10日間でもう太らない! “舌”が生まれ変わる「舌トレ」実践編

ダイエットにも詳しい予防医学研究者の石川善樹さんが提案する「舌トレ」。要するのは10日間。この間に舌と脳を変える具体的な方法を紹介しよう。食習慣が変われば、ダイエットを意識しなくても自然に痩せられるはずだ。

取材・文/井上健二 イラストレーション/安ケ平正哉 取材協力/石川善樹(ハビテック)

初出『Tarzan』No.776・2019年11月7日発売

1. 始めるのは土曜の朝から。

旨味を生かした舌と脳のトレーニングを始める。そう決めたら、次の土曜からスタートしよう。それがいちばん成功率が高くて有効な方法。

週末に寝坊すると体内時計が狂い、時間栄養学的に太りやすくなる。土曜朝、遅くまで寝ていると、ドミノ倒し的に日曜も遅くまで寝てしまうもの。その負の連鎖を避けるため、土曜朝は平日とほぼ同じ時間帯に早めに起きる。

金曜夜は、誘いをきっぱり断ってさっと帰宅。平日多忙で睡眠不足なら、金曜夜は眠くてすっと早めに眠れるから、土曜朝に寝坊しなくても必要な睡眠時間が確保できる。酒宴は木曜に済ませておこう。

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「その朝食べるべきは、旨味が凝縮した和食。難しいなら、牛丼チェーンなどの和定食を活用しましょう。コンビニで買える旨味たっぷりの納豆+味噌汁+おにぎりでもOK」(予防医学者・石川善樹さん)

土曜にいつもより早起き&和定食で颯爽とスタートしたら、以降はアッパー系をカットしてダウナー系を食事の中心に据える。翌々週の月曜までの10日間、亜鉛多めも心掛けて舌まで生まれ変わったら、生涯ダイエットと無縁の体質に変身できる。

2. お酒はOK。でも食事とは分ける。

欲望に逆らっても勝てないから、お酒が好きな人は飲んでも構わない。ただその飲み方には工夫がいる。

まず大事なのは、食事と飲酒を分離すること。食べながらお酒を飲むとアルコールの作用で旨味を感じにくくなる。加えてお酒は甘味や脂っこい味と相性がいいため、結果的にカロリー過多に陥りやすい。食事中、水代わりにお酒を飲んでいると、酒量が増えやすいから気をつけたい。食事はミネラルウォーターやお茶などとともに済ませて、食べ終わってからお酒をゆったり楽しもう。

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とはいえお酒の飲みすぎは戒めるべき。なぜなら肝心の味覚が鈍ってしまう可能性があるからだ。

肝臓でアルコールを代謝する際に活躍するアルコール脱水素酵素は、亜鉛を活用している。お酒を飲みすぎると、舌の味蕾の新陳代謝に欠かせない亜鉛が浪費されるので、舌のウォッシュアウトにブレーキがかかる恐れがある。

お酒は適量に留め、酒肴をつまむなら亜鉛を豊富に含む食材をチョイス。食事と飲酒を分離して先にお腹が満たされていると、飲みすぎが防げるという利点もある。

味覚には構造と相性がある
味覚には構造と相性がある。/矢印でつながって隣り合っているものは相性が良く、お互いの美味しさを引き出す関係にある。このチャートから、お酒が甘味や脂味と親和性が高く、飲みすぎが食べすぎに直結することがわかる。
出典/FOODPAIRING「contrast tastes」より引用抜粋

3. 夕飯は歩いて食べに行く。眠りを整え、舌を正常化。

天候に恵まれたら、週末のどちらか1日は、夕飯にあえて少し遠くの和食レストランを予約。自宅からテクテク歩いて食べに出掛けてみよう。これだけでダイエットと舌トレに有効な2つのメリットが得られる。

第一に、歩くことは誰にとっても、もっとも手軽な運動である。

着替えて本腰を入れて運動をするのは面倒だし、習慣化しにくい。しかし夕飯を食べるという日課にタグ付けしてやれば、運動と意識しなくてもウォーキングが行える。その際、お腹を引っ込めるドローインをしながら歩くと効果的。お腹まわりのインナーマッスルが働き、ブラブラ歩くよりも消費カロリーが最大40%もアップする。両肩を後ろに引いて背すじを伸ばし、骨盤を起こしてヘソ下を最大限に凹ませて歩こう。

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第二に歩くと体温が上がる。

体内時計により、夕方は体温が上がるように設定されている。そこから体温が下がるときに寝入りやすくなるのだ。動いてさらに体温を上げると、体温の落差が大きくなって一層寝入りやすい。眠りが整うと食事のリズムは定まり、舌も正常化する。

4. ナッツ、野菜スティック、果物、嚙める間食を用意する。

ダイエット=空腹との闘いだと思い込んでいる人は少なくない。でも、空腹とは決して闘ってはならない。なぜなら空腹だと次の食事で食べすぎてしまううえに、血糖値が上がりやすくなるからだ。

血糖値とは、血液中の糖質。糖質を多く含む食事をすると、血糖値が上がり、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンによって正常ゾーンまで下げられる。ところが、空腹でいる時間が長いほど、インスリンは効きやすくなり、血糖値は上昇後に一気に急降下。またお腹が空いてしまうし、血糖値の乱高下による血糖値スパイクは血管を傷つけて動脈硬化などを招きやすい。

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空腹の甘い罠にみすみすハマらないために、お腹が空いたら「舌トレ」的に正しい間食をあらかじめ準備しておく。ナッツ、野菜スティック、果物など、不足しやすいビタミンやミネラルが補えるうえに、食物繊維が多くて奥歯で嚙み応えのあるものをチョイスしよう。

もちろん間食を食べすぎると太りやすいから、1回当たり100〜150キロカロリー程度にセーブしたい。

5. 料理をする人は太りにくい。弱火で旨味を引き出す。

ダウナー系を選び、旨味を生かそうとすると、自炊の機会が増えてくる。外食ではアッパー系メニューが多く、薄味で旨味を生かした料理がなかなか食べられないからだ。

「自炊すると太りにくいという研究もあります。ハーバード大学が約10万人を25年追跡したデータベースを分析した結果、家で料理をすると体重が増えにくく、糖尿病にもなりにくいという結論が得られました」

なぜ家で料理をすると太りにくいのか。理由は3つ考えられる。

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第一に他ならぬ自分自身のために調理するので、自然にヘルシー&低カロリーなものが作りたくなる。

第二に料理のための食材の調達や調理は、安静時の2倍以上のカロリーを消費。体脂肪が燃えてくれる。

第三に調理にはそれなりの時間を要する。「小人閑居して不善をなす」というように、暇な時間が長いと無駄に飲み食いする。調理に時間を費やすとそれが防げるのだ。

家庭で調理するポイントは、なるべく弱火を心掛けること。弱火でじっくり加熱していると、食材から旨味を引き出しやすいのである。

PROFILE
石川善樹(いしかわ・よしき)
石川善樹(いしかわ・よしき)/予防医学研究者、ハビテック研究所所長、医学博士。東京大学医学部を経て、ハーバード大学公衆衛生大学院修了。著書に『最後のダイエット』(マガジンハウス)、『ノーリバウンド・ダイエット』(法研)など。