1. 定めたレースペースを守る。
ハーフを2回完走したら、フルも確実に完走できるはず。フルを走り切るとハーフ以上の充実感があり、ランに一層ドハマリする。
初フルでありがちなのは、独特の高揚感に煽られてオーバーペースになり、後半失速するパターン。挙げ句にリタイアすると、ランへの意欲が失われてしまう危険もある。
レースペースはハーフと同じで最大心拍数の70%。スタート直後に飛ばすランナーが多いから、「こんなにゆっくりで大丈夫なのか」と不安に駆られるかもしれないが、そこはフルならではの非日常感によるマジック。抑え気味に感じる速さでちょうどいい。
このペースを最初から最後まで変えないのがベスト。前半抑えて後半頑張ろうとか、前半飛ばして後半粘ろうとか、小賢しい戦略は不要だ。
ギアチェンジを繰り返すとクルマの燃費が落ちるように、ランナーもペースを上下させるたびに貴重なエネルギーをロスする。イーブンペースの省エネ走法をできるだけ守ろう。5kmを何分で走るか計算し、5kmごとのエイドで確認したい。
足がツリそうなときのストレッチ
2. 30km走をやっておくと安心。
ハーフが完走できたらフルも完走できるが、念のために済ませておきたいのが30km走。
ハーフを経験した人でも、距離が2倍になるフルにチャレンジするのは不安でドキドキする。不安や緊張があると本来のパフォーマンスが出せないから、それを払拭するためにスペシャルなポイント練習として30km走を行うのだ(40km走は過激すぎて選手でもあまりやらない)。
最低でも1回。可能なら2〜3回やるとかなり楽な気持ちで当日が迎えられる。最大心拍数の70%のイーブンペースで30kmが走り切れたら、本番もそのペースでゴールできる。
30km走はダメージがあるから、直前にやってはダメ。レース1か月前に済ませると、ダメージから回復して走力がアップする超回復のタイミングで当日が迎えられる。複数回行うなら1か月間隔で。3回やるなら大会3か月前、2か月前、1か月前とスケジューリングする。
30km走を一人ぼっちでやるのは辛いから、ラン友とチャレンジ。ランクラの多くは30km走を実施しているので、それに参加するのもいい。
脇腹が痛いときのストレッチ
3. カーボローディングと栄養補給を考える。
本番が近づくと、通っぽくカーボローディングを試したくなる。カーボローディングとは、レースに備えてエネルギー源となる糖質(カーボ)の備蓄量を増やすコンディショニング法。大会の前夜に、山盛りのパスタでカーボローディングパーティが開かれることもある。
しかし、カーボローディングは、リスクを伴うことも知っておこう。
糖質をグリコーゲンとして貯めるには3倍の水が必要なので、その分だけ体重が増えやすく、カーボローディングでカラダが重くなりやすい。前夜祭で一度に大量の糖質を摂ると、消化器の負担も増える。本番の1週間ほど前から、糖質摂取をいつもより少し増やすだけで十分だ。
貯蔵量を増やすのではなく、レース中にジェルなどで糖質を補う作戦を選ぶランナーもいる。効果的な場合もあるけれど、これも腹痛などを招くことがある。中野さんのクライアントにも、レースでジェルの摂取をやめてから自己ベストを出した人がいるとか。事前の30km走でジェルを摂ってみて、自分に合うか合わないかを冷静に判断しよう。
上半身が力んで呼吸が浅い! そんなときは
4. レース途中のトラブル解決術を知る。
周到に準備しても、レース中思わぬアクシデントに見舞われることもある。万一に備えたトラブルシューティングを用意しよう。
頻発するのは、後半に疲労などから脚がツリそうになったり、動きが極端に悪くなったりするトラブル。思わず屈伸運動したくなりそうだが、それだけは絶対やめた方がいい。
深くしゃがむと走る動きと大きく変わり、大事なエネルギーが奪われる。痙攣や疲れの誘因はエネルギーの涸渇なので、余計にツッたり、動きが悪くなったりする恐れがある。靴紐がほどけた際も坐り込むのではなく、ガードレールなどに足を乗せて結び直そう(そうならないようにスタート前に念入りに結ぶべし!)。
脇腹の痛みに泣かされるランナーも少なくない。なぜ脇腹が痛むのか。理由はケースバイケースだが、呼吸筋の痙攣によることも多い。走りながらストレッチすると軽くなる可能性がある。やり方を覚えておこう。
疲れると無意識に上半身が力み、肩が上がって胸郭が閉じ、呼吸が苦しくなることも。筋弛緩法で上半身をリラックスさせると改善する。