血糖値はカラダの何を教えてくれますか?【イチから学ぶ血糖値①】

高くなっても痛くもかゆくもない血糖値。けれど放置すると、やがて体内は大変なことに。日本人に多い糖尿病の予防のためにも、正しく血糖値を知り、上げ過ぎない方法を知ろう。今回のギモンは、血糖値とは何の指標なのか。

取材・文/廣松正浩 イラストレーション/しりあがり寿 取材協力・監修/片山隆司(かたやま内科クリニック院長、日本糖尿病学会専門医、医学博士) 参考文献/『名医が教える! 血糖値コントロール27の新常識!』(片山隆司監修/笠倉出版社)

初出『Tarzan』No.804・2021年2月10日発売

そもそも血糖値とは「日常生活や運動で使い切れず血中を漂っている糖の量」のこと。

食事で摂ったご飯やパンなどの炭水化物は、消化酵素の働きでブドウ糖と食物繊維に分解される。燃えやすいブドウ糖は優秀なエネルギー源。日常の活動や運動に使われるし、余れば肝臓や筋肉でグリコーゲンや中性脂肪に変換してストックできる。

しかし、肝臓や脂肪にしまい切れなかったブドウ糖は血中を漂う。この分量を測定したものが血糖値だ。

「車社会やリモートワークなどの影響でカラダを動かすことが減っている今は、社会構造的にエネルギーが黒字の状態、つまり常に余っている状態です」と語るのは日本糖尿病学会専門医の片山隆司先生(かたやま内科クリニック院長)だ。

ブドウ糖が血中に余ったままでも、悪さをしなければ問題ない。だが、高血糖の状態が続くと、遅かれ早かれ糖尿病予備群となり、そうなっても自覚症状はほぼないから、そのまま発症に直行する可能性もある。

 空腹時血糖値および75gOGTTによる判定区分
OGTT(Oral glucose tolerance test)とは、75g経口ブドウ糖負荷試験。ブドウ糖を含んだ液体を飲んだ30分後、1時間後、2時間後に採血し血糖値を測定する検査。
IFG:空腹時血糖異常。IGT:耐糖能異常。
健康診断などの血糖値検査で正常高値だった場合、糖尿病へ移行する可能性やOGTT時の耐糖能障害の程度など、さまざまなタイプがいるため、OGTTを行うことが勧められる。
出典/『糖尿病治療ガイド2016-2017』(日本糖尿病学会編・著/文光堂、2016)
HbA1c値が表す状態
HbA1cとは、過去1~2か月間の血糖値を反映する数値。「6.0%を超えると糖尿病の疑いが出てきます。健診などで数値が高いと言われたら、血糖値を上げない努力が必要です」。

糖尿病は一度罹患すると完治のない病気だ。後で述べるが糖尿病には恐ろしい合併症が無数にある。だからこそ罹らないに越したことはない。

だが、日本にはいま患者と予備群が2000万人もいると推測されている。あなたはいま、自分の血糖値を即答できるだろうか? まずは自分の現状を知ることから始めよう。