前頭前野が自分を騙す状態「隠れ疲労」って?|専門家に聞く「疲労の正体」vol.2
どうして人間は疲れるのか? 頑張る男子くすぶりくんの漫画と疲労の専門家・梶本先生の解説をテーマごとに読めば、謎が解ける! 今回のテーマはやる気などの“意欲”があると気付きにくい「隠れ疲労」について。
取材・文/石飛カノ イラストレーション/沼田光太郎
初出『Tarzan』No.797・2020年10月8日発売
疲労感をマスクするのは人間だけ。
くすぶりくん(以下:く) で、徹夜してしまいました。脳が相当疲れてますよね。
梶本修身先生(以下:梶) 疲れたと「感じる」のは視床下部や帯状回の前部ではなく、前頭葉の眼窩前頭野と呼ばれている部分です。自律神経の中枢に疲れが溜まってくると、サイトカインという生理活性物質がシグナルとして眼窩前頭野に送られて、はじめて「疲れた」と感じるんです。
く 疲れが溜まるところと疲れを感じるところが違うんですね。でも、上司の「期待してるぞ!」という言葉を思い出した途端、疲れがふっとんだような気がします。
梶 人間の場合、前頭前野が非常に発達しているため、やる気とか意欲によって疲れのシグナルがマスクされてしまうんです。
く へえ〜。
梶 脳内麻薬といわれるβ-エンドルフィン、やる気を生み出すドーパミンといった物質が働いて疲労感を感じさせなくします。人間は意欲の塊なのでこういうことが起こります。これが「疲労感なき疲労」または「隠れ疲労」と呼ばれる状態。
く 隠れ肥満みたいですね。一見痩せてるのに内臓脂肪たっぷり、みたいな。
梶 そう、だから厄介なんです。そのまま疲労感をマスクして活動を続けると自律神経が耐えきれずに崩壊してしまいます。結果的に心筋梗塞や脳梗塞などに繫がることもあるんです。
く ええっ! それってもしや過労死といわれるアレ?
梶 そうです。野生のライオンは獲物を追いかけているうちに疲労感を感じたら狩りをストップします。人間もそのように疲れのサインを見逃さないことが大事です。
く もう徹夜は絶対しません〜!