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「1日1万歩で健康に」の根拠

ウォーキングを日常生活に取り入れている人は多数いる。「目指すは1日1万歩」ともいわれているが、果たしてその根拠は? 専門家の先生にお訊きすると、根拠は意外とシンプルでした。

なぜ1日1万歩? その理由は意外とシンプルだ。

1日にどのくらい歩いていますか?と聞かれて即答できるだろうか。住まいは駅近、オフィスは最寄り駅から徒歩数分、仕事はデスクワーク、昼食は社員食堂という場合、1日3,000~4,000歩しか歩かない人もザラにいるはずだ。

「日本人成人の1日当たりの平均歩数は男性約7,000、女性約6,000歩ですが、一般サラリーマンは5,700歩程度だといわれます。しかし本来、働き盛りの30~40代は1日1万歩歩くことが必要なのです」(東海学園大学スポーツ健康科学部教授・森悟さん)

なぜ1日1万歩か。その理由は簡単で、1万歩歩けばあなたが1日に摂取するカロリーをしっかり消費できるから。言い換えれば、特に運動しないで普通に生活しているだけでは、食べた分のカロリーを使い切れずにカラダに溜め込んでしまうのだ。

1日1万歩で無理なくカロリー消費しよう
1日1万歩で無理なくカロリー消費しよう。
厚生労働省の栄養調査によると、成人男性の摂取カロリー量は2100~2200kcal。普段消費するのは1800kcal程度だから、その差300kcalを歩いて埋めようというわけだ。

1日に必要なカロリーは個々の標準体重によって変わってくる。その数値は身長(m)の2乗に22を掛けると算出でき、たとえば身長が170cmなら、1.7×1.7×22=63.6kg。これが標準体重となる。

標準体重1kgごとに必要なカロリーは、デスクワークなら30キロカロリー、肉体労働なら35キロカロリーと活動強度によって差があるが、デスクワークの場合、30×63.6=1,908キロカロリーとなる。

しかし、特に意識せずに普通の食事を摂っていると成人男性の場合、1日に2,100~2,200キロカロリー程度は摂取してしまっている。つまり、私たちは基本的に毎日必要以上のカロリーを摂っているというわけだ。

年齢を重ねるほど歩かなくなるのが現実
年齢を重ねるほど歩かなくなるのが現実。
これは年齢別の歩数を比較したグラフ。子供の頃は休み時間に校庭で遊ぶし体育の授業もあるから1日1万歩は軽くオーバーするが、大人になるに従いだんだん減ってくるのだ。

また、一日中デスクワークだと1,800キロカロリー程度しか消費できない場合も。摂取カロリーとの差を埋めるには当然、運動が必要になってくるが、いきなりジムに通ったりランニングするのは無理!という人も多いはず。そこで1日1万歩がポイントになってくるのである。

1分間に100歩歩くペースをカロリー換算すると、10分間1,000歩で約33キロカロリー消費できる。その10倍、つまり1万歩歩けば消費カロリーは330。これに普段消費する1,800キロカロリーを足してようやく「消費カロリー>摂取カロリー」となるのだ。

普通に生活しているのでは1日1万歩に届かない!

次に、私たちが実際に普段どの程度歩いているかを把握しよう。もちろん、1日の歩数は活動内容によって変わってくる。肉体労働や外回り営業といった職業なら自然とその数は増えるし、デスクワークが中心なら少なくなる。

ここでは、森さんが調査した倉庫作業に従事する32歳男性と設計業務の44歳男性の例を比較してみよう。

「倉庫作業に従事する男性の場合、1日1万歩を軽くオーバーしていますが、設計業務、PC作業中心の人はわずか3,500歩でした。後者の場合、通勤はクルマ、社内でもトイレに立つなどほんの少し歩いてはまた座るの繰り返しで、連続して歩く時間がほとんどないのも問題です」

肉体労働とデスクワークを比べると1日の歩数の差は歴然
肉体労働とデスクワークを比べると1日の歩数の差は歴然なのだ。
一日中歩き回る倉庫作業員と一日中PCのモニターとにらめっこする設計業務では実に1日9000歩もの差がつく。しかも倉庫作業員は退勤後に犬の散歩で歩数を稼いでいるのだ。デスクワークの人はオフィスにいる時間が長い分、いろいろと工夫してあと6000~7000歩稼ぐ必要がある。

倉庫作業の場合は仕事中に自然と歩数が増えるのに加え、比較的早めの時間に退勤できるケースが多い。そのため、夜間に犬の散歩などでさらに歩数を増やすことも可能だ。

しかし設計業務の仕事だと、労働時間が長くなる傾向がある。仕事中ほとんど歩かないことに加え、プライベートな時間も少ないとなればますます歩く機会は減ってしまう。完全に悪循環である。

「江戸時代に50歳を越えて歩測で全国を測量した伊能忠敬は、1日に約40km徒歩移動したといわれています。歩幅を70cmとすると1日5万歩以上にもなる。伊能は当時としては長寿といえる73歳まで生きましたが、それは歩いたおかげとの説もあります。世の中が便利になっている分、健康と長生きのために今以上に“歩く努力”をする必要があるのではないでしょうか」

取材・文/黒田創 イラストレーション/沼田光太郎 取材協力/森悟(東海学園大学スポーツ健康科学部教授)

(初出『Tarzan』No.691・2016年3月24日発売)

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