どうすればトレーニングは続けられるのか?『ターザン』ブレーンが考える「カラダ改造達成への道」

どうすればトレーニングは続けられるのか? 『ターザン』でおなじみの人気トレーナーに継続するためのメソッドを語っていただいた。

取材・文/黒田創 撮影/山城健朗

清水 これは行動心理学に基づく話ですけど、人間の行動は3か月に一度周期が来るんです。つまり、何かに飽きたりやめる確率が高いのが約3か月。だから半年続けるためには、まず3か月以上やってみることが最初の目標になるんじゃないかと。

齊藤 なるほど。確かに僕もトレーニング初心者にはそういう言い方をするかもしれませんね。

清水忍(しみず・しのぶ)
清水忍(しみず・しのぶ)/1967年生まれ。パーソナルジム〈IPF〉ヘッドトレーナー、全米スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/E-PC)、NESTA JAPANエリアマネージャー。野球選手のパーソナルトレーナーなど幅広く活動。パーソナル指導1時間12,963円他。

清水 最初の目標として3か月が最適という根拠はもうひとつあって、それはトレーニングで明らかにカラダが変わってくるのがそれぐらいのタイミングという点。単に減量ならば週単位で変化を感じられるケースが多いですが、筋肥大の場合はある程度時間が必要。まず3か月やって、目標を1つ上げて、次の3か月をクリアする。

菅原 多くの方はガチで鍛えれば1~2週間で某CMのようなカラダになると思っているかもしれませんが、まずそんなことないですから(笑)。

齊藤 人間のカラダには、環境が変化しても状態を一定に保とうとする基本的な働き、つまりホメオスタシスが備わっていますからね。

清水 だからどんなに優秀なトレーナーが指導してもトレーニングでカラダを変えるのは時間がかかります。

菅原 ダイエットにしても、最初の1か月で3kg減るケースも珍しくないですが、その後必ず停滞期がありますからね。だからトータルで考えて、月に1kgでいいんだって思っておいた方が気分的にも楽なんです。

「自分はこうなりたい」をある程度決めておくこと。

齊藤 続けるにはイベントを設定するのも効果があると思います。何かコンテストに出るとか、今年の夏は必ずビキニを着るとか…。明確な目標を先に決めた方がモチベーションを保ちやすい。これも行動心理学に基づく考え方ですね。

清水 その設定が1か月後だと「もう間に合わない」とストレスになるけど、3か月後ならカラダは変えられる。3か月の壁を乗り越えると次の3か月も続けられますから。

菅原 楽しむことも大事ですよね。女性ならかわいいウェアを買う、男性ならギアにこだわる。あとは気分転換も意外と必要。普段はジムでウェイト中心にやっていても、たまにスタジオプログラムでヨガやエアロビをやってみるとだいぶマンネリ化が防げるはずですよ。

齊藤邦秀(さいとう・くにひで)
齊藤邦秀(さいとう・くにひで)/1972年生まれ。ウェルネススポーツ、ランニングフィットネスラボ代表。ドイツ・ライプツィヒ大学コーディネーショントレーナー。トレーナーの人材育成にも熱心に取り組む。ランニングアセスメント90分15,000円。

齊藤 僕が指導するランナーにも、ヨガや筋トレなどやってもらっています。走ってばかりだとなかなかタイムが伸びなかったりするので。

菅原 ランナーは走るだけ、ヨギーニはヨガだけと固定観念に囚われるのがもったいない。同じことばかりやるから、トレーニングが長続きしないというのはある気がします。

齊藤 そういう意味では、どんなトレーニングをするにせよ、最初は総合型ジムに行くのもひとつの手。マシンやプール、いろんなプログラムがあるから、あれこれ試しているだけであっという間に3か月経ちますよ。

清水 マッチョになりたい。でも何をすればいいかわからないと言う人に限って、実は何も始めていない。まずはジムでもなんでもいいからスタートを切ることが大事だと思います。

