみに唐揚げはアリ。でも、ポテサラはナシ。
空腹で飲酒すると、アルコールの吸収率が跳ね上がる。それで血中アルコール濃度が高くなると酔いが進み、肝臓の負担が増える。必ずつまみを食べながら飲もう。
何を食べながら飲むかも大切。お薦めなのはタンパク質、脂質、食物繊維が豊富なもの。いずれも胃腸に留まり、アルコールの吸収をスローダウンさせる。焼き鳥、唐揚げ、焼き魚、冷や奴などはタンパク質と脂質に富み、野菜や海藻などの副菜は食物繊維が多い。
控えたいのは、ポテトサラダ、お好み焼きなどの糖質リッチなもの。糖質は吸収が早く、糖質とアルコールの代謝というダブルワークに追われて肝臓が疲弊する。〆のおにぎりや麺類も同じ理由で×。
フルーツ味のストロング系缶チューハイの誘惑を断て。
お酒により肝臓の負荷は変わる。肝臓に優しいお酒は、焼酎やウィスキーといった蒸留酒。アルコール以外の糖質などを含まず、適量なら肝臓の重荷になりにくい。気をつけたいのは、ビール、ワイン、日本酒といった醸造酒。ビールや赤ワインには前述のポリフェノール、日本酒には代謝を助けるアミノ酸も含まれるが、アルコール以外にも糖質が入っており、飲みすぎは脂肪肝の一因に。
何より危険なのは、アルコール度数7%を超えるストロング系缶チューハイの飲みすぎ。
「度数9%だと500ml1缶で純アルコール量が36gとなり、肝臓のダメージに。フルーツ味だと果汁や甘味料から果糖(※50ページ参照※)が入り、脂肪肝が心配です」
同量の水を飲みながら、お酒はゆっくり味わう。
蒸留酒のように強いお酒を飲む際、口直しに飲む水や炭酸水をチェイサーという。お酒を飲むなら、ビールや日本酒のように比較的アルコール度数が低いものでも、チェイサーを欠かさないことが肝心。
アルコールには利尿作用があり、飲んだお酒以上の水分が排泄されて脱水を起こす。ビールを500ml飲むと、尿は600ml出るといわれるほど。脱水すると肝臓のパフォーマンスが落ち、アルコール分解が滞り、深酔いや二日酔いに陥りやすい。また尿酸値も高くなり、痛風リスクも上がる。
お酒を飲むときは、同じ量の水か炭酸水を用意。お酒とチェイサーを交互に少しずつ飲むと決めておくと、ピッチも自然に遅くなり、深酔いも脱水も回避できる。