仕事で疲れたカラダにタンパク質。なかでも、豚肉が効く理由

「最近疲れが取れない」「何だか歳を感じるなぁ」あなたのそんな悩みにタンパク質が効くらしい! 今回は、「テレワーク導入で仕事量が増えたような。毎日シンドいです」という男性(40歳)からのお悩みに、コウヒロウ先生が答えます!

取材・文/石飛カノ イラストレーション/中島良二 取材協力/西村敏英(日本獣医生命科学大学応用生命科学部教授)、鈴木康弘(国立スポーツ科学センター スポーツ科学研究部先任研究員)、佐藤三佳子(日本ハム中央研究所)

初出『Tarzan』No.789・2020年6月11日発売

疲れの原因には「動物性タンパク質」で対処する。

コウヒロウ先生(以下、コ) こんにちは。どうしましたか?

患者 この頃、疲れがなかなか取れなくて。テレワーク続きでぐったりして仕事のケアレスミスが多くなってしまいます。

コ 在宅勤務はメリハリをつけにくいですからね。40歳というと働き盛りですが、お仕事はかなりお忙しいようですね。

患者 中間管理職で上にも下にも何かと気を遣います。パソコンの前で早朝から夜遅くまで目一杯働いています。土日や休日の労働も当たり前の状態で。

コ うーん、典型的なニッポンのサラリーマンですね。ズバリ、言いましょう。Aさん、あなたのカラダは酸化しています!

患者 ええっ! さ、酸化!?

コ 私たちのカラダや脳はエネルギーを使うときに必ず酸素を使います。そのうちの数%は活性酸素に変換されます。この活性酸素が悪さをして、疲労や老化、がんなどを引き起こすのです。

用語解説[活性酸素]

大気中の酸素分子が反応性の高い化合物に変化したものの総称。スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素、一重項酸素などがその代表格。

「活性酸素は細胞を傷つけてがん化させたり、体内のタンパク質を傷つけて老化を促します。それからコレステロールの酸化を促すことも活性酸素の大きな害。コレステロールは酸化されてはじめてアテロームという脂肪の塊を血管内に形成します。ということで、食品から抗酸化作用のある物質を摂ることが推奨されているのです」(日本獣医生命科学大学教授・西村敏英さん)

活性酸素が生じるメカニズム
活性酸素が生じるメカニズム/細胞の中にあるミトコンドリアでは血液経由で送られてくる酸素と栄養素を取り込んでエネルギーを作り出す。酸素の一部が活性酸素に変換され、疲労や老化などの原因に。

患者 がーん!

コ おっ、ヘトヘトでもダジャレを言う元気は残ってますね。

患者 ダジャレじゃありません! 先生、一体どうしたら?

コ 抗酸化作用のある栄養素を食品から摂ることが重要です。たとえば、ビタミンAやビタミンC、ビタミンEは強力な抗酸化作用があるビタミンです。

患者 聞いたことがあります。他にも赤ワインのポリフェノールとかお茶のカテキンとかにも抗酸化作用があるんですよね、コウサンカ、じゃないコウヒロウ先生!

コ はい。よくご存じですね。でもそれだけではないんです。豚肉にも抗酸化作用があるということ、知っていますか?

患者 豚、ですか?

肉由来のペプチドには強力な抗酸化作用あり。

コ 豚肉のタンパク質の抗酸化作用を調べた実験があります。それによると、ビタミンCやEに劣らない抗酸化作用があることが分かっています。

タンパク質の結合を細かく切断したものをペプチドといいますが、そのペプチドの状態になると抗酸化作用がさらに高まるのです。

用語解説[抗酸化ペプチド]

ここで言う食肉に含まれる抗酸化ペプチドはカルノシン、アンセリンといったペプチドのこと。

「理由は分かっていませんが、タンパク質より分子が小さくなったペプチドの方が抗酸化力が高いことが分かっています。マウスにストレスをかけると胃の中で次亜塩素酸ラジカルという活性酸素が発生して胃潰瘍ができます。そのマウスに豚肉由来のペプチドを与えると抗酸化作用によって胃潰瘍が軽減されるという結果が出ています」(西村さん)

豚肉ペプチドの驚くべき抗酸化作用とは?
豚肉ペプチドの驚くべき抗酸化作用とは?/Cは対照群。V.EはビタミンE、GSHはグルタチオン。どちらも抗酸化物質。Mfは豚のロース肉に含まれる筋原線維タンパク質、Spは筋漿タンパク質。これらはペプチド(P)の状態になることで、抗酸化作用が上昇する。
井上航ら、日本農芸化学会大会(2014)

患者 じゃあ、豚肉をせっせと食べれば疲労回復に?

コ 正確に言うと、回復ではなく予防ですね。それと、抗酸化ペプチドは豚肉だけに含まれるのではありません。牛肉もタンパク質の構造は変わらないので、同様の効果が期待できると思います。鶏肉や魚肉にも抗酸化ペプチドは含まれています。

食肉に含まれる抗酸化ペプチド
食肉に含まれる抗酸化ペプチド/豚や馬などの畜肉のほか鶏や、カツオ、マグロといった魚肉にも抗酸化作用のあるペプチドが豊富に含まれている。マウスの実験ではこのペプチドによるストレス性胃潰瘍の抑制効果が。
資料提供/西村敏英

患者 しまった〜! 言われてみればここ最近、疲れのあまりおかゆとかうどんばっかりで肉も魚も食べてなかった!!

コ それぞれのタンパク質食材には異なる栄養素が含まれているので、バランスよく食べてくださいね。