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その行動、自律神経に負担大! 生活にありがちな12のダメ習慣

頭痛、めまい、耳鳴り、肩こり、火照り、むくみ、バランス感覚が崩れてふらふらする…。疲れが溜まると生じるこれらの症状は、いずれも自律神経が疲れすぎて失調しているサインである。

自律神経は意識できないから、よかれと思ってやっていることが、実は自律神経のダメージとなるケースは少なくない。やらかしてしまいがちなNG行動を12個まとめてみた。

1. ベジタリアンである。

アインシュタインもスティーブ・ジョブズも、動物性食品を口にしないベジタリアンだったとか。二人とも偉人だが、自律神経をいたわりたいなら真似しない方が賢明である。

自律神経が働きすぎると活性酸素による酸化ダメージが蓄積する。この酸化を防いで自律神経の疲労軽減に役立つのが、イミダペプチド。鶏胸肉やカツオなど肉類や魚類に多い。肉も魚も一切食べないと決めるとイミダペプチドが摂れないので、自律神経が救えないのだ。

野菜のβ-カロテンや果物のビタミンC、赤ワインのポリフェノールなどの植物由来の成分にも抗酸化作用はあるが、脳内で持続的に働きにくく、自律神経の疲労軽減に果たす役割は限定的だ。

2. 集中力を高めて粘り強く仕事する。

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集中力という言葉にはポジティブな響きしかないけれど、自律神経にとっては相当ネガティブ。集中力が高い緊張下では自律神経のうちで心身を活動モードにする交感神経が興奮しており、心拍や血圧を上げる。無理に集中力を高め続け、その状況が継続すると自律神経の疲弊を招く。

野生動物は何かに没頭していると、隙を突かれて天敵に攻撃される恐れがある。それを避けるために「飽きた」という感情が生まれる。注意散漫になって「飽きた」と感じたら、集中力を高めずにブレイクするのが正解。それで交感神経を緩めよう。別の作業に取り組んで気分転換後、タスクに再度取り組み、短時間の集中を断続的に繰り返した方がいい。

3. 1泊で弾丸温泉旅行に出かける。

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忙しい日々が続くと「たまには温泉で癒やされたい」と思うのが人間。1日でも休みが取れたら温泉旅行に出かけたくなるが、弾丸旅行だと自律神経の疲れは余計悪化する。

長時間の移動で同じ姿勢を続けると、疲労物質の代謝が滞って自律神経は参りやすい。到着後、元を取ろうと温泉に何度も繰り返し入ると、体温調節のために自律神経がフル稼働。自律神経には迷惑でしかない。

温泉地の豊かな自然環境は自律神経を癒やしてくれるが、残念ながら強行軍ではその恩恵は十分得られない。自律神経を思うなら、連休を利用して余裕を持った3泊程度のスケジュールを立て、温泉にも大汗をかくまで入らないように。

4. 会議中飲み食いをしない。

長すぎる会議は仕事効率を下げるだけではなく、自律神経にも悪い。会議は緊張感を伴うため、交感神経がずっと優位になりやすいからだ。

加えてロクに飲み食いせず、会議を延々と続けると血糖値が下がりやすい。すると脳への糖質の供給が滞らないように、交感神経がさらに優位となり、血糖値を上げるグルカゴンというホルモンの分泌を促す。

長い会議でも合間に茶菓子を軽くつまみ、お茶でも飲んでいるなら及第点。飲み食いして胃腸が働き出すと、心身を緩める副交感神経がオンになり、交感神経とのパワーバランスの偏りが解消されやすい。茶菓子から糖質が入ると血糖値が上がり、交感神経の興奮も抑えられる。

5. 一人で食事をする。

農林水産省の調査では、一日すべての食事を一人で食べる孤食の人の割合は11%にも上る。一人で黙々と食べると早食いになり、食べすぎる恐れがある。一度にたくさん食べすぎると、消化を司る自律神経の作業が増えるだけ。手軽だからとファストフードで孤食するのは最悪。嚙まずに飲み込むように食べると、消化管と自律神経のストレスが増える。

孤食が自律神経に悪い理由がもう一つある。野生動物にとって食事は闘いの場。孤食が基本で交感神経が優位となり、満腹になるまでそれが続く。孤食はこの野生の闘争本能を呼び起こし、交感神経を興奮させる。昼食は同僚、夕飯は友人などと食卓を囲み、よく嚙んで食べよう。

6. 落ち着いて眠るために温めた牛乳を飲む。

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イライラしていると眠れない。カルシウム(Ca)は自律神経をはじめとする神経の情報伝達に欠かせないミネラル。「イライラはCa不足のせい。Ca豊富な牛乳を飲めばイライラが収まって眠れる」という主張もある。でも、これは都市伝説の類い。

日本人にはCaが足りない。その不足は骨粗鬆症の危険を高めるが、骨がピンピンしているのに、神経が働かなくなるほどCaが欠乏するはずがない。

ホットミルクで気分が静まって眠れるとしたら、温かい飲み物が胃腸に入って副交感神経がオンになるから。それは一過性で、ミルクは乳脂肪分が多いから就寝中の消化吸収の手間が増えて自律神経は疲れる。眠る前に飲むなら白湯で十分。