齊藤 とりあえずトレーニングを始めてしばらく経つといろいろ見えてくると思うんですよ。「あ、自分は本当はこうなりたいんだ」って。

菅原 そこでパーソナルトレーナーがいる意味が出てくると思うんです。自分なりに目的や目標がより明確になってきた時に、専門性の高いわれわれの所に来れば、達成の近道を作ってあげられる可能性が高くなる。

清水 そのトレーナーの得意分野をチェックすると、より合うトレーナーに巡り合えるはず。膨大な情報が出る時代に難しいかもしれませんが、ある程度は絞れますから。ウチのお客さんの中には「世田谷区 パーソナルジム」で検索して、「シェイプアップ」を謳っていなかった最初のジムがここだから連絡したという方がいます。シェイプアップを看板にしない分、トレーニングに特化していると感じたと。

齊藤 鍛える目的が筋肉をつけたいのか、パフォーマンスを高めたいのか、ボディメイクなのかくらいはイメージすると探しやすくなりますよね。

障害からの回復、スポーツパフォーマンス向上などのトレーニングは特殊な状況も多く難しいのですが、シェイプアップのトレーニングは比較的対応しやすいです。

菅原順二(すがはら・じゅんじ)
菅原順二(すがはら・じゅんじ)/1978年生まれ。全米公認ストレングス&コンディショニングスペシャリスト。Body Element Pilates マスタートレーナー。ピラティスをはじめ豊富なトレーニング知識を持つ。スタジオ〈アランチャ〉代表。体験60分5,500円〜。

菅原 女性だと美容室感覚でジムに行く方が多いですし、パーソナルでもジムがお洒落な雰囲気とか、そのあたりをチェックするといいと思います。逆に男性はストーリー性を重視する方が結構多い。そのトレーナーのバックグラウンドをチェックして、「このトレーナーの下で俺はこんなカラダになるんだ!」とモチベーションを高めていく。そういう部分も必要かと。

清水 流行のトレーニングをあえてパーソナルでやる必要はないかもしれません。トレーニングにもトレンドはあるし、トレーナーは常に新しい理論を学ぶ必要がありますが、結局トレーニングは王道が継続性がある。

菅原 流行に流されず、基礎の部分をしっかり教えてくれるトレーナーこそすごいんですよ。そういうタイプはベテランが多いし、大勢の方に支持されている。パーソナルで指導してもらうメリットも大きいです。

パーソナルジムを4軒ハシゴする強者も。

齊藤 一人のトレーナーにこだわらないという考え方もあります。普段は総合型ジムに通っているけど、たまたま雑誌にウチのランニングラボが載っていたから来たという方もいますし。それもパーソナルのうまい使い方。

清水 ウチにもパーソナルジムを4軒ハシゴしている方がいます。胸はこの人、脚はこの人といった具合に。その方は僕の前でも他のトレーナーの話をするんです。「今あっちではこういう鍛え方なんだけど、清水さんの所でもやってみたい」と。セカンドオピニオンみたいで僕も勉強になります。

菅原 日本人的な考え方だと「このトレーナーについているのに他の所へ行ってはいけないのでは」となりがちですけど、その人と合わなければ他に移るのは当たり前だし、仮に合っていても他のトレーナーさんと掛け持ちでやってもらうのは全然OKです。

清水 結局、人と人の付き合いなので、1回のお試しでは互いに地の部分が出せないですから。この時の見極めで大事なのが、質問に対してわからないことはハッキリそう答えるトレーナーかどうか。そこではぐらかしたり自分の話に誘導するタイプのトレーナーは最終的に合わない危険性がある。

あと、トレーナーかぶれしているタイプもだめ。サービス業の精神がなく、押し付けがましい指導をするトレーナーも多いですから。そう考えると、本当にフィットするトレーナーに出会うには、なるべくたくさんお試しさせてくれる所がいいのかもしれません。