持久力を確実に引き上げる20kmラン。クリアできない原因を潰すエクササイズ

脚が動かない、息が続かない、膝が痛くなる。ランビギナーが陥りがちな3つの弱点をクリアするエクササイズ。

取材・文/井上健二 撮影/山城健朗 スタイリスト/山口ゆうすけ ヘア&メイク/村田真弓 監修/中野ジェームズ修一(スポーツモチベーション)

弱点を選び、それぞれを克服するエクササイズを。

活動量を増やして体力をつけるにはランが最適。ということで、下記記事ではフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんに、効率的に体力の向上を図るための鉄板プログラムを作っていただいた。[きびきびウォーク30分×週5~6日]のステップ1から、[10km×週1〜2回+20km×週1回]のステップ5まで、5段階のランプログラムだ。

たとえランが苦手なタイプでも、ステップ1から少しずつ走力を高めていけば、ステップ4(10kmラン×週2〜3回)までは難なくたどり着けるだろう。

だが、そこからもうひと頑張りしても、週1回の20km走を行う最終のステップ5がきちんとクリアできないケースがある。

「その理由として考えられる原因のトップ3は(1)脚が動かない、(2)息が続かない、(3)膝が痛くなる、というビギナーに多い弱点です」(中野さん)。

どれか一つでも弱点があるとステップ5はすんなり攻略できない。ステップ4で足踏みして悔しい思いをしているなら、思い当たる弱点を選び、練習と並行してそれぞれを克服するエクササイズを試してみよう。この壁を乗り越えたら、持久力は確実に引き上げられる。

脚が動かないなら、「レイヤートレーニング」。

ランに必要な筋力はランで高めるのが鉄則。でも距離が延びると脚が辛くて動かないなら、心肺機能に見合う脚筋力が備わっていない可能性が高い。その状態で無理に走ると膝などの故障につながる危険もある。

取り組みたいのは、走らずにランに求められる脚筋力を鍛える「レイヤートレーニング」。低負荷の筋トレを積み重ね(レイヤー)て多くの回数をこなし、カラダのダメージを招く着地衝撃を避けつつ、ランと同等の刺激を脚に加えて鍛える。

4つの筋トレを重ねて、ランに匹敵する刺激を。
ステップを重ねるごとに1種目ずつ増やし、ステップ4では4種目行う。今回紹介する4つのトレーニングはそれぞれ、フロントランジは4セット、ワンレッグ・スクワットは3セット、ニーアップは2セット、スプリットは1セット行う。

今回はフロントランジ、ワンレッグ・スクワット、ニーアップ、スプリットというランに近い動きを4セット(インターバル30秒)、約10分で計200回ほど行う。走らない日に1〜2日おきに続けると、20km走に耐えられる脚筋力が身につく。

レイヤートレ(1)フロントランジ

両足を腰幅に開いて立ち、両腕を体側で下げる。片足を大股1歩分前に踏み出し、後ろ脚の膝が床ギリギリに近づき、前脚の膝が90度に曲がる(膝を爪先より前に出さない)までしゃがみ、両手は鎖骨の高さで組み、戻る。左右交互に各10回。

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フロントランジ1
フロントランジ2

レイヤートレ(2)ワンレッグ・スクワット

フロントランジで踏み出した姿勢で、両手を前脚の膝に重ねて上体を前傾。前脚に9割、後ろ脚に1割の割合で荷重。前傾姿勢を保って両脚を伸ばし、頭を挟むように両腕を伸ばして両腕、体幹、後ろ脚を一直線に保ち、戻る。左右各10回。

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ワンレッグ・スクワット1
ワンレッグ・スクワット2

レイヤートレ(3)ニーアップ

片脚立ちになり、浮かせた脚を後ろに伸ばしながら前傾し、後ろ脚側の腕を伸ばして指を床にタッチ。軸脚の踵に荷重し、膝を軽く曲げる。軸脚の膝を伸ばして上体を起こしながら、股関節を軸に後ろ脚の膝を胸に近づけるように引き上げ、走るときのように腕を振り、元に戻る。左右各10回。

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ニーアップ1
ニーアップ2

レイヤートレ(4)スプリット

両足を前後に大きく開き、後ろ脚の膝が床ギリギリに近づき、前脚の膝が90度に曲がるまで深くしゃがむ。肘を曲げ、前脚側の腕を後ろ、後ろ脚側の腕を前に振る。その場でジャンプしたら、両腕と両脚の前後を入れ替えて着地。深くしゃがんで着地衝撃を吸収。交互に繰り返す。左右交互に各10回。

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スプリット1
スプリット2
スプリット3

息が切れるなら、インターバルトレーニング。

10kmを越えると息が切れやすい人は、20km走がこなせるだけの心肺機能が未発達。チャレンジしたいのは、週1回のインターバルトレーニング。トレッドミルなどで休みを入れつつ限界に近いペースで走る練習で心肺機能をテコ入れしよう。

トレッドミル

インターバルトレはラクな「イージー」(時速8km程度のジョグ)と全力に近い「ハード」(時速12〜13km程度のラン)を1セットとして交互に繰り返す。大事なのは4セット目で力を出し切り、5セット目ができないくらい追い込むこと。

イージー3分+ハード3分から試し、イージー1分+ハード3分とイージーを短くしたり、ハードの速度を上げたりして調整する。その負荷で5セット目がギリできるようになったら20km走に耐える心肺が備わった証拠。

4セットで限界を迎える強度を見つける。
4セットで限界を迎える強度を見つける。
5分ほどのウォームアップ後、ハードからスタート。最大心拍数に対する割合でいうならイージーは50%、ハードは85%。4セットでオールアウトするメニューは時間とスピードの組み合わせを変えながら、試行錯誤して見つける。

膝が痛いなら、痛む場所に応じてポーズを変えてストレッチ。

ランに限らず、運動後は筋肉の疲労と緊張をリセットするためにストレッチでケアしたいもの。日々のケアを怠ると筋肉が緊張したまま硬くなり、関節の可動域が狭くなってパフォーマンスが落ちるし、血行不良などから痛みが生じることもある。

ランナーに多発するのは「ランナーズ・ニー」と称される膝まわりの痛み。ここではなかでも頻度が高い膝の外側の痛み(腸脛靱帯炎)と膝の内側の痛み(鵞足炎)に絞り、緩和できるストレッチを紹介する。

フォームや骨格によってランナーの膝の痛みとその原因はさまざま。ストレッチで痛みが軽減しない場合、念のために整形外科でX線などの画像診断を行って筋肉以外に原因がないことを確認しよう。痛みがあるときは、無理に走らないことも重要だ。

膝の外側の痛みに(腸脛靱帯炎対策)

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大臀筋のストレッチ
大臀筋のストレッチ(左右各30秒キープ)/床に左膝をついたら、両手を前について、右脚の膝を曲げて外側を床につける。左脚は骨盤が傾かないように気をつけながら後ろに伸ばす。息を吐きながら上体を前に倒して右脚側のお尻を伸ばす。左右を変えて同様に。
大腿筋膜張筋のストレッチ
大腿筋膜張筋のストレッチ(左右各30秒キープ)/仰向けで左足の爪先にスポーツタオルを回し、右手で持ち、左膝を伸ばす。タオルを手前に引っ張りながら、息を吐きながら20度程度の角度に開いた左脚を右側へ倒す。上体が起きないように注意。左右を変えて同様に。

膝の内側の痛みに(鵞足炎対策)

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薄筋のストレッチ
薄筋のストレッチ(左右各30秒キープ)/仰向けで右足裏にスポーツタオルを回して、右手で持ち、左脚は伸ばす。タオルを引っ張り、息を吐きながら右脚を伸ばしたまま右側へ大きく開いて太腿内側を伸ばす。上体が起きないように注意。左右を変えて同様に。
半腱様筋のストレッチ
半腱様筋のストレッチ(左右各30秒キープ)/腰幅で立ち、右足を半歩前に出して、踵を床につけて爪先を外側に向ける。両手を右脚の太腿に添えて前傾し、息を吐きながら腰を落とし、お尻を後ろに引いて右脚の太腿裏側をストレッチする。左右を変えて同様に。
縫工筋のストレッチ
縫工筋のストレッチ(左右各30秒キープ)/床に坐り、左脚を伸ばし、右膝を曲げ、膝の内側を床につける。息を吐きながら上体を後ろに倒し、両手を後ろについて姿勢を保つ。右脚の踵がお尻に入ると効果が落ち、上体を倒しすぎると膝を痛めやすい。左右を変えて。