7. 仕事のストレスをトレーニングで発散。

カラダを動かして汗をかくと爽快で気持ちいい。仕事で疲れたら、ジムに寄って筋トレや有酸素運動に励んで発散するという前向きなタイプも少なくない。立派な心掛けだが、過度な運動は自律神経にはマイナス。

強度に応じて心拍を調整し、上がった体温を下げて、血液循環を最適化するのは、自律神経のなせる業。仕事でヘトヘトなのに、ハードな運動に励みすぎると、自律神経の困憊は極まる。

それでも運動したくなるのは、辛さに耐えた達成感がハンパないため。達成感で疲れたという感覚=疲労感がマスキングされると、“疲労感なき疲労”が溜まる一方。運動時は強度と時間で適度にコントロールせよ。

8. スタミナ食とビールで夏を乗り切る。

古代エジプトでピラミッドを作った労働者は元気になるためにニンニクやタマネギを食べて、ビールを飲んでいた。夏バテしそうになると、現代人もニンニクやタマネギを使ったスタミナ料理やビールが欲しくなるが、それでは夏バテは解決しない。

夏バテは、高温多湿に適応するために働き詰めの自律神経がダウンする現象。スタミナ料理では解消しない。度を越す飲酒は自律神経の疲れを倍増させる。アルコールは脳内に入り、自律神経の中枢に直で打撃を与える。利尿作用もあり、脱水すると自律神経の負担が増える。適量飲むなら梅酒かレモンサワーがお薦め。いずれもクエン酸を含み、細胞のエネルギー代謝を助けて疲労を防ぐ。

9. 正しい姿勢をキープする。

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オフィスでのデスクワーク中はついつい背中が丸まり、骨盤が後傾した不良姿勢に陥りやすい。

不良姿勢は肩こりや腰痛を招きやすいが、かといって背すじを伸ばして骨盤を立てた正しい姿勢も長時間続けるのはNG。血流が滞って自律神経の仕事が増えるし、疲労物質が代謝されにくく自律神経の疲れはいつまでも抜けない。むろん不良姿勢を長時間続けるのは言語道断だ。

坐りっ放しを避け、30分に一度は立ち上がって歩き回り、血液循環を活性化。ついでに水分補給をするとさらに血流は良くなり、脱水が避けられて自律神経に優しい。また胃に水分が入ると副交感神経がオンになって自律神経のバランスも整う。

10. 朝は大音量の目覚ましで起きる。

遅くまで夜更かしを重ね、翌朝はギリギリまで寝てスマホのアラーム音にびっくりして跳び起きる…。そんな生活スタイルはこの際見直すべき。突如大きな音が耳元で鳴り響くのは、生き物にとっては身に危険が迫ったサイン。反射的に攻撃に備える交感神経がオンになり、心拍と血圧が急激に跳ね上がり、朝っぱらから自律神経に悪影響を及ぼす。

夜更かしせず早めに寝て、アラームに頼らず周囲が明るくなるタイミングで自然に起きるのが理想だ。朝日が差し込んで明るさが感じられるように、あらかじめカーテンやブラインドを少し開けよう。決めた時間に確実に起きるには、光で起こす目覚まし時計を活用する方法もある。

11. クールビズを頑なに守る。

1人当たりのGDPが世界8位のシンガポール(日本は26位)。その繁栄の礎を築いたリー・クアンユーは「わが国の発展はエアコンのおかげ」という名言を残した。体温維持は自律神経の受け持ち。暑くても寒くても自律神経は働きすぎて疲れ、脳疲労が溜まって知的生産性は落ちる。

熱帯のシンガポールで仕事に打ち込めるのは、エアコンで快適さを保ち、自律神経の疲労を避けたおかげ。他方、日本は省エネの観点から夏場のオフィスの室温を28度にするクールビズを推進中。同調する向きも多いが、大半の人には28度は暑すぎで不快。自律神経がヘバって生産性も落ちる。それを補うために残業が長引くと省エネにもならない。

12. イビキをかいて眠る。

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起きている間は少なからず自律神経に負担がかかり続ける。その疲労をリセットするのに有効なのは睡眠。寝ている間も自律神経は地道に働き続けるが、仕事量は大幅に少なく、その間に疲労回復が進みやすい。

せっかく眠っても、イビキをかいていると自律神経はちっとも休まらない。仰向けでは重力で舌などが垂れ下がり、気道が狭まり、狭い道を空気が通るとイビキが鳴る。

この状況で呼吸するのはストローで風船を膨らませるような困難さを伴い、酸素の取り込みが不十分。それを補うために心拍や血圧を上げようと交感神経が孤軍奮闘して疲れる。横向きで寝ると気道が確保されて、イビキが減って自律神経は休まりやすい。

取材・文/井上健二 撮影/小川朋央 ヘア&メイク/天野誠悟 スタイリスト/山内省吾 取材協力/梶本修身(大阪市立大学大学院疲労医学特任教授、東京疲労・睡眠クリニック院長)

(初出『Tarzan』No.769・2019年7月25日発売)

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