“スマホ老眼”になってない? 目の疲労を超回復するためにできること
取材・文/松岡真子 イラストレーション/藤田翔 取材協力/石岡みさき(眼科医、みさき眼科クリニック院長)
(初出『Tarzan』No.774・2019年10月10日発売)
「最近はデジタル機器の見すぎによって一時的に文字などがぼやけて見えたり、かすむ、“スマホ老眼”と呼ばれる症例も挙げられます」とは、眼科医の石岡みさき先生。どうやら、スマートライフは目にとって過酷な環境のようだ。
PCやスマホの見すぎで起こる目の疲れは睡眠で回復できるが、疲れを溜めない工夫も必要。すぐできることから実践していこう。
目次
1. 回復のキモはピント調整&涙液補給。
疲れに効く目薬が欲しい! 処方薬では粘液のムチンを増やす点眼薬も存在すると聞くが、ドラッグストアで済ませるなら、高濃度の成分が配合された目薬を選べば大丈夫?
「疲れを和らげることは可能です。ただ濃度よりも症状に合った成分を選ぶこと。毛様体筋の凝りをほぐしたいのであれば、ピント調節機能を改善するネオスチグミンメチル硫酸塩とビタミンB12が配合されたものがいい。ドライアイには涙液と近い塩化カリウムと塩化ナトリウムを意識して。目への安全を考慮して、防腐剤や添加物が含まれてないとなおよしです」
2. PC&スマホは40cmの距離で。
このご時世で触れないわけにはいかないデジタル機器。一日中フルにパソコン作業をするのも至極当たり前のことだ。
「パソコンの場合は目線が下になるようにディスプレイを配置しましょう。目が露出する表面積が狭くなると、それだけ目の乾燥を予防できます」
スマホ操作も距離が大事。「顔に近づけたくなるけど、至近距離で小さな画面を眺めるのは毛様体筋に力が入って疲れます。目から40cmほど、適切な距離を保つクセをつけましょう」
さらにはパソコンやスマホを長時間眺める人に向けた、ピント調節をサポートする機能が付いた眼鏡もある。
3. 調整緊張をほぐすには目の温活がいい。
迫り来るタスクを処理するために、PCモニターと格闘を続ける時間。瞬時に疲れを取るなら温めが最も効果的。
「5分でもいいので、目を閉じてレンジでチンしたホットタオルで覆いましょう。調節緊張をほぐしながら、瞑っている間に眼球表面に涙液が補充されてドライアイの症状が緩和されます。
ちなみにこの涙の循環は睡眠中にはストップするので、ドライアイ緩和の点では寝てしまうと逆効果の場合も。視覚情報をシャットダウンすることで疲労も回復できます。オフィスでタオルを用意できなければ市販のシートを活用してみましょう」
4. 1時間に一度は窓の外を眺めてみよう。
ガチガチの毛様体筋は遠くを眺めていると和らいでくる。
「デジタル機器との接触時間の長さの影響もあり、半径1mくらいしか視野を広げずに生活していることも多い。毛様体筋にとってはとてもハードな環境。いたわるためにも窓からちょっとだけ遠くを見る習慣づけを」
「それが叶わない環境であれば、例えばPC資料をプリントして紙で読む。そうすることで視点に少しはバラつきが出るので、疲れやすさを抑えてくれます。あとは水分補給に席を立つなど、画面から離れるためにもこまめな気分転換を。その時にスマホを使うのは避けてくださいね」
5. 目に優しい栄養って何がある?
食事でも目のケアをしたい。摂取するといいのは?
「ドライアイならルテイン(加齢黄斑変性にも効果が期待できる)。疲労回復にはビタミンAとBだといわれています。偏食によってビタミンDやビタミンAが不足してドライアイを引き起こすことも稀にあります。だからこそ、バランスのよい食事を心がけて。3食の内容に気を使っていれば、サプリメントには頼らなくても大丈夫」
ちなみに食品でルテインが豊富なのはホウレンソウとブロッコリー。ビタミンBは豚肉や青魚、納豆。レバーはビタミンAとB2たっぷり! 筋トレでも重宝する成分は目にも夢の食材だ。
6. セルフつぼ押しで目をすっきり!
「眉頭のくぼんだ部分にある、三叉神経が集まるツボ・攅竹(さんちく)を目が疲れているときに押すとスッキリします」
目の周りと頭には疲れを和らげるツボがいくつかある。
攅竹の近く、眉毛の中央には魚腰(ぎょよう)、目頭の鼻寄りの位置にある睛明(せいめい)、さらに眉尻と目尻の中間地点にある太陽(たいよう)と、疲労回復の黄金地帯だ。人差し指・中指・薬指で同時に1分ほど圧迫すると軽やかになるはずだ。
さらには首筋のやや外側にある風池(ふうち)も親指で揉みほぐそう。デスクで行き詰まったときのプチリフレッシュ術としてもおすすめ